ネチズン・カレッジ日誌にようこそ!

ある政治学者のホームページ奮戦記――わが家のできるまで、できてから(2020年1月ー

 ここには、<What's New>で定期的にトップに現れた、本ホームページの作成過程、試行版への反響、更新の苦労話、メールへのご返事、ちょっといい話、外国旅行記・滞在記、研究室からカレッジへの改装の記録が、日誌風につづられます。趣味的なリンクガイドも兼ねます。ま、くつろぎのエッセイ集であり、対話のページであり、独白録です。日付けは下の方が古いので、逆読みしてください。

古い記録は、「図書館特別室3 ネチズン・カレッジ生成記録」として、以下のようになっています。お好きなところへどうぞ。

 

東アジアで最悪なのに、G7「モデル国」になった日本の不思議 [パンデミックの政治 8・小括]

2020.6.1 かと東京郊外、国分寺の我が家にも、ようやく布製アベノマスクが届きました。近所のホームセンターには、すでに中国製のスマートな不織布マスクが一枚50円ほどで出回っていますから、不要です。一人あたり10万円の給付金申請用紙も、何もしていませんが、郵送で届きました。マイナンバーなど書く必要もなく、国分寺市はマイナンバー・オンライン申請を認めなかったので、かえって早く届いたようです。全国ではマイナンバーがらみのトラブル続出で、100万人以上の大都市のほとんどは6月給付で、5月末の支払いに間に合わない悲劇が膨大に生まれています。個人事業者への持続化支援金は、経産省・中小企業庁から手数料769億円で怪しげな竹中平蔵のパソナ系トンネル会社に丸投げされ、20億円中抜きされて、電通に749億円で仕事が任されました。申請手続きは杜撰で、トラブルが続き、遅れに遅れている間に、20億円がトンネル会社の利権になりました。竹中平蔵のパソナは、「新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金」でも申請窓口になっていました。「アベノマスク」の466億円、不良品検品経費8億円に似ています。危機につけこむ「コロナビジネス」と、政治家の影です。ようやく5月25日に、日本の緊急事態宣言が、解除されました。「余人をもって代えがたい」はずだった黒川検事長の新聞記者との「3密」賭け麻雀発覚、懲戒処分無しの辞職の問題を、うやむやのうちに収束させるために、「自粛」解除が急がれたかのようです。

かと 安倍晋三首相は、緊急事態宣言を全国で解除する5月25日夕の記者会見で、新型コロナウイルスについて「日本ならではのやり方で、わずか1カ月半で流行をほぼ収束させることができた。日本モデルの力を示した」「わが国では、人口当たりの感染者数や死亡者数をG7(先進7カ国)の中でも圧倒的に少なく押さえ込むことができています。これまでの私たちの取り組みは、確実に成果を上げており、世界の期待と注目を集めています」と誇らしげに述べました。東京都や北九州市を見ると、まだ本当に「第一波」が収束したかどうかも不確かですが、いまだにPCR検査をまともにできず、院内感染で医療崩壊寸前までゆき、感染対策は後手後手で、経済再開に前のめりです。それでも公式死亡者数が欧米に比すれば少なくて済んでいる現状を追認し、むしろそれを世界に誇るという、傲慢で奇妙な構図です。無論、その背景は、膨大な犠牲者を出しながら、欧米大国がロックダウンを緩和して経済社会再建に向かい、治療薬やワクチン開発のグローバル医療ビジネスの競争が始まったこと、何よりも、庶民の生活・文化の耐えうる限界を越え、ストレスが充満してきたことです。世界では、5月31日現在感染認定606万人、死者37万人で、ブラジル、ペルーほか中南米で猛威をふるい、アフリカの感染も、ある程度統計が信頼できるエジプト、南アフリカで2万人越えです。感染180万人・死者37万人の最大感染国アメリカでは、まだ毎日犠牲者が増えているのに、トランプ大統領は、秋の大統領選再選をにらみ経済再開を優先しました。このことが、ヨーロッパ大国とともに、世界的な「第一波」中間総括の流れを作り出しました。

かと 下の「朝日新聞」5月26日記事「「不可解な謎」 欧米メディアが驚く、日本のコロナ対策」の図、より詳しい「ウェブ医事新報」の菅谷憲夫さん「日本の新型コロナ対策は成功したと言えるのか─日本の死亡者数はアジアで2番目に多い」の比較表が明快に示しているように、確かに欧米大国との比較では、桁違いに人口あたり死者数は少ないのですが、それは、発症地中国を含む東アジア・大洋州諸国全体の「第一波」の特徴であり、その「東アジア型」の中では、日本はむしろ、最悪の国、感染対策の劣等生になります。したがって感染対策としては、「日本モデル」ではなく、「東アジア型モデル」こそ、解明されなければなりません。日本人の国民性、「マスク文化」、補償がなくても「自粛」する同調圧力等は、むしろ「東アジア型モデルの中での日本の失敗」においてこそ、論じられるべきです。例えばマスクは、花粉症期の日本ばかりでなく、大気汚染の北京や、民主化運動の香港で、よく見られました。「欧米型」の最悪は、いうまでもなく「コロナ失政でパニック」のトランプのアメリカです。対中対決、WHO脱退は秋の再選向けパフォーマンスで、危ういロックダウン解除・経済再開を進め、その結果が、スラムに住む貧しいアフリカ系・ヒスパニック系の人々のなかでの感染爆発、人種問題の再燃です。6月末にG7をワシントンDCで開き第一波収束を世界にアピールしようとしましたが、真っ先に出席の手を挙げた日本の安倍首相はともかく、ドイツのメルケル首相は断り、結局、9月の国連総会時に延期になりました。ちょうど、安倍首相にとっての東京オリンピックのように、「正常化」を示威する政治的イベントの企みは、コロナの感染力に対しては無力です。

かと もう一つ、地球全体をおおいつくしたCOVID-19ウィルスへの民衆救済のプログラム、そのナショナルな対応にあたっては、政治のリーダーシップが問われます。民衆が恐怖と不安を抱くパンデミックの危機に当たっては、おおむね政府の民衆への強いアピールと国民の政府への信頼・救済願望から、政権への凝集力が生まれ、権力が強まるのが通例です。ここで は、ドイツのメルケル首相やニュージーランドのアーダーン首相、台湾の蔡英文総統ら女性指導者のアピールと指導力が高く評価されています。しかし日本の安倍首相は、国民に訴える力が弱く、思いつきの全国一斉休校やアベノマスク、くつろぎ動画などピント外れのパフォーマンスと、必要な感染防御策のサボタージュ、「専門家会議」への丸投げ、後手後手の医療関係者・病院支援、それに、改憲を狙った緊急事態権限行使と私利私欲の透ける検察介入、政策過程の議事録も残さないずさんな官邸政治で、すっかり国民の信頼を失いました。国際的には「支持率が下がったのは日本とブラジルだけ」、つまり最悪の政治指導者と評価されています。どうやらこの政治的指導の無策こそが、「東アジア型モデルの中での日本の失敗」を説明するようです。

かと もっとも新型ウィルスのパンデミック、欧米型感染爆発・高死亡率と日本の低死亡者数の対比については、山中伸弥教授の述べた「ファクターX」が、第一波を小括し、第二波・第三波に備えるうえでの、一つの焦点になります。それが、治療薬やワクチン開発のグローバル医薬ビジネスにも通じる可能性があるからです。「ファクターX」の候補として、山中教授は、「新型コロナウイルスへの対策としては、徹底的な検査に基づく感染者の同定と隔離、そして社会全体の活動縮小の2つがあります」、日本は「他の国と比べると緩やかでした。PCR検査数は少なく、中国や韓国のようにスマートフォンのGPS機能を用いた感染者の監視を行うこともなく、さらには社会全体の活動自粛も、ロックダウンを行った欧米諸国より緩やかでした。しかし、感染者や死亡者の数は、欧米より少なくて済んでいます。何故でしょうか? 私は、何か理由があるはずと考えており、それを「ファクターX」と呼んでいます。ファクターXを明らかにできれば、今後の対策戦略に活かすことが出来るはずです」として、「ファクターXの候補」を、@クラスター対策班や保健所職員等による献身的なクラスター対策、Aマラソンなど大規模イベント休止、休校要請により国民が早期(2月後半)から危機感を共有、Bマスク着用や毎日の入浴などの高い衛生意識、Cハグや握手、大声での会話などが少ない生活文化、D日本人の遺伝的要因、EBCG接種など、何らかの公衆衛生政策の影響、F2020年1月までの、何らかのウイルス感染の影響、Gウイルスの遺伝子変異の影響」などが考えられるといいます。

かと 欧米から見れば「奇妙な成功」である「日本モデル」の謎は、山中教授の「ファクターX」で、ある程度推論可能です。しかし「東アジア大洋州モデル」の説明としては、BCなどの文化的理由は必ずしも一般的ではなく、Aの危機感と@の献身的医療努力はむしろ世界共通で、欧米型ロックダウンにも含まれています。むしろ、危機感の強弱による初動の素早さが、ポイントでしょう。中国沿岸部を含む「東アジア型」の説明には、やはりDEFGの医学的・遺伝学的検討が必要でしょう。すでに600万人以上の感染認定者の検査によって、COVID-19の変異を含む膨大な遺伝情報(ゲノム)がみつかって、5万本以上の論文が出ています。大きく中国型・欧州型・米国型(西海岸型・東部型)ともいわれます。ここは、世界的な医師・医学者たちの「中間総括」にまかせましょう。「日本モデル」との関係では、1月武漢での発症、クルーズ船対応以来の日本の感染症対策、政府・厚生労働省の対応、とりわけ内閣新型コロナウィルス感染症「対策本部」、新型コロナウイルス感染症対策「専門家会議」、それに緊急事態宣言を発し解除した「基本的対処方針等諮問委員会」の、それぞれの中間総括が必要とされます。

かと 安倍首相の誇る「日本モデル」を実質的に動かしたのは、首相の記者会見にまで立ち会った「専門家会議」です。その科学的評価と政策評価が不可欠です。ところが、緊急事態宣言解除後の5月29日の専門家会議「状況分析・提言 」をみても、@感染状況、A医療提供体制(療養体制、病床確保等)、B検査体制、のそれぞれの従来からの方針の変化・修正点が述べられるのみで、「第一波」の全体を振り返る視点はみられません。従来のデータ・方針の延長上で、「次なる波に備えた安全・安心のためのビジョン」が策定されています。全国一斉休校や「アベノマスク」は、首相の思いつきであることがはっきりした「政治主導・官邸主導」ですが、クラスター対策優先のPCR検査抑制、「37度5分4日以上」のPCR検査受診「目安」や、緊急事態宣言発動・解除の根拠となった科学的判断、「新しい生活様式」等には、明らかに「専門家会議」が重要な役割を果たしたはずです。ところがその「専門家会議」は、首相の思いつきにヒントを与えた官邸「連絡会議」と同様に、公式政策決定に関わらないので「議事録」を出せない、というのです。これでは当面の中間総括はもとより、後世の歴史的検証にも、耐えられないものとなります。「専門家会議」が本当に「科学者の良心」を持つならば、「状況・提言」以前に、政治家・厚生労働省医系技官に対して、議事録を公表させるべきでしょう。そこで幾度も使われた「ここ1−2週間が瀬戸際」「接触8割削減」「対策ゼロなら40万人死亡」等の予測・提言についても、実際の感染ピークが「緊急事態宣言」以前の3月末から4月1日=「アベノマスク」が発表されたエープリルフールの頃であったことがわかった現時点で、当初の第二種感染症指定、学校一斉休校や緊急事態宣言そのものの有効性と共に、反省され検証さるべきでしょう。いずれ収束後には、第3者による本格的検証が必要になるのですから。

かと 政治には、実行された政策結果の責任と共に、不作為責任もあります。2009年の新型インフルエンザ時パンデミックを経験していたにも関わらず、当時とそっくりの初動の遅れ、海外からの入国制限・隔離のみに偏した市中感染対策の欠如、マスク不足パニック、感染者への偏見と差別が見られました。それに学んだ当時の「専門家」の提言した感染症対策、パンデミックに備えた器材と人材の備蓄は、守られませんでした。医療機関もベッド数も保健所も削減され、国立感染症研究所の予算も人員も縮減されていました。新自由主義経済政策=アベノミクスの仕業です。学校休校中にオンデマンド授業を受けられた児童・生徒は数%にすぎず、機器はととのっていませんでした。きわめつけは、毎日WHOにも報告される感染者数のデータの信憑性です。PCR検査数も陽性率も発表されず不信に思っていたら、なんと、全国統計自体が整っておらず、保健所から都道府県に手書きのファックスで時間差で送られていたため、二重集計や発症日特定の間違いで、何度も訂正される始末でした。なによりも、年初の安倍内閣の政治日程の目玉であった、中国習近平主席の国賓としての来日・天皇会見の予定と中国渡航禁止・検疫の関係、夏に予定されていた東京オリンピック延期決定直後からの小池東京都知事の「都市封鎖」の脅迫、安倍首相の緊急事態宣言発令が、当時の「専門家」の科学的助言ないし忖度、感染症研究所ー地方衛生研究所ー保健所ラインの感染統計作成・検査体制、医療現場の臨床体制・器材不足・人員配置・院内感染の程度、政府の感染防止財政投入、「補償なき自粛」とどのような関係があったのか、総じて安倍首相・官邸主導のコロナ危機認識、後手後手・無為無策、経済政策優先、私利私欲、社会的弱者へのまなざし等の諸側面が、顧みられる必要があります。そうした検討抜きの「日本モデル」礼賛は、いっそう世界から、データ隠しの疑惑と不信を、招くことになるでしょう。

かと 本サイトは、本年1月から月一回の更新に改めると宣言しましたが、思わぬ新型コロナウイルスの出現とパンデミックにより、月二回更新で「パンデミックの政治」を連載し、これまで8回発信してきました。今回の「第一波」小括で一区切りをつけ、月一回更新に戻し、問題の学術的検討に専念したいと思います。次回更新は、7月1日とします。この間、深部で問われていたのは、人間と自然の関係、生態系・環境破壊と気候変動、人獣共通感染症の歴史と社会変動、都市型社会とリスク管理、グローバリズムとナショナリズム、人間の生と死の意味と宗教観、等々の文明史的問題でした。私自身は無神論者ですが、幸運にも生き残った皆様の生命・生活の維持と回復を、お祈りいたします。

日本は本当に第一波を抑え込んだのか?[パンデミックの政治 7]

2020.5.15 かとようやく先進国のパンデミック「第一波」は、ピークを越えたようです。しかし、インド、ロシア、イランなど中近東、ブラジル等中南米で、急速な感染爆発が続いています。アフリカでも広がっていますが、十分な検査さえできず、感染状況は不確かです。早期に第一波を抑え込んだ中国や韓国では、外出規制を緩めた途端に、第二波の兆しです。世界的には5月14日現在で、188ヵ国(215国・地域という統計もあります、要するに、南極を除く全地球です)、感染確認者440万人、死者30万人です。アメリカ、イギリス、イタリア、ドイツなどでも、ロックダウンで感染の勢いが弱まったとして、徐々にですが外出禁止を緩め、経済の再建に動き始めました。「コロナ前(BC)」でも、「コロナ後(AC)」でもなく、コロナとの共生=「with corona」(WC?)の模索の始まりです。 死者は、あくまでPCR検査による感染確認者中の認定死者数で、今後、例年同期に比べて異常な「超過死亡」数が、各国統計に加わるでしょう。

かと 感染確認者が500万人近くとなり、このCOVID-19パンデミックが、国際的には経済力が弱く医療体制も貧困な途上国や後進地域、社会的には国内の貧困層や社会的弱者に、しわよせがゆくことが見えてきました。例えばシンガポールは、当初は台湾や韓国と同じ「東アジア型」の抑えこみができたと見られていましたが、4月下旬から100万人の外国人労働者、特に建設労働者30万人の中で感染爆発がおきました。建設現場の集団生活の中での感染ですから、一日4万人のPCR検査で食い止めようとしていますが困難をかかえ、たちまち「東南アジアで最悪」になりました。世界一の感染国のそのまた中心、ニューヨーク市では、「人口(860万人)は白人が32%と一番多く、次にヒスパニック系29%、黒人22%、アジア系14%だが、死者はヒスパニック系が34%と一番多く、次に黒人28%、白人が27%、アジア系7%という統計結果」でした。明らかに感染被害の人種的偏りがあります。日本の第一波は、入り口のPCR検査数が少なく、まだ感染度について国際比較可能な段階にありませんが、中途半端な緊急事態宣言とその自粛要請・緩和のなかで、在宅勤務・テレワークが可能で仕事も確保できる大企業正社員労働者と、仕事やアルバイトを失い、明日の食事や家賃で困窮する不安定労働者・学生・シングルマザー、補償もほとんどなく倒産寸前の中小零細企業・個人事業者などの苦境に、経済格差がクリアーに表れています。 一斉休校からの授業再開では、自宅自粛中のこどもたちのIT環境の違いが、学力や学習進度の違いにつながらないか、危惧されます。

かと 世界各国で、第一波の大波がややおだやかになった段階で、今年1月から5月までの、より正確には、中国・武漢でヒト−ヒト感染が現れた昨年末から半年間の、中間的総括が出てきています。学術的には、米中のホットな情報戦の論点である発生源の問題、特に武漢ウィルス研究所からの流出説の問題があります。ウィルスの遺伝子配列も、初期の中国での蔓延と、欧米での感染爆発ではやや異なり、欧米の方が感染力が強まっているといわれます。外出禁止と感染抑制に有意の相関はなく、休校措置に比べて都市封鎖=ロックダウンの効果は限定的だったという研究も現れています。当初日本で一部の「専門家」の唱えていた「普通のインフルエンザ程度」「子供は大丈夫」などというのは、誤りでした。感染経路・感染力や症状についてもケースが増えて、多数の臨床データ・論文が出ています。これが、これからの治療薬・ワクチン製造の競争につながります。ここでも日本は、クラスター対策にせいいっぱいで、まともな感染状況のデータを出せず、PCR検査もまともにできない、感染医療後進国であることを世界に示してしまいました。緊急事態宣言の発動と解除の基準さえあいまいで、ひたすら国民に苦難を強いながら、医療体制の再構築さえ十分にできませんでした。PCR検査の不足と、検査を受けられる「目安」の変更を、国民や現場医療従事者の「誤解」のせいにした厚生労働大臣の厚顔無恥な発言が、今後の見通しにも暗雲を投げかけます。究極の「自己責任論」です。

かと パンデミックの中で、危機における政治のリーダーシップも問われました。ほとんどの国で、感染症に対して国民の結束をよびかけ、リーダーの政治的評価はあがっているのに、感染確認者数・死者数とも相対的に少ない日本が、なぜか最大感染国アメリカと共に、最下位です。経営者向けの雑誌『プレシデント』オンライン4月17日に「日本の安倍政権だけが「コロナ危機で支持率低下」という残念さーーそんな先進国はほかにない」という記事が出ましたが、世論調査ににもとづくその基調は、その後の国際比較でも追認され、「日本の指導者、国民評価で最下位」と確認されています。あわてて外務省系の国際政治学者が「世界が評価を変え始めた〜日本は新型コロナ感染抑止に成功している」などと反論を始めましたが、それは、この3か月以上政府と「専門家会議」が言い続けて国民から見放された「PCR検査を増やせば感染者数が減るわけではない」とか「マスク文化の伝統」を論拠にしたもので、全く説得力がありません。安倍内閣の初発の危機感のなさ、習近平来日予定や東京オリンピック開催の政治日程が優先された初動の遅れと後手後手の対策、国民の心に届かない官僚作文の棒読みメッセージ・記者会見、そして、緊急事態政策にさえ忍び込ませた経済成長優先と私利私欲の思惑が、世界からも国民からも、見透かされているのです。

かと 5月14日の緊急事態宣言39県解除の記者会見で、安倍首相は「日本はG7の中で最小の感染者数・死者数にとどめることができた」と「日本の成功」を誇り、首相につきそった「専門家会議」「諮問委員会」の尾身茂博士は、その「成功」要因を、@日本の医療体制、Aクラスター対策、B国民の「健康意識」、と挙げました。本当でしょうか? 発熱を4日間がまんし、保健所に電話してもつながらず、それでもPCR検査を断られ、重症の肺炎で担ぎ込まれてようやく陽性とわかり、手遅れのまま亡くなっていった多くの人々の無念への謝罪と慰霊、反省の言葉はありませんでした。それは、第一波での初発の対応、隣国中国での発症なのに交通を遮断せずに春節観光客を迎えた新型コロナの過小評価・インバウンド第一主義、クルーズ船対応の混乱と失敗、PCR検査の「4日間37度5分」しばりなど重症者のみに絞っての治療と「クラスター」つぶしによって、救えたはずの何人もの感染者を見逃した事実を否定する、自己弁護です。私利私欲の安倍首相ならいつものことですが、「専門家のトップの良心」を疑わせるものです。初動対応の遅れと医療従事者・一般患者を巻き込んだ院内感染の広がりについても、「中国武漢からの感染はおさえこんだ」という名目で、なかったことにしようとしています。

かと こうした医学・医療体制上の専門的問題、PCR検査の遅れと厚労省医系技官ら「専門家」の問題性は、上昌広さんが『フォーサイト』誌に「医系技官」が狂わせた日本の「新型コロナ」対策」という刺激的な論文で中間総括し、児玉龍彦さんも「致死ウイルスに向き合う〜恐怖の出口にしないために」で論じていますから、毎日更新される山中伸弥教授のホームページと共に、参照を求めるにとどめます。「補償なき自粛要請」のような政策全般も評価・点検しなければなりませんが、私の「パンデミックの政治学」では、敢えて「マスク」の問題、かの「アベノマスク」に、焦点をあててみようと思います。「マスク」は、すでに手洗いと共にだれでもできる感染対策として定着し、国際的にも米国が、ウィルス発生源の問題、初期の情報隠蔽の問題と共に、「中国はWHOに圧力をかけて世界中のマスクや防護服を買い漁った?」と問題にしています。中国の欧州途上国向け「マスク外交」も論じられているテーマで、第一波の日本の感染症対策の「失敗の教訓」を、象徴的に示していると思われるからです。マスクが医療現場で入手困難になり、ドラッグストアの店先から消えた時期に、厚生労働省医政局経済課 に「マスク等物資対策班 」がつくられ、佐伯首相秘書官に耳打ちされた安倍首相のエイプリル・フール発言「布マスク2枚の全戸配付」の気まぐれに、総額466億円の予算が付いて翻弄され、あわてて怪しげなメーカー・ブローカーからも布マスクをかき集めたら不良品だらけ、全品8億円かけて再点検で遅れに遅れ、ようやく東京23区以外にも配付する目処が立った頃には、品薄だった不織布マスクが巷にあふれ、1枚11円まで値崩れがおきていた、という愚かな悲喜劇の顛末です。その不良品仕分けに保健所が動員され、日本郵便の配達遅れにも影響した、というおまけつきです。

かと ただし、この「アベノマスクの政治経済学」は、新型コロナウィルス感染前の2009年パンデミックス時からのマスク備蓄・感染症対策、経済産業省担当の世界マスク市場分析と日本マスク産業育成策、首相官邸「健康・医療戦略」中での感染症の位置づけ、病院再編成・ベッド数削減・保健所つぶし、武漢感染発覚後の世界マスク市場の動きと経産省主導の国産マスク企業補助金付急募、厚労省と経産省の連携不足、厚労省内で感染政策全般を主導する健康局結核感染症課と「マスク対策」を押しつけられた医政局経済課の関係、安倍首相側近内での加藤厚労相と西村経済再生相の功名争い、それらのまわりで「マスク利権」と「治療薬・ワクチン利権」をオーバーラップさせ蠢く政治家・経済人・医療事業者たち、旧陸軍防疫給水部=731部隊を含む感染症対策の歴史的背景、等々、本格的分析が必要です。いまのところ、HP連載とは別立ての論文として執筆中です。ヴェネツィア・カーニバルの仮面祭のマスクがペスト流行時の医師たちの感染予防に由来すること、100年前の「スペイン風邪」時にも日本ではマスク不足で騒ぎになったが、たとえばサンフランシスコでも「マスク着用条例」が作られ、別に「日本文化」ではなかったことなど、自宅自粛中の研究に格好のテーマです。書物では、カミュの『ペスト』ばかりではなく、永らく絶版で入手困難だった山本太郎さんの『感染症と文明ーー共生への道』(岩波新書)速水融さんの『日本を襲ったスペイン・インフルエンザ―人類とウイルスの第一次世界戦争』(藤原書店)、 村上陽一郎さんの『ペスト大流行: ヨーロッパ中世の崩壊』 (岩波新書などの名著が、次々と復刊されています。 「コロナ休暇」の読書用に、ぜひオンデマンドで、ご入手ください。

PCR検査不足のまま「集団免疫」へと迷走する悪夢 [パンデミックの政治 6]

かと 2020.5.1  例年なら、世界の働くものの祭典、メーデーを祝う日です。しかし、ほとんどの国で、パレードは見えません。コロナ前(BC)でもコロナ後(AC)でもなく、パンデミックの真っ最中です。COVID-19のヒト世界侵入はとまりません。また2週間で広がりました。4月14日は感染者は185か国192万人、死者12万人でしたが、4月30日のジョンズ・ホプキンス大学COVID-19Mapでは、2ヵ国増え187ヵ国325万6千人感染確認、死者23万3千人です。最大はアメリカで、623万人の検査中、107万人感染確認、死者6万3千人です。感染者はスペイン21万、イタリア20万、イギリス17万、フランス16万、ドイツ16万、トルコ12万、ロシア10万と続き、イランとブラジルも発症地中国の8万3千人を越えました。死者数は、米国についでイタリア2万7千、イギリス2万6千、スペイン・フランス2万4千で、その一人一人にかけがいのない人生と家族がいることを思えば、ドイツの死者6千人は救命体制の奮闘を示しています。これまで赤点だった中南米やアフリカの感染が、大きな赤丸になって全大陸に広がりつつあり、夏になって気温が上がればといった北半球の人々の希望的観測を、打ち砕きます。世界は、長期のパンデミックのさなかです。

かと WHOも、警戒を緩めるきざしはありませんが、パンデミックへの対処の国民国家単位での進め方は、いくつかのパターンに分かれてきました。最も極端なのは、スウェーデンの「集団免疫獲得型」です。感染者は2万人近くが確認され、2千人以上が死亡しているのに、ロックダウンも学校閉鎖もなく、50人までならイベント・集会もできます。カフェもレストランも公園も開放で、すでに25%が免疫を得たと言います。ただし、この間731部隊や断種法・優生思想を研究してきた私には、背景に20世紀スウェーデン「優生学」の影が見えます。スウェーデンの「集団免疫」は、高福祉・高負担で政府への信頼厚い小さな福祉国家ならではの、生き残り策です。大国イギリスやアメリカでは、一度は「集団免疫」が口にされても、すぐに大規模検査・陽性者隔離、自由と人権の制限を伴うロックダウン・外出禁止の「欧米型」に切り替えられました。初動が遅れたため、イタリア・スペイン・フランス等では感染爆発・医療崩壊を経験し、それでもワクチンも確かな治療法もない以上、まずは、いのち優先で感染ピークを抑え込み、徐々に自由を回復するしかありません。

かと このオーソドクスな「検査・隔離」を、初動で素早く発動し、最新医療技術・知見と情報技術・GPS追跡をも駆使して感染ピークを最小限に食い止めたのが、台湾・香港・韓国で採られた「東アジア型」です。台湾のEマスク韓国のドライブスルーPCR検査などは、欧米でも学ぶべき成功モデルとされました。初動の隠蔽で失敗した中国も、大きな犠牲を払いながら「東アジア型」に乗り換えてピークを越え、いまや外出・移動を可能にし、5月22日には全人代を開くと宣言しました。ただし、「東アジア型」でも、シンガポールのように、外国人労働者からの集団感染を抑え込めない例があり、いずれの国でも、外国からの帰国者等から第二波・第三波の感染が避けられません。パンデミック対策での医療先進国は、日本以外の東アジア、次いでヨーロッパのドイツ、落第国が「消毒液を飲め」など大言壮語だけのトランプのアメリカ、という国際的評価が生まれています。これに、有効治療薬・ワクチン製造の競争が加わって、「コロナ後(AC)」の新しい世界地図が見えてくるでしょう。

かと ジョンズ・ホプキンス大学COVID-19Mapの感染者数は、正確には「感染確認者数(Comfirmed Cases)」です。地図の左辺にあって、「死者数(Total Deaths)」の右辺には「検査結果数(Total Test Results)」がおかれ、それぞれの国・地域の感染実態が見えるように配置されています。右辺の検査数中の左辺の感染確認者数、いわゆる「陽性率」が見えてきます。この点で特異なのが日本で、感染者数・死者数は韓国を超えましたが、「検査結果数」は一日最高でも7千件程度、累計14万人以下で、感染対策「模範国」韓国の50万人検査結果とは人口比で10分の1で、比較すべくもありません。OECD統計では36ヵ国中35位、1000人あたり1.8人でトップのアイスランド135人と二桁違い。主観的には、遅ればせでも「東アジア型」に加わる出発点にたったように見えますが、医療資源・人材再配置・PCR検査拡大態勢の準備もあやふやで、客観的には、スウェーデンとは比べものにならない大規模な自滅型の「集団免疫」に向かって迷走しているようにみえます。「アジアのガラパゴス」日本です。

かと  その理由は、はっきりしています。政府と「専門家会議」が、PCR検査を重症者のみに絞り、その範囲での公式「感染者数」の増減に、一喜一憂しています。検査数あたりの感染確認者は、事後的にしかわかりません。民間検査機関・大学病院等の器材・人材を導入できず、ようやく心ある医療従事者や現場医師会の声におされて、ドライブスルー検査等が始まったばかりです。院内感染・家族感染が多いのに、「医療崩壊」の語はマスコミではタブーとか。首相が「一日2万人の検査能力」を3か月繰り返していますが、実際はミゼラブルです。多くの人が不安を抱えたまま、検査をあきらめています。ようやく電話が通じても、4日間様子を見てと検査を断られます。ようやくPCR検査にたどりつき、「軽症者」として自宅待機・ホテル隔離に入っても、たちまち重症化し転院するケースや、検査の遅れで死亡に至るケースが、続出しています。どうやら「専門家会議」主流の国立感染症研究所と厚生労働省医系技官の考えた水際作戦用枠組が、いまだに第一線現場に残っているようです。本連載が何度も述べてきたように、感染研の前身、予防衛生研究所は、関東軍731部隊の残党が歴代所長をつとめる形で作られ、基礎データを独占して学界に君臨してきました。今回も、その名残りでしょう。「武漢ウィルス」と呼ばれ欧米の爆発前の3か月前なら、マスク・防護服・検査機器も国際市場で入手可能だったのに、「医療先進国日本」などと驕り、中国・韓国を見下して、輸入もできずにきました。有効治療法・ワクチンづくりでも、遅れをとっています。予防衛生研究所は、広島・長崎の被爆者日米調査(ABCC)、「治療なきデータ収集」の日本側担当機関でじた。その延長上で、上昌広さんのいう「人体実験」が続きます。ファシズムは、感染症対策の名で、忍び寄ります。

かと  日本のパンデミック対策は、悲惨です。国民、特に不安定労働者や社会的弱者に対しては、冷酷です。もともと医療費削減政策で、病院再編・ベッド数削減・保健所減らしを進めてきました。今年度予算にも、13万病床削減予算84億円が入っていました。そこに、黒船コロナの来襲です。中国での発症を「対岸の火事」「貧困な社会衛生による混乱」と軽く見たツケ、初動を「武漢・湖北省」しばり、「クルーズ船」対策に限定し、PCR検査を重症者のみにしてきた「クラスター方式」の無理が、大都市での市中感染を防げませんでした。東京オリンピックの延期が決まると、急に全国一斉休校、東京ロックダウンを言い出し、4月に入って緊急事態を宣言し、ひたすら「自粛」が呼びかけられました。日本政府が「自粛」を言う場合、休業や休校への補償がない、「自己責任」という意味です。感染対策初動の誤りと後手後手手直しの責任を認めず、国民の行動パターンに責任転嫁する布石です。基礎データの根拠が乏しい数式を操作しての「8割自粛」が、その典型です。

かと  4月末にようやく決まった緊急補正予算の性格は、「日本方式」の経済主義的性格を、よく示しています。PCR検査拡大のための直接予算は、わずか49億円。病床削減予算の半分、かの「アベノマスク」466億円の9分の1です。その算定根拠は、3月段階でのPCR検査実績=一日1500人が継続するという前提なそうです。「4日間37度5分以上の発熱」というPCR検査の「目安」、保健所ー地方衛生研究所ー感染研という「帰国者・接触者相談センター」ルートが、依然として主流です。多くの国民が、家賃や明日の食事で困っているときに、一人10万円の一時金で黙らせ、手続きの大変な雇用調整助成金や融資枠の拡大で乗り切ろうとする、お粗末な緊急経済対策です。その上、いつ使えるか分からない将来の「V字型回復」目当てのGO TOキャンペーンには、1兆7千億円です。病院のマスク・防護服も、医療関係者援助も、人工呼吸器やECMOも緊急課題なのに、日本の感染症対策は、曖昧で不徹底、むしろ収束後の「集団免疫」ばかりを夢見ているようです。まずは、医療従事・関係者や「自粛」体制を支えるエレメンタル労働者に、安心して働ける検査を実施すべきです。

かと 緊急対策の問題点の多くは、担当大臣が「経済再生大臣」で、記者会見から「厚生労働大臣」が消えて久しく、トップの首相は経産省出身補佐官・秘書官の作った原稿を棒読みするだけ、という政治の鬱屈に、端的に示されています。その経産省主導愚策の実例を、悪評だらけの「アベノマスク」をケースとして、供給計画・446億円予算・製造企業・ブローカー・私物化の詳細まで分析する「アベノマスクの政治経済学」を準備したのですが、今日もまた「妊婦用布マスク」の不良品4万7千枚・全品回収のニュースが入って進行中なので、次回以降にまわします。忘れてならないのは、この不良品仕分けに、感染対策の第一線で多忙な保健所の保健師が動員されてきたことです。また、胡散臭い製造・納入業者は、731部隊山内忠重と関わる興和」、妊婦用不良品で明らかにされた「ユースビオ」など5社ばかりでなく、加計学園の足元「今治市タオル工業組合」他、多数にのぼることです。

かと 最新の医学情報、本来の感染対策はどうあるべきかについては、引き続き山中伸弥教授のホームページ、無症状や初期症状にこそ「アビガン」を投与すべきという児玉龍彦さん・金子勝さんのyou tube「 デモクラシータイムス」対談、最新号、それに上昌広さんの厚労省・鈴木康裕医務技官「専門家会議」の責任追及を、お勧めします。今回は、「感染者数」を問題にしてきたので、最後に、「死者数(Total Deaths)」の真実。日本の現コロナ死者数460人余りは、PCR検査が間に合った「認定死者数」にすぎず、「かくれコロナ死亡者」がいる可能性大です。このことは、自宅孤独死や行き倒れの死後にPCR検査で陽性がわかった多くの事例や、葬儀屋さんがおそれる事態日本法医学会のいう「死因不明危機」、東京都における「インフルエンザ・肺炎死急増の不気味」などから、ささやかれています。英国『ファイナンシャル・タイムズ』紙は、各国死亡者統計での過去5年平均に比して急増した病名・死因・人数がコロナ・ウィルスによるものではないかと推計し、世界全体で公表値の6割増が新型コロナ犠牲者ではと、発表しています。これは、100年前のスペイン風邪日本人死者数の内務省公式発表を、速水融教授が歴史社会学・人口統計学を駆使して覆した科学的方法で、説得力があります

かと 「集団免疫」獲得の前に、膨大な犠牲者の屍がうまれます。経済的理由での自殺を含め、貧者・弱者にしわ寄せがくるでしょう。あなたも、わたしも、あなたのご家族・お友達も、すでに「隠れコロナ」で感染源となる可能性があります。くれぐれも、ご自重・ご自愛を!

もっと検査を! 無責任な政府と「専門家」に任せず、自分自身で情報評価を![パンデミックの政治 5]

かと 2020.4.15  世界はいま、21世紀最大の危機のなかにあります。それも日々、変わっています。世界中が国境を閉じ、隔離と閉鎖、自粛と自制を求めています。ただし、マックス・ウェーバーの生命を奪った100年前のスペイン風邪の時代とはちがって、テレビやインターネットを通じて、無数のパンデミック情報が飛び交っています。今回は、CIAがホワイトハウスの米国大統領に確かな情報のみを届けるための仕分けの手法、シャーマン・ケントが開拓した「情報評価」を試みました。

かと 2020年新型コロナウィルス(COVID-19)パンデミックの蔓延は、止まりません。すべての大陸で、猛威をふるっています。刻々変わる世界の感染の広がりは、ジョンズ・ホプキンス大学の特設サイトが、世界の定番になりつつあります。Worlddata.info や WHOの公式発表で補いましょう。

https://coronavirus.jhu.edu/map.html

https://www.worlddata.info/coronavirus-covid19.php

https://www.who.int/emergencies/diseases/novel-coronavirus-2019

かとジョンズ・ホプキンス大調査では、2週間前に184か国、757,944人感染、死者も36,674人(3月31日午前4時現在)というデータでしたが、いまや感染者は185か国192万人、死者も三倍近くで12万人です(4月14 日現在)。感染爆発の中心は、中国・ヨーロッパからアメリカに移りました。アメリカの感染者は58万人、死者2万人以上です。ただし、ジョンズ・ホプキンス大学(JHU)データにはPCR検査数も出ていて、アメリカはすでに、無保険者・非白人を含め300万人近くを無料で検査済みです。つまり、市内感染率の概要をつかんでいます。発祥地中国は、8万3000人感染で第一波のピークを越え、最近欧米からの帰国者を中心に、第二波が始まりました。イタリア、スペイン、フランス、ドイツなどは10万人以上の感染爆発が続き、皇太子も首相も感染したイギリスは中国を越えて10万に迫る勢いです。パンデミックは、オーストラリア、中南米から、医療システムの脆弱なアフリカ大陸に広がっています。WHOやIOCが恐れるのは、アフリカでの爆発です。それが進むと、来年に延期された東京オリンピックどころではないでしょう。最近のIOCバッハ会長の発言は、中止の可能性を含め、それを示唆しています。

かと 世界経済は、リーマンショックを上回る打撃を受けています。国際通貨基金(IMF)さえ、世界恐慌をリアルな見通しとして述べています。世界中で都市閉鎖(ロックダウン)が行われていますが、それは、日本で言われる「感染対策と経済政策のバランス」などではなく、感染症第一で、コロナとたたかえなければ、経済も社会も壊滅しかねないからです。西村担当相は「自粛」のみを述べて国民の生活を保障できない緊急経済対策のお粗末を、「休業補償している国は見当たらない」などと述べていますが、とんでもありません。医療崩壊をまねがれても、申請2日後に3か月分の休業補償が振り込まれるドイツをはじめ、休業・休職補償は世界の常識です。医療崩壊をはじめ大きな犠牲を出しているスペインでは、経済再建の柱にベーシックインカムを導入しようとしています。初動の遅れで世界一の感染国となり、WHO に責任を押しつけるトランプのアメリカでさえ、失業者1600万人突破の現実と秋の大統領選を前にして、一人大人13万円、こども5万5千円の直接給付を開始しました。ちょうど日本で、466億円かけて世帯毎に布マスク2枚が配られるのと同時でした。日本のメディアでは大きくは報じられませんが、CNNBBCニューヨークタイムズニューズウェークを見れば、いくらでも情報を得られます。コロナ収束後の世界地図は、これまでとは大きく違ったものになるでしょう。

かと コロナばかりでなく、「安倍ウィルス」にも汚染された日本は、悲惨です。「クラスター」「オーバーシュート」等、「安倍ウィルス」にまみれた「専門家」のいう「日本式対策」に、欺されてはいけません。まずは徹底的な感染症対策、「検査・隔離・治療」が必要です。信頼しうるデータなしの日本の今は、まるでミッドウェー海戦前夜、いやインパール作戦突入中です。ちなみに、当初トランプの唱えた「チャイナ・ウィルス」は、FD・ルーズベルトの「リメンバー・パールハーバー」にちなんだものです。黄禍論と結びつけば、アメリカでは人種差別や経済格差を隠して「戦意高揚」が可能になります。日本では、医師も看護師も、国会議員の家族や秘書・運転手も、自衛官も警察官も、介護施設まで、次々と感染しています。中国との距離とクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」から早期に感染者が見つかったものの、東京オリンピック延期決定までの6週間を、感染者数を少なく見せるために、PCR検査をサボタージュしてきました。それが日本式「クラスター作戦」でしたが、所詮「水際対策」の延長上での後進国型で、大都市の市内感染には、無力でした。2か月あれば、医師や医療機関、保健所・保健師、防護服や医療用マスク、人工呼吸器等、緊急医療資源の準備ができたはずなのに、「安倍ウィルス」に汚染された厚生労働省、「専門家会議」は、それさえも怠ってきました。行き当たりばったりの後手後手の対策です。JHUの世界感染地図で見れば瞭然、極端に検査数が少なく、まともな疫学的国際比較さえできません。日々の感染者数増の数字も、熱があり不安を持った市民の相談者の2%しか、PCR検査を受けられません。90%が検査の窓口にも届かず、断られました。そのうえ、日々の検査数が記者会見等では発表されず、検査人数中の何人が感染者であったかの陽性率がわかりませんから、市民は一喜一憂するのみで、不安は募るばかりです。

かと  ほとんどの国では、パンデミックの危機にあたって、政治の最高指導者は連日記者会見を開き、国民に直接語り、働きかけています。ようやく日本でも、東京オリンピック延期決定直後から、安倍首相と利害の一致していた小池東京都知事がオモテにしゃしゃりでて、夏の都知事選を見据えたパフォーマンスをはじめました。安倍首相も、全国一斉休校から緊急事態宣言へと、「やってる感」演技を始めました。ただし、記者会見ではプロンプター原稿の読み上げだけで、まともに質問には答えませんでした。緊急経済対策には、こっそり「感染症を巡るネガティブな対日認識を払拭するため,外務本省及び在外公館において,SNS等インターネットを通じ,我が国の状況や取組に係る情報発信を拡充」する24億円の情報戦予算の他、「新型コロナウイルス感染症対策や経済対策に盛り込まれた各施策の内容を始めとした喫緊の取組等についての国内広報を実施」という100億円広報予算も、忍び込ませました。公共放送を大本営発表用メディアとし、なんでも「安倍晋三がんばれ」らしい35万人「いいね」発信のネット応援団を使って、批判的メディアの封じ込めに使おうとしています。もともと今年度厚生労働省予算には、「医療法上の病床について、稼働病床数ベースで1割以上の削減を行った病院に対し「将来、当該病床を稼働させていれば得られたであろう利益」の補助を全額国費で行うこととし、全国での病床数削減を狙う」として、国費84億円が入っています。それがいまやベッド数不足で、あわててアパホテルを借り上げる、無為無策の医療後進国日本です。国民には布マスク2枚のみで、まともな休業補償もなく、ひたすら自粛を促すのみのこんな状況下では、信頼できる情報を見分け、自分自身でいのちとくらしを守る情報仕分けが必要不可欠です。

かと 一つのフォークロアが、静かにネット上で広まっています。京大人文研・農業史の藤原辰史さんのエッセイ「パンデミックを生きる指針——歴史研究のアプローチ」が、三人の友人から届きました。100年前のスペイン風邪の事例を振り返りつつ、「起こりうる事態を冷徹に考える」ための、心を打つ一文です。ちょうど21世紀の初めの9.11同時テロの際に、「100人の地球村」が広がったように、眼前の世界を理性的に理解しようと、読まれているようです。特にオンデマンド授業で、学生たちに読ませたい文章です。皆さんも、ぜひ拡散してください。

https://www.iwanamishinsho80.com/post/pandemic
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200410-00010000-kyt-cul

 藤原辰史さんのいう「事態を冷徹に考える」うえで、ホンモノの「専門家」の力と知恵が不可欠です。前回も紹介しましたが、ノーベル賞受賞者・山中伸弥教授の「山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信」には、最新医学情報ばかりでなく、「証拠(エビデンス)の強さによる情報分類」のページがあって、極めて有意義です。東京も大阪も毎日の検査が500人以下なのは「異常」と認めています。

https://www.covid19-yamanaka.com

 山中さんに呼応するかのように、同じくノーベル賞受賞者の本庶佑さんも、緊急提言を出しました。その第一は、「PCR検査の大幅増」です。その検査の具体的進め方について、すでに600人以上の医師たちによって、保健所を通さない検査態勢の仕組みも提案されています。直ちに実施すべきです。

かと 立命館大学・医療社会学の美馬達哉さん『<病>のスペクタクルーー生権力の政治学』(人文書院、2007年)には、「<感染症>とは何よりも政治学の対象」と出てきます。2002-03年のSARSの出現と人間の対応を、M・フーコーらの「生権力」の観点から論じて、有益です。現局面については、『現代ビジネス』誌上に寄稿しており、「科学がいえるのはここまで」という留保が誠実で、好感を持てます。政治学者の私の方は、2009年の新型インフルエンザ時のメキシコ滞在・隔離体験と、この間の731部隊研究から、本「ネチズンカレッジ」に「パンデミックの政治学」を連載しています。

 2009年は、政治史の上では、自公連立麻生内閣から、民主党鳩山内閣への転換期でした。しかし、感染症対策の失敗で、政権交代になったわけではありません。日本での新型インフル感染の経過は、現在の首相官邸ホームページ「過去のパンデミックレビュー」に、日経新聞社会部次長・前村聡さんの「2009年新型インフルエンザ ―「未知の感染症」をどのように報じたのか?」が出ています。2020年のメディア報道ともよく似た展開で、参考になります。ただし、政局の上では、すでに支持率10%台で満身創痍の麻生内閣の末期、実際にパンデミックに初動対応したのは、後の東京都知事・舛添要一厚労相と、国内感染が関西から始まったために橋下徹・大阪府知事(当時)で、少なくとも2020年の安倍首相・加藤厚労相・西村担当相(実は陰に今井首相補佐官)体制よりは、まともに指導力を発揮し、感染症に向き合ったようです。

かと こうした過去に学ばないまま、2020年の日本は、EU内でのイタリアと同じように、新自由主義医療政策で高齢化社会なのに医療予算が削られ、病院統廃合・保健所縮小まで進んでいました。今回は、SARS/MERSを経験した中国・韓国の方が素早く、日本が東アジアの医療後進国であることを、世界に証しました。
 PCR検査消極論・拡充不要論の「専門家会議」厚労省医系技官プラス国立感染研系御用学者を、戦時陸海軍・731部隊の「亡霊」まで遡って見るのは、私ばかりではありません。医師の上昌広さんも同じです。上さんは、「原子力ムラ」になぞらえて、医・薬・官の「医療ムラ」といいます(『医療詐欺』講談社新書、2014)。日本の「医療崩壊」が、1980年代厚生省の老人医療費削減政策に始まり、21世紀に医療従事者削減・病院再統合・ベッド数削減まで進んできたことは、上昌広さんの『病院は東京から破綻する』(朝日新聞出版)他の著書や、ウェブ上の論文で、詳しく展開されています。私は、上さんの分析に示唆を得て、獣医学や自衛隊・医療メディアも加えて「ワクチン村」と言ってきました。今回改めて調べると、東京の感染クラスターの中心・台東区永寿総合病院創設者倉内喜久雄ペスト・ワクチンとも関係)、「アベノマスク」466億円の政府発注先の一つ「興和」創設者・山内忠重が、なぜか共に元731部隊でした(薬害エイズのミドリ十字と同じ)。大きく取り上げられなくなった慈恵医大・慶応病院の院内感染を含め、『悪魔の飽食』の「亡霊」を、今後も追いかけていきます。

かと現局面の最先端医学からの感染対策評価は、東大先端研・児玉龍彦さんが、最も信頼できます。金子勝さんの経済政策批判と共に、you tube 「デモクラシー・タイムズ」で見ることができます。国民をごまかし、検査を妨害してきた「専門家会議」と厚労省医系技官・技監の問題性も明確に語られ、その「司令塔」を変えるべき、と提言されています。深く納得します。

 ka「自粛で東京を救えるか」https://www.youtube.com/watch?v=7EtDPtKd4L0

「自分で考え、いのちを守れ!」 https://www.youtube.com/watch?v=RUrC57UZjYk 
「東京はニューヨークになるか」https://www.youtube.com/watch?v=r-3QyWfSsCQ 
「検査、検査、検査そして隔離」https://www.youtube.com/watch?v=ApAbkrsa7ZU 

かと この国の最高責任者は、自らの権力維持に汲々とし、感染対策は厚労省と御用学者に、経済政策は秘書官と経産省・財務省にまかせ、東京オリンピックの延期が決まると、緊急事態法制の整備と、憲法改正を目標にしています。日本版NSC=国家安全保障局の出番です。今井尚哉と共に、いよいよ北村滋が動きます。感染対策にも、各地の学校児童のマスクは白のみとか、給付金は個人でなく世帯単位とか、日本会議風復古調が忍ばせてあります。国民生活を置き去りにしての次の手は、おそらく、満を持しての天皇の「お言葉」=政治利用と、医療現場への自衛隊大量導入でしょう。野党まで乗ってしまった緊急事態宣言の問題性は、小倉利丸さんの批評、ドイツと比較しての水島朝穂さんの憲法学からの批判が、よく考えられ、すぐれています。これからでは遅すぎの可能性大ですが、ようやく日本も、WHOの言っていた「検査・検査・検査」の局面です。クルーズ船で乗員の検査を後回しにして乗客の集団感染を招いた轍をふまえて、まずは、医療従事者・保健師の安全のためのPCR検査・抗体検査から、始めなければなりません。「検査・隔離・治療・救命」への、壮大な人体実験が進行中です。

いよいよ日本列島のクルーズ化、安倍「ワクチン村」に任せず、いのちとくらしの防衛を![パンデミックの政治4]

かとかと2020.4.1  3月15日にWHOのパンデミック宣言を受けて本サイトを緊急更新しましたが、その際は「世界120ヵ国以上、14万人感染」でした。それから2週間で、ヨーロッパ・アメリカでの感染が爆発し、184か国、757,944人感染、死者も36,674人(3月31日午前4時現在)となりました。ジョンズ・ホプキンス大学調査(4月1日)では、世界の感染者85万人・死者4万人超と報告されています。AFP通信のCOVID-19特集が毎日更新されますが、世界は2週間で一変しています。ドイツのように毎週50万人の大量検査をしても、医療システムが機能し死亡者を最小限にしている国もありますが、イタリア、スペインのように院内感染で医療従事者が身動きできなった国、アメリカのように、そもそも健康保険制度が未整備で、社会的弱者・貧困者・移民労働者が検査も受けられず無防備なまま、感染爆発した国もあります。

かとかとiPS 細胞のノーベル賞受賞者・山中伸弥教授は、自ら「山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信」を立ち上げました。そこに「新型コロナウイルスとの闘いは短距離走ではありません。1年は続く可能性のある長いマラソンです」「今年のお花見は、人混みは避け、近くで咲いている桜の周りを散歩するだけにしてください」「桜は来年も帰ってきます。人の命は帰ってきません」といったメッセージと共に、「エビデンスの強さによる情報分類」というページが設けられています。「病態・感染・対策」に分けて、「手洗いやマスクしていても感染することがある」といった「正しい情報」、「暖かくなると感染は終息する」といった「エビデンスのない情報」が仕分けされていて、私たちの自衛策にきわめて有益です。よくいわれる「致死率がクルーズ船や韓国と同程度と仮定し死亡者数から逆すると、報告されている日本の感染者数は少なすぎる」「多くの感染者が無症状、もしくは軽症なのは、自然免疫が関与している」「感染しても80%の人は、他人に感染させない」等は、「正しいかもしれないが、さらなるエビデンスが必要な情報」とされています。今回のパンデミックには、多様な情報戦が、複雑にからみあっています。小倉利丸さんの「リスク回避のサボタージュ――資本と国家の利益のために人々が殺される」が、社会運動の困難を含めて、その深部での動きを解きほぐそうとしていて、参考になります。

かとかと ウィルスには、国籍も国境もありません。確かなことは、気候変動・環境変化とグローバル経済が、新たなウィルス出現を加速していることです。AFPデータは、大陸別ででています。アジア、ヨーロッパ、アメリカがほぼ10万人以上で大きく広がり、アフリカとオセアニアがこれからです。その正体は、いまだにわかっていません。潜伏期間とか無症状感染とか、ワクチン・治療薬がないといった感染症の特徴ばかりではなく、今日COVID-19とされるウィルスがどこから来たかのかが、初めて感染が確認された中国と、あっという間に世界一の感染国となったアメリカとの間で、より正確には、共産党の独裁者習近平と、アメリカ第一主義で次々と国際秩序を壊してきたトランプ大統領の間で、起こっています。トランプは、「武漢ウィルス」から「チャイナ・ウィルス」と名付けて、発症国中国の責任を追及し、世界への影響力をおとしめようとし、中国の側は、米軍生物兵器の疑いをほのめかしています。秋の大統領選向けとはいえ、トランプは「チャイナ・ウィルス」というネーミングで「パールハーバー」を想起させ(彼にとっては、日本も中国も韓国も「イェロー」です)、日本の国家予算の2倍2兆ドルで「戦争」に立ち向かおうとしています。世界恐慌をニューディールで乗り切ったF・ルーズベルト大統領のような知性も計画性もありませんが、あやかろうとしています。中国側の感染源追跡も諸説が有り、すでに武漢の海鮮市場からの動物感染説は否定され、昨年11月にはヒト・ヒト感染が始まっていたとも言われ、いまだ藪の中です。

かとかと 本連載は、中国から感染が広がったので、毛沢東の「調査なくして発言権なし」になぞらえて、「検査なくして対策なし」と訴えてきました。いまやサンプルは、世界大に広がり、症状についても、対策についても、応急治療薬についても、さまざまな成功例・失敗例が出ています。初期の中国の事例から抽出され、日本政府が「湖北省水際対策」と「クルーズ船」のみに集中していた時期に流布した、「風邪のようなもので高齢者以外は恐れる必要がない」といった情報は誤りで、感染力が強く、致死率も高く、若者でも幼児でも感染し、臭覚・味覚なしなど多様な症状があることが、わかってきました。「37.5度以上の熱が4日間続いたら相談を」などという重症者・基礎疾患患者に限定するPCR検査や、小さなクラスターつぶしにのみ検査が使える「日本方式」が、日本医学の先進的医学水準でも、検査の精度と確実性の保証でもなく、たんに検査装置と要員の不足、病院統廃合で専門病院もベッド数も減らしてきた新自由主義健康・医療政策の帰結、日本の対策の遅れであることがわかってきました。オリンピック延期決定後に増えた東京都の市中感染者数は、多くは検査件数の増加によるもので、しかも10倍以上の検査を断られた「検査難民」や無症状感染者が、巷にあふれていると考えられます。

かとかとたしかに積極的疫学検査で医療崩壊を招いたイタリア・スペインの事例もありますが、徹底的検査によってピークを過ぎ、致死率も低く抑えた湖北省以外の中国、韓国の事例、何よりも毎週50万件の積極的検査から早期に感染者を見出し、症状に応じた対策で致死率1%以下に抑え、国民生活へのきめ細かい生活補償を打ち出したドイツや、早期に封じ込めた台湾の事例もあります。このような事態に、各国の指導者の知性と国民統合の、指導力が問われます。水島朝穂さんの「平和憲法のメッセージ」に「コロナ危機における法と政治ーードイツと日本」が発表されました。メルケル首相の真剣な内容ある国民への訴えと、安倍首相の危機に向き合わない無責任でご都合主義的な対応が、対比されています。当初はBCR検査ミニマムでクラスター追跡の「日本方式」に関心を示していたフランス、イギリス、アメリカ等も、いざ自国の感染爆発が始まると、ドイツや韓国に学んだ「早期発見・早期治療」、徹底検査から感染者を見出し隔離する方式に転換しました。かつて20世紀の国民皆保険と高度医療技術で「医療大国」とさえいわれた日本は、2月のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の集団感染で世界から「失敗した実験」と疑われ、本格的パンデミック期に入っても国際比較可能な疫学調査がおこなわれず、マスクも消毒液も入手できない庶民からは、国内感染者数ばかりでなく、死亡者数さえ信頼されていません。2か月たっても、一方でPCRで診てもらえない「検査難民」、他方で庶民の生活のかかった「感染隠し」、オリンピックと生活補償のがれの政府レベルでの情報操作が語られています。

かとかと 小倉利丸さんのサイトに、シャロン・ラーナー「大手製薬会社はコロナウイルスから利益を上げる準備をしている」が、日本語で紹介されています。グローバルな医療・製薬資本のあいだで、「パンデミックが悪化すればするほど、最終的な利益は高くなる」として、熾烈なワクチン・治療薬開発競争が行われているのです。その競争への日本の参入に焦点を合わせて、この間の安倍内閣の後手後手の対応、PCR検査のサボタージュの背後の秘密に迫ったのが、前回紹介した上昌広さんの『フォーサイト』寄稿論文「帝国陸海軍の「亡霊」が支配する新型コロナ「専門家会議」に物申す」(上)(下)です。そこでは、戦時陸海軍防疫体制を担ってきた旧731部隊・東大伝研等の流れの後継で、@「国立感染症研究所」(感染研)、A「東京大学医科学研究所」(医科研)、B「国立国際医療研究センター」(医療センター)、C「東京慈恵会医科大学」(慈恵医大)出自の医学者が、厚生労働省医療官僚と共に安倍内閣「専門家会議」の主流となり、それが感染者の治療ではなく、国産ワクチン製造のためのデータ独占、医薬産業との癒着に結びついているのではないか、と問題提起されています。私はこれを、3/11原発事故時に語られた産官学「原子力村」になぞらえて、「ワクチン村」とよびたいところです。

かとかと 「ワクチン村」とは、安倍内閣の「健康・医療戦略」予算に群がる、医・薬・獣医学研究者、ウィルス研究機関、医薬産業、厚生労働省健康・医療部局、それに自衛隊衛生科を含む、利益協同体のことです。中心は、首相官邸の健康・医療戦略室、健康・医療戦略推進本部です。もともと医師・病院を監督する厚生省でも、科学技術研究を担う文部科学省でもなく、アベノミクスの「成長戦略」を推進する経済産業省主導でつくられたものです。高齢化に伴う福祉・医療経費増大を最小限にし、健康・医療システムを再編・効率化し、2013 年6月 に「日本再興戦略」の一環として「健康・医療戦略」を策定、そのもとで「医療分野の研究開発に関する総合戦略」を立案しました。「日本再興戦略」とは、本サイトで幾度か紹介してきた、デジタル化・ロボット化の第4次産業革命、人工知能AIや自動走行のSociety5.0を柱とする、グローバル経済下の国際競争に対処する成長戦略で、原発再稼働や新幹線輸出で突破口を開こうとしました。それに従属する「健康・医療戦略」とは、端的に「世界最先端の医療技術の開発」「健康・医療分野に係る産業を戦略産業として育成し、経済成長へ」です。そこに乏しい研究予算を重点的に国策として投入し、既存の高齢者対策・感染症対策は厚生労働省・国立研究機関・大学病院・医師会等に任せて、「効率化」の名で予算・要員を削減してきました。健康・医療における「選択と集中」、新自由主義とアベノミクスの戦略です。

かとかと 「日本再興戦略」を官邸で指揮したのは、経産省出身の今井尚哉首相秘書官・現補佐官です。官邸「健康・医療戦略室長」には、国土交通省出身だが今井の腹心である和泉洋人首相補佐官が就任し、後に慈恵医大から国立感染研を経て厚生労働省審議官となった大坪寛子を次長に取り立てます。ゲノム医療を推進する大坪は、内閣官房審議官として、日本医療研究開発機構AMED)・医療情報基盤担当室の室長も兼任します。詳しくは、首相官邸の「健康・医療戦略推進本部」ホームページに出ていますが、「健康・医療戦略参与会」の副座長今井絵理子と和泉洋人のスキャンダル・コンビで、2020年日本医療研究開発大賞の「健康・医療戦略担当大臣賞」は、731部隊研究では細菌戦・人体実験の後継組織として知られる、公益財団法人「実験動物中央研究所」でした。受賞理由に「1952年創設以来、 実験動物の飼育技術の確立、動物の品質 管理研究を行い、日本の実験動物学の発展に大きく寄与」とありますが、朝鮮戦争時の創設者は、731部隊大連支部長で帰国後東大伝研教授・武田薬品顧問であった安東洪次でした。私の戦医研論文に書きましたが、米軍細菌戦406部隊とも深い関係がありました。

かとかと 日本国民にとっての大いなる不幸は、中国武漢から新型コロナウィルスの第一報が入って始まって以降の日本政府の初動対応が、今井・和泉・大坪に任された首相官邸「健康・医療戦略」に沿って始まり、武漢・湖北省滞在者への「水際対策」とクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」封じ込めに特化されたことです。厚生労働省の担当する感染症対策のオーソドクスな「早期発見・早期治療」、医療機器補充・要員増よりも、日本経済停滞突破の「成長戦略」への影響が重視され、少なくとも2月6日の大坪審議官記者会見までは、大坪のAMEDとの対立和泉補佐官とのスキャンダルがあっても、厚生労働省ではなく、官邸主導で進められました。だからこそ、まだ政府の「対策本部」も「専門家会議」も立ち上がっていない段階での2月13日「緊急対応策」の目玉には「検査キット、抗ウイルス薬、ワクチン等の研究開発の促進 」が「マスク、医薬品等の迅速かつ円滑な供給体制の確保」よりも上位におかれ、特別予算も配分されたのです。和泉・大坪スキャンダルへの世論の反発で、以後二人は表舞台から消えましたが、「陰の首相」「総理の振付師」である今井補佐官は、安倍首相の信任厚い北村滋国家安全保障局長秋葉剛男外務事務次官と組んで、官邸主導のパンデミック対策の中枢にすわります。厚生労働省や国立感染症研究所中心の「専門家会議」、内閣対策本部を立ち上げ、国家の危機を逆手にとって、あくまで「成長戦略」に使おうとしています。それが「国産検査キット、抗ウイルス薬、ワクチン開発」にこだわり、「ワクチン村」の御用学者と医薬企業を登用し、反対意見の情報発信を抑えて「大本営発表」風の情報統制を強め、ついには「緊急事態宣言」で官邸に権限を集中させ、改憲を準備する背景です。

かとかと そのとばっちりが、政府の後手後手の対応と、「日本列島のクルーズ船化」です。つまり、海外からの感染隔離に資源と人員を割いている内に、国内感染が拡大し、爆発的拡大の前夜なのに、医療用マスク・防護服・人工呼吸器も、隔離病棟・集中治療室ICU・ベッド数も整わず、大人の満員電車をそのままにした思いつきの全国一斉休校に不満が強まると、いまだ入手できないマスクや消毒液の供給をそのままに、児童生徒に手作りマスク奨励の新学期開始です。何よりも、生活補償も企業補償も認めないまま「自粛」要請を繰り返し、他国に比すれば予算の使い方も最悪の「緊急対策」です。あいかわらずPCR検査「帰国者・接触者相談センター」仕分けで疫学調査が進んでいませんから、すでに爆発した欧米諸国に学んだ医療崩壊対策、医療従事者救済策も、時間的には準備できたはずなのに、きわめて不十分です。今年の安倍首相年頭会見の目玉であった東京オリンピック開催にこだわり続けて、感染者数を低めに小出しできたものが、「中止」ではなく1年「延期」となった途端に、大都市での感染者急増と緊急事態法です。しかも、記者会見嫌いの知性なき安倍首相は、今井補佐官任せの危機感なき応急手当、その夫人は「3密」満載の芸能人との花見、世界のパンデミックの海に漂う、漂流クルーズ船です。新自由主義の「成長戦略」優先と「自己責任」論が生んだ、究極の人体実験です。自衛が必要です。

かとかと 世界経済と世界恐慌の見通し、感染症の文明史と差別史、中国・韓国とのワンヘルス連帯のあり方、731部隊医学ばかりでなく100部隊獣医学をも重要な起源とする日本ウィルス学・ワクチン学の歴史など、語るべき問題は多々ありますが、長くなったので、今回はここまでに。幸か不幸か講演・研究会等も軒並み中止・延期で、自宅で綴る本連載も、しばらくは1日15日の月二回更新を復活し、長期連載になりそうです。「パンデミックの政治1.2」はカレッジ日誌に移し、「3」のみ下に残します。私の731部隊研究と並ぶパンデミック研究の原点、2009年メキシコでの新型インフルエンザ体験「パンデミックの政治学2009」、及び法政大学『大原社会問題研究所雑誌』最新3月号に寄稿した「20世紀社会主義・革命運動史を21世紀にどう描くか」 をアップ。もう忘れられていますが、2009年春のインフルエンザ・パンデミックは、麻生内閣末期で、やはり後手後手のお粗末な対応、秋の政権交代、民主党政権成立に、道を拓きました。もっとも当時の自公麻生内閣は支持率10%台、今年の安倍内閣はなお40%を維持しています。パンデミックは、世界の社会運動・市民運動にも沈黙を強いるようになっており、インターネットが、情報戦とインテリジェンスの新たな舞台ともなっています。自粛用お勧め図書として、カミュの『ペスト』で、不条理の世界を。

[パンデミックの政治3]  いよいよパンデミック、文明史的検証に耐えうる感染症対策を!

2020.3.15 かと  3月の予定が次々にキャンセルされ、今日はもともと3/11から9年目の福島にいる予定でしたが、高齢者ゆえの自宅蟄居になったので、予定外の臨時更新。3.1ビキニデー、3.8 国際女性デー、3.10東京大空襲、それに3.11震災・原発関係のイベントも、軒並み中止ないし縮小です。いうまでもなく、世界保健機構(WHO)の「パンデミック宣言」を受けてのものです。コロナウィルスCOVID-19は、世界120ヵ国以上、14万人にまで感染が広がりました。ライバル中国での感染がピークを越え、「対岸の火事」と見ていたアメリカで市中感染が増え、秋の大統領選向けにトランプ大統領が突然欧州からの入国禁止を言い出したところで、WHOの「パンデミック=世界的大流行」です。WHOのエチオピア元外相テドロス事務局長の「管理されたパンデミック」発言から、中国への配慮で宣言が遅れたという見方もありますが、私は2009年新型インフルエンザの経験から見て、欧州とアメリカでの広がりが決定的であったろうと思います。実際は、「パンデミック」を管理できたのではなく、米中両大国での広がりと動きを見て、「宣言」のタイミングが管理されたのです。

かと パンデミックは、世界経済を直撃しています。リーマンショック以来、いや1929年に匹敵する世界恐慌を招くという見方さえ出ています。アメリカでは1987年のブラックマンデー以来の株価暴落ですが、私はその時米国滞在中でした。日本はちょうどバブル景気の真っ最中で、一度は世界と同じく大幅株安を経験しましたが、すぐに戻して米国の企業や不動産・国債を買いあさり、危機脱出の牽引国ともてはやされました。それがバブル崩壊の始まりでもあったのですが。今回は、アメリカ・ウォール街の危機を救う「白馬の騎士」は、見当たりません。リーマンショックは、中国経済の成長があって何とか収まりましたが、その中国が、今回は危機の発火点でした。サウジアラビア、ロシアも関わる原油価格暴落が伴って、アメリカのシェールオイル産業が倒産の危機です。金融政策の効果はすでに限界にきており、製造業の回復には時間がかかります。ましてやアベノミクスで失敗し、消費税で景気が冷え込んだ日本は、ひとたまりもありません。非正規雇用を3分の1にして格差を拡大し、教育や医療、基礎科学への投資を削り続けたツケが、まわってきたようです。

かと そこで、各国の権力者は、何とか自国民だけは感染から隔離するという出入国管理ばかりでなく、自国経済を守るための貿易・ 金融・財政政策を優先し、強行します。そのために、時の権力者は、緊急事態を理由に自由と人権を制限し、情報を統制しようとします。前回まで、2009年の新型インフルエンザ(H1N1)流行の経験に即して、@WHOのパンデミック宣言には、国際政治のバイアスが入ること、A各国の医療保健システムと 初動体制が、感染と犠牲者の規模・広がりにとって決定的であること、B国際的にも国内でも、人種差別や経済格差が作用し、貧困国、社会的弱者・底辺層に犠牲が強いられることを、いわば「パンデミックの政治学」の公理として仮説的に析出し、今回のコロナウィルスでも、その通りになりました。本格的パンデミックはこれからですが、これまでの世界の動きからしても、Cパンデミックに際して各国は自国中心のナショナリズムを強め、閉鎖的・排外主義的政策が採られる傾向がある、D時の権力者は緊急事態として、権力を集中し情報統制に走りがちである、を仮説として追加できそうです。 ただしこれらは、戦争や大災害のような危機でも同じで、パンデミックが人類史的な文明の危機、民主主義の危機の重要な一つであることを示します。石弘之『感染症の世界史』(角川文庫)や、本サイトで1月にお勧めしたマルクス・ガブリエル、マイケル・ハート、ポール・メイソン『未来への大分岐ーー資本主義の終わりか、人間の終焉か?』(集英社新書)のスケールで、考えるべき問題です。

かと 3.11フクシマから9年目の今年に「復興オリンピック」を設定したのは、もともと「フクシマはアンダーコントロール」という安倍晋三の世界的フェイク演説を経てでした。汚染水処理も、廃炉プロセスも、何より郷里を奪われた人々の帰還が、いっこうに進んでいません。「安倍ウィルス」の情報隠蔽・操作・フェイク発信は、以後も増殖してきましたが、感染症対策を遅れさせてまで開催しようとした東京オリンピックに、赤信号が灯りました。今度は世界的大流行で、世界中からアスリートを受け入れるのですから、日本だけコントロールできても、どうにもなりません。IOCは WHOに従うとのことですが、パンデミック収束宣言が夏までに出る可能性は、まずありません。214ヵ国に広がった2009年の新型インフルでは、1年以上かかりました。日本がオリンピックのために初動検査をサボタージュし、いまなお1日6000人分のPCR検査能力しかなく、しかも実際の検査は1000人程度で、感染の実態を把捉し得ていないというのは、いまや世界の常識です。トランプ大統領は、武器を買ってくれる安倍首相へのリップサービスはありましたが、実際の感染対策は、早期の幅広い検査、ドライブスルーまで含む素早い韓国方式です。ただし、検査も受けられない無保険者が社会の下層に沈殿して、隙だらけですが。日本では、医療用マスクばかりでなく、防護服も消毒液も準備できなかった厚生省=感染研「専門家会議」の右往左往、官邸主導の医療保健戦略のお粗末が、次々に明らかになっています。 1940年の「幻の東京オリンピック」については、昨年の講演記録の一つが活字になりましたので、アップロードしておきます。1940年の東京オリンピックは、「紀元2600年建国祭」を盛り上げるための行事の一つ、日中戦争泥沼化により「返上」を余儀なくされました。一緒に計画された東京万博は「延期」でした。2020年は、オリンピック憲章により開会宣言をするはずの「国家元首」新天皇と共に、どうなるのでしょうか。後生の人類のために、これらの記録は、厳密に残され、公開されるべきです。


2020.3.12 かと 臨時ですが、歴史学者の今井清一・横浜市大名誉教授の訃報が入りましたので、緊急更新。私にとっては、日本近現代政治史研究の尊敬すべき大先達であるばかりでなく、私の一橋大学での大先輩・故藤原彰教授の親友で『昭和史』共著者、1980年代から親しくしていただき、つい先日も新著『関東大震災と中国人虐殺事件』(朔北社)を送って頂いたばかりでした。今井さんは、この遺著でも、史資料の扱い、隠蔽・改竄に厳しく、新資料で自説を補強し厳密にしていく学問の姿勢に、大いに励まされました。御礼を書きかけたところで、突然の訃報です。享年96歳、心からご冥福をお祈りいたします。今井さんはまた、私の長く探求するゾルゲ事件被告・尾崎秀実の娘婿でもあり、『新編 愛情はふる星のごとく』 (岩波現代文庫)の編者、私の研究の要所要所での助言者でもありました。この点でもまだお聞きしたいところがあったのに、永遠に不可能になりました。かえすがえすも残念です。安らかに、お眠り下さい。

かと ついにWHOのパンデミック宣言なので、「パンデミックの政治学」補論。COVID-19のヨーロッパ・アメリカ合衆国への広がり、日本の「安倍ウィルス」の暴走による学校ばかりでなく社会活動全体の萎縮・閉塞、 株価2万円割と円高1ドル=100円の攻防、そして「緊急事態宣言」を可能にする危機便乗型新立法。ファシスト安倍は、ウィルスを「敵」と名付けてはばからず、感染症に対する「国家総動員体制」を作ろうとしていますが、初動の失敗と検査能力・医療態勢貧困で、世界的パンデミックには無力でしょう。その安倍型「戦時体制」を支える「専門家会議」が、どうも胡散臭いと、戦時関東軍防疫給水部(731部隊)、軍馬防疫廠(100部隊)から戦後の伝研・予研分離、予研から感染研への歴史を振り返っていたところに、強力な、ホンモノの医学専門家の勇気ある発言です。テレビでも国会でも「なぜ検査を早期に広く実施しないのか」と、患者に寄り添った鋭い論陣を張っている医療ガバナンス研究所理事長・上昌広さんの、「帝国陸海軍の「亡霊」が支配する新型コロナ「専門家会議」に物申す」(上)(下)という論文で、私が731部隊との関係で述べようとしていた問題が、ほとんど入っています。

かと 上博士の論文は、新潮社の有料会員サイト「フォーサイト」への寄稿なので、詳しくは紹介できませんが、簡単には『サンデー毎日』最新号にも出ています。安倍首相官邸と厚生労働省が信頼する「国立感染症研究所」のPCR検査独占、民間医療機関・検査機関を軽視し忌諱する根拠を、歴史的に読み解く立派な研究論文です。上医師は、「専門家会議」メンバーの出自を、@「国立感染症研究所」(感染研)、A「東京大学医科学研究所」(医科研)、B「国立国際医療研究センター」(医療センター)、そしてC「東京慈恵会医科大学」(慈恵医大)と類型化し、それぞれの機関が帝国陸軍・海軍の戦時医療=731部隊体制と関わってきた歴史をひもとき、「今回の専門家会議のメンバーは、帝国陸海軍と関わりが深い組織の関係者で占められている」事実を析出します。特に@感染研とワクチン製剤企業、C慈恵医大と海軍のつながりは、東大・京大医学部出身者を中心に追いかけてきた731部隊研究にも、新鮮な示唆でヒントになります。

[パンデミックの政治2]  検査なくして対策なし:安倍ウィルスで広がった感染症パニック

2020.3.1 かと 新型コロナウィルス(COVID-19)という「妖怪」が、世界を席巻しています。2月に始めた私の「パンデミックの政治学」は、長期連載になりそうです。前回、2009年の新型インフルエンザ(H1N1)流行の経験に即して、@WHOのパンデミック宣言には、国際政治のバイアスが入ること、A各国の医療保健システムと 初動体制が、感染と犠牲者の規模・広がりにとって決定的であること、B国際的にも国内でも、人種差別や経済格差が作用し、貧困国、社会的弱者・底辺層に犠牲が強いられること、を述べました。2月の世界と日本の動きは、不幸にも、事態は10年前の繰り返しになっているようです。特にこの国は、安倍ファシスト政権の隠蔽・ごまかし・言い逃れ体質が、新型感染症対策にまで色濃く反映し、世界的にみても後進的な無策で、いのちとくらしの危機を深刻化しています。もはや「武漢ウィルス」ではありません。「安倍ウィルス」の蔓延です。

かと @世界保健機構(WHO)は、2月末現在まだ「パンデミックへの備え」「リスクが非常に高い」段階で、「パンデミック宣言」を出していませんが、米国疾病予防センター(CDC)が「パンデミックの瀬戸際」といいだし、カリフォルニアで経路不明の感染者=「市中感染」が現れ、トランプ大統領も緊急記者会見で「2、3の国の入国禁止」にまで言及しましたから、3月早々には、世界はパンデミック状態とされるでしょう。なにしろ「世界の工場」中国での生産がストップし、ウォール街の株価が暴落して、世界経済はリーマン・ショック以来の危機です。2009年当時も、当初は「貿易・渡航制限は不要」といっていたWHOが、「パンデミック宣言」を出したのは、アメリカ国内で死者が出た直後でした。

かと Aの各国別対応で、日本は、感染症対策の後進国であることを、世界に露わにしてしまいました。当初の武漢在住日本人チャーター機脱出作戦、すでに沖縄で入国審査・検疫を受けたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」号乗員・乗客の船内隔離・感染検査のお粗末、なによりも、率先して動くべき政府と厚労省の初動対策の甘さ、そこで露呈した国立感染研と「安倍トモ」官僚の無能。あの和泉洋人「健康・医療戦略」担当首相補佐官と大坪寛子厚労省官房審議官コンビが主導した「湖北省しばり」の水際作戦失敗と、なぜか慈恵会医科大や国際医療福祉大関係者が多い政府系「専門家」の「やってる」プロパガンダ。慈恵医大は大坪の出身校、国際医療福祉大は、あの加計学園と同じく、和泉補佐官担当の「国家戦略特区」でできた天下り大学です。無論、一握りの「御用学者」のみが使われて、一般教員や学生にとっては迷惑なことですが。「桜を見る会」や検察官「定年延長」問題と同じ事実隠しは、対策を後手後手にして、いまだに確かな感染状況がつかめないPCR検査の遅れ、「検査難民」問題に、典型的に現れています。当初は見下していた中国や韓国の毎日1万人以上のウィルス検査態勢に比べ、日本の「パンデミック」準備態勢の遅れは、際立っています。

かと 何故、こんなことになったのでしょうか。「安倍ウィルス」のしわざです。安倍晋三は、中国・武漢から始まった新型ウィルス感染を、「対岸の火事」とみなしていました。それも春節という日本の正月に当たる中国人大移動による拡散で、中国政府の「武漢封鎖・隔離」も共産党独裁ならでの人権無視で攻撃材料と見なしていた形跡があります。日本のメディアの多くも、もちろん反中ネトウヨも、「野蛮な国」中国ならではの問題にしていました。日本の初動は、武漢・湖北省の自国民保護と豪華クルーズ船の各国セレブ客の隔離のみでやりすごそうとしました。安倍首相の危機感は、桜や検察問題での国会野党対応にあり、官邸・厚労省の保健官僚任せでした。

かと 不幸なことに、日本の保健・医療体制は、福祉予算削減の改革期にありました。高齢者医療の負担増、診療報酬体系・薬価の見直しはもとより、基準病床数制度による病院の空きベッド数削減や感染研等研究予算・人員のスリム化が、課題とされていました。その基礎デザインを担当し、京大山中教授のiPS細胞研究予算削減強要まで進めていた「安倍トモ」和泉・大坪コンビが、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」対策の初動で、ミスしました。大坪が、「文春砲」の批判をかわし「名誉回復」するためか、2月6日に厚労省を代表して記者会見し、まともに船室隔離・高齢者診療もできず、乗員の検査をあとまわしにした船内感染者増加と、PCR検査の「湖北省しばり」の正当性を説明していたのです。その後の無残な船内感染の増大、検疫官・医師や厚生省職員を含む感染拡大、陰性と判定された乗客の公共交通機関で帰宅後の陽性者続出、日本の対策を信頼できないアメリカ他各国のチャーター機による自国民の日本からの救出と自国内隔離・陽性者発見、そしてすでに、イギリス人を含む6人以上の「人災」犠牲者を出しています。「安倍ウィルス」の人災です。

かと  忘れてならないのは、本来は真っ先にPCR検査を受けて、陰性の健常者のみで乗客サービスにあたるべきだったフィリピン、インド、インドネシア等の国籍が多い乗員の検査が、後回しにされたことです。日本の国内メディアでは、なぜかほとんど触れられなくなりましたが、538人(乗客7人・乗員531人)のフィリピン人のうち、陰性で帰国を希望した445人がクルーズ船を離れチャーター機にのれたのは、ようやく2月25日で、59人は感染が確認され、日本の病院に残されました。他の数十人はまだ船内です。重症者もいるでしょう。隔離された帰国者からも、アメリカ42人やオーストラリア・香港8人等と同様に、再検査で陽性者がでてくるでしょう。日本の感染症医学・検査体制の不備を、世界に晒しました。Aの各国別感染対策の違いと共に、B感染者・犠牲者の差別的扱いに、世界的格差構造が映し出されました。初動期にWHOも述べていたように、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」号は、中国武漢市と共に「パンデミックの政治学」の世界的素材でした。そこで中国政府よりもさらに劣悪な、日本政府の水際対策の不備が白日の下に示され、世界に不安を拡散したのです。

かと 中国革命を導いた毛沢東に、「調査なくして発言権なし」という有名な言葉があります。1930年の言葉ですが、それは毛沢東の農民層分析等にも表現され、「科学的」政策の前提とされます。ウィルス対策で言えば、「検査なくして対策なし」でしょう。グローバル化とIT化が世界を覆い尽くした現代では、パンデミックのような国境を越えた危機にあたって、正確な情報データとその世界への発信が、対策の信頼性を担保する決定的意味を持ちます。中国は、初動で正しい事実と警鐘をSNSで発した医師の情報を言論弾圧したため、初動の遅れと1100万大都市武漢の封鎖を余儀なくされましたが、その後は、感染拡大・感染死の数を毎日公表し、それを分析した医学論文、病棟増設、全国の医療資源の集中的投与、感染防止規制、新薬開発などで、世界第2の経済大国の力を発揮しました。隣国韓国は、感染者数で中国に次ぎますが、いったん新興宗教団体の礼拝から集団感染が察知された後の文大統領の決断・対策は、日本とは対照的でした。連日1万人に及ぶPCR検査(ドライブスルー検査!)を国を挙げて実行し、感染者に対する生活保障・企業支援も手厚いものです。シンガポールやイタリアも同様です。

かと 感染はすでに、5大陸55か国以上に広がっています。中国・韓国・シンガポール等と比べると、日本とイランの感染調査と対策、投入予算・人員のお粗末が、際立っています。日本の感染者数が少なく見えるのは、当初WHOにクルーズ船感染数の別枠化を求めたような見かけ上の過少申告、4月の習近平国賓招待、7月からの東京オリンピック強行のために数字を小さくしたい思惑が有り、そのために、PCR検査そのものをサボタージュしたものでしょう。2月25日の日本政府の「感染症対策の基本方針」は、初動対策ミスの反省もなく、PCR検査についてはむしろ対象者を狭めかねない、「検査難民」倍増の愚策でした。安倍内閣の支持率も大きく下がり、加藤厚労大臣の官僚的対応は、国内外で信用を失っていました。それは、厚労省が「専門家」として頼ってきた国立感染症研究所の規模と予算・人員の貧困ばかりではなく、もともと感染研の前身である予防衛生研究所(予研)が、東京大学伝染病研究所(伝研、現在は医科学研究所)から分離・創設される際に、GHQサムス准将に取り入った関東軍防疫給水部=731部隊医学者・医師を幹部とし継承してきた歴史と関わっていると、詳しく書くつもりでしたが、また局面が代わりました。

かと 2月26日・27日に、安倍首相がなぜか「反転攻勢」に出て、スポーツ・文化イベントに「自粛」を求め、全国の小中高等学校を休校にし春休みに入る、と暴走しだしたので、感染研にまつわる歴史的分析は、次回以降にまわすことにしました。対策本部も専門家会議も後手後手で、記者会見もなかった安倍晋三が、急に危機感を示しました。この「暴走」は、すでに国内外で信用を失った「専門家会議」「基本方針」が不評で、「ごく少数の側近」にのみ相談して「安倍トモ」荻生田文科相を呼びつけ、与党幹部や他の閣僚にも知らせず、「首相のリーダーシップ」を初めて発揮したもののようです。「側近」に1月まで入っていた和泉首相補佐官は、大坪スキャンダルで消えたようです。時事通信「首相動静」の2月の面会者を見ると、「安倍ウィルス」の増殖メカニズムが見えてきます。首相の財界・芸能人・メディア人脈とのグルメや宴席の多さ、「不要不急」の「安倍トモ」とのふぐ三昧、稲田朋美誕生会等は相変わらずですが、ほとんど毎日会っている「側近」は、菅官房長官でも加藤厚労大臣でもなく、北村滋国家安全保障局長、今井尚哉首相補佐官、秋葉剛男外務事務次官の三人です。朝日新聞2月29日付けによると「全国一斉休校の独断専行」は、今井首相補佐官のアイディアのようです。この三人組、今後も要注意です。

かと 突然の「暴走」「独断専行」には、安倍晋三なりの危機感があります。世論調査の支持率低下や北海道知事の「英断」高評価もありますが、そればかりではないでしょう。衆院予算審議を乗り切り新年度予算を確実にした安堵でもないでしょう。底流は、消費税上げによる経済の停滞(アベノミクスの失敗)、それを補うはずの習近平国賓招待と夏のオリンピック遂行であったでしょう。しかし北村・秋葉ら「側近」から入る海外の評判・動きは、芳しくありません。日本のクルーズ船対応は、中国の武漢封鎖なみの注目度で、失政とされました。WHOのパンデミック宣言は不可避で、時間の問題です。アメリカCDCの渡航危険レベル3になると、日本は「2、3の国」=中国・韓国と共に出入国規制の対象になりそうです。日本企業への打撃はもとより、秋の大統領選挙向けパフォーマンスが主眼の「親分」トランプ大統領の気まぐれ次第では、安倍は切り捨てられる可能性も出てきます。2月29日夕の安倍首相の初めての記者会見は、「休校」を「休業」という国民向けのパフォーマンスで、質疑も途中で打ち切り、具体策は官僚・現場任せでした。米国向けには、いっそう入国禁止規制を必要とする材料となったでしょう。

かと 東京オリンピック開催は国際オリンピック委員会(IOC)の権限で、その有力委員が、5月までに感染がおさまらなければ中止もありうる、と言い出しました。「1940年幻の東京オリンピック」の悪夢再来です。これらに株価暴落が重なってのギャンブルが、安倍晋三の「緊急事態宣言=全国小中高等学校一斉休校指令」です。しかしこの「唐突」な政策転換には、各官庁も都道府県・市町村も、医療現場も子を持つ親の職場も、大混乱でついていけません。「安倍ウィルス」で汚染された混沌=カオスです。たとえ学校休校はなんとかなっても、満員電車も観光地不況もそのままで、3月でおさまることはないでしょう。なにしろ世界不況に入った経済界には、「在宅勤務」「時差出勤」のススメと「有給休暇を認めてほしい」と懇願するレベルのものですから。しわよせは非正規労働者や子を持つ女性労働者に集中します。マスク不足は深刻な事実ですが、トイレットペーパー買い占めという、かつて石油危機時にみられたパニックまで起きています。いのちとくらしのかかった情報戦は、続いています。

かと 「パンデミックの政治」の行方は、遅ればせのPCR保険適用で、ようやく肝心のデータの本格的収集がはじまりそうな局面ですから、まだまだ予断を許しません。[2020年3月のおすすめ]として、関東軍防疫給水部(731部隊)とならぶ軍馬防疫廠(長春100部隊)の細菌戦を追った小河孝『満州における軍馬の鼻疽と関東軍ーー奉天獣疫研究所・馬疫研究処・100部隊』(文理閣)をご紹介します。軍馬が兵士よりも重宝され、動物実験から生体実験まで実行された日中戦争期の獣医学を、安達誠太郎や三友一男の体験記を批判的素材に、専門家(日本獣医生命科学大学教授)らしい抑えた筆致で隠された実態を読み解きます。私の関心は、その延長上での日本獣医学の戦争責任回避と加計学園に至る今日の問題ですが、実は動物起源の新型ウィルスや、感染研のBSLレベル4施設の問題にも大きく関わります。新型ウィルスは中国「武漢国家生物安全実験室」発の生物兵器だという陰謀論も盛んですから、まずは動物感染の基礎知識を得るためにも、どうぞ。2月の「パンデミックの政治 1」も、下に残しておきます。

 

パンデミックの政治とワンヘルス

 

かと 現代は危険社会です。多くは産業革命以来の人間の傲慢が、動植物や自然生態系とのバランスをくずし、地球的規模での危機管理を求めています。核戦争や気候変動が典型的ですが、新型ウィルスなど感染症もその一つです。世界保健機構(WHO)は、新型コロナウィルスの感染による肺炎の広がりを「緊急事態」と宣言しました。1月に中国の1100万大都市武漢市で見つかり、中国の旧正月春節の大移動で、中国全土に広がりました。ヒトとヒトの感染、潜伏期間中の感染、無症状感染も分かってきて、世界で20ヵ国以上、1万人に感染、死者も200人を越えました。受験シーズンの日本にも、武漢滞在者・旅行者から持ち込まれて、国内での二次・三次感染も疑われ、空港での水際検疫・封じ込め作戦は崩壊寸前です。予断は許しませんが、世界的大流行(パンデミック)にまで広がり、長期化する可能性があります。

かと 今回の感染症は、2002-03年のSARS(重症急性呼吸器症候群)の流行と比較されています。いずれも中国発だからです。SARSは2002年11 月に中国広東省で見つかりましたが、中国政府はその症例・感染を隠蔽して初動対策が遅れ、本格的には2003年2月にWHOに報告されてから、世界的問題になりました。世界30ヵ国に広がり、8422人が感染、916人が死亡とされています。WHOが終息宣言を出したのは、2003年7月、発症から8か月かかりました。今回は、中国政府は数週間で対応し、武漢市の交通封鎖など思い切った封じ込め対策を実行しています。もちろん初動の感染源の特定と地方政府の混乱もあり、現地の感染者・住民の苦難、それに医師や看護師の苦労は大変なものです。感染規模は、すでにSARSを上回っています。武漢市以外の感染者が急激に増えていますから、世界的な問題です。

かと 私は、今回の新型肺炎の問題を、2003年のSARS流行よりも、2009年のメキシコに発した新型インフルエンザ(H1N1、豚インフル)の流行と比較したいと思います。一つは、SARSの段階と比べ、中国の国際社会の中での意味が、リーマンショック後に飛躍的に大きくなっており、したがって、飛行機や鉄道・バスの交通、ビジネス・観光客を含む人的交流が、新しい段階に入っているからです。アメリカもヨーロッパも日本・韓国・東南アジアも、金融・物流・情報と共に、巨大市場でもある中国の人々とのつながりが不可避になっています。もう一つは、2009年4月12日にメキシコで見つかり、4月24日にはWHOの緊急事態宣言が出され、6月にWHOパンデミック宣言を出したケースと、現局面が似ているからです。214の国・地域で爆発的に流行し、2011年まで患者推計200万人・死者1万8097人に及びました。日本でも、当初はメキシコ帰国者封じ込め・検疫がありましたが、5月には関西の高校生から国内ヒトーヒト感染がわかり、文字通りの大流行で、200人以上が亡くなりました。 

かと 実は私自身、2009年は3月から5月までメキシコに滞在し、外務省・日本大使館の勧告で、客員講義途中で緊急帰国しました。空港で厳しい検疫を受け、以後10日間は、保健所監視付の自宅待機を体験しました。以後も、政治学者として、パンデミックを注視してきました。その詳しい経緯は、本トップで書き続けて、「2009年のリビングルーム」に収録しました。後に本サイト「メキシコ便り」中に「パンデミックの政治学」と名付けて時系列でまとめ、英語スペイン語の論文も公表しています。それを読み直すと、ようやく空港での検疫から解放され、立派なマスクや、水銀式ではなく電子式の体温計を手に入れ、毎日検温していたのに、成田空港から厚生労働省・東京都経由、地元保健所へ連絡が入ったのは、帰国後4日間もかかっていました。保健所の電話検診もおざなりで、検温記録は心覚えに終わったいまいましい記憶など、時の麻生内閣の初動段階の不手際を想い出します。その詳細は「メキシコ便り」の2009年分を見て貰うことにして、ここでは、当時の参与観察から導き、2020年の世界と日本を考えるために役立つであろう、三つほどの教訓を記しておきます。

かと 「パンデミックの政治」の第一は、国際機関WHOの役割と意味です。WHOの「緊急事態宣言」が世界に警鐘を鳴らし、フェーズが上がる毎に人々の衛生・安全意識を高めることは事実です。しかし、医学・医療専門家の国際提携はともかく、それは、世界の政治経済を動かすものではなく、むしろ国際関係によって動かされるものです。今回も「人の移動や貿易を制限するものではない」とわざわざ断っていますが、これは、世界政治経済における中国の役割、米中関係を考えてのものでしょう。2009年の場合も、米国とメキシコの自由市場協定(NAFTA) から、なかなか「緊急事態宣言」にいたらず、アメリカ人感染者から死者が出たためにようやくWHOが動いた、とメキシコではささやかれたものです。

かと 第二は、ワクチンや特効薬がなく、流行地の住居や食糧、衛生環境が異なるもとでは、各国の政府と医療保健システムが、検疫・治療・防疫に決定的であり、感染・流行の程度を決めることです。先進国の場合は、自国人保護の特別機をチャーターしたり、高度な医療・防疫チームを組織することが相対的に容易ですが、それでも初動の対策は後手後手であることがほとんどで、容易に終熄しません。経済的・軍事的国力が弱い国ほど、多くの感染者・死亡者を出す傾向があります。2009年の新型インフルは、実は、メキシコでもアメリカ資本の養豚場が発生源とされ、ウィルスはアメリカから持ち込まれた可能性大ですが、アメリカはその風評被害を嫌って、当時「豚インフルエンザ(swine flu)」と言われていたものを、わざわざ「新型インフルエンザ」と呼称まで変えました。もっともそれに従ったのは、メキシコと日本だけなどとも言われました。今回安倍内閣は、邦人保護の緊急時政府専用機として、かつて日本軍が侵略した武漢まで、中国では軍用機扱いになる航空自衛隊を使おうとしたようです。

かと 第三に、パンデミックは、世界的にも国内でも、貧困と格差の問題をくっきりと映し出します。2009年のメキシコでは、現地の白人、混血メスティーソ、原住民インディオのあいだで、感染率・死亡率が大きく異なったといいます。白人は早々とアメリカやスペインに逃げるか、豪邸に閉じこもり、マスクも買えない都市貧民インディオが、最大の犠牲者でした。今回は春節の武漢で、1100万人中500万人は爆発的感染前に北京や外国に抜けだしたといいます。どんな階層の人々でしょうか。規模が大きくなると、弱者への被害偏在が現れます。

かと もっとも、世界最大の観光支出国となった中国上層・中間層の人々が、欧米や日本へのウィルス運搬人になった可能性大です。パンデミックまで広がるかどうか、8か月や1年で終息するかどうかはわかりませんが、感染症リスクも、格差社会を映し出します。情報戦では、すでに反中ヘイトや差別言説がとびかっています。人間のいのちが、不平等に扱われているのです。 緊急事態名目での権力集中・人権制限は、パンデミック時の各国共通の特徴で、クローバル薬品ビジネスの便乗参入や、緊急事態対処の憲法改正までいいだす徒党も現れます。いのちより党利党略、私利私欲の輩たちが暗躍します。

かと こんな時に、「ワンヘルスOne Health」という言葉があります。「ヒトの健康を守るため動物や環境にも目を配って取り組もうという考え方です。人も動物も環境も同じように健康であることが大切だというわけです。公害や気候温暖化を思い起こせばわかりやすい」と説明されていますが、地球は一つという「ワンワールド」や、この国で流行る「ワンチーム」よりは、やや広く深いものです。すべてのいのちは、ヒトも動物も植物も、生態系のなかでつながり合っているという考え方です。東京大学の学術俯瞰講義の題目になり、厚生労働省もかかげています。ですが、気候変動の問題と同じです。スローガンよりも、いのちを守り救う実践が求められます。米国・イラン戦争の危機、イスラエル・パレスチナ問題、米国大統領予備選開始、イギリスのEU離脱、国内では桜を見る会、IRカジノ疑獄等国会審議が続きますが、「ワンヘルス」の時代に一番重要なのは、正確な事実と情報の公開です。3月まで新型肺炎が世界で広がっているようであれば、2020年は、本格的な「パンデミックの政治学」の出番となります。

かと [2020年2月のおすすめ] 名越健郎秘密資金の戦後政党史ーー米露公文書に刻まれた「依存」の系譜』(新潮選書)は、戦後日本政治の深層に斬り込んだ力作です。自由民主党の創設時から始まる米国の反共工作資金供与、CIAの暗躍、日本共産党・日本社会党にルーマニア経由等で送られたソ連の秘密資金とKGBの役割ーー時事通信ワシントン支局長・モスクワ支局長から拓殖大学教授になった著者は、噂や憶測にもとづく類書とは違って、米国国立公文書館文書、旧ソ連秘密文書の資料ナンバーまで付して、東西冷戦時代の日本の政党政治が、米ソ代理戦争・情報戦でもあったことを説きます。インテリジェンスに関心のある方は、必読。you tube も1本。新聞・テレビではほとんど報じられないフランスの年金改革反対デモ。日本では、なぜ怒らないのか?

世界の真ん中で萎縮しファッショ化する日本!

    2020.1.1 かと  昨年末に予告したように、2020年から月1回、1日の更新です。といっても、正月だからめでたい話とはなりません。すでに数年前から、安倍晋三内閣を「忍び寄るファシズム」「ファシズムの初期症候」と述べてきた本サイトとしては、憂鬱な新年です。なにしろ「天皇陛下万歳」がテレビで繰り返し放映され、公共美術展の芸術作品が「御真影」を侮辱したと批判されて展示が中止されました。公金私消の権力私物化が国会で十分解明できず、その糸口になるはずの公文書の隠匿・改竄は、ついにシュレッダーで裁断されてなかったことにされるところまで進んだのですから。とても「おめでとう」を語る気分になれません。国際社会での地位はどんどん下落し、女性の政治参加では発展途上国以下なのに、この国の独裁者は「日本が世界の真ん中で輝いた年になった」という年末回顧、恐るべき自己愛(ナルシシズム)です。実際は、トランプの米国以外四面楚歌、萎縮する日本です。

    かと もっとも「忍び寄るファシズム」は、日本だけの話ではありません。国際協調の崩れ、自国中心主義、移民・難民・外国人労働者の排斥は、いたるところで見られます。かつて冷戦崩壊時に夢見られた、グローバリズムによる越境の容易さと世界の平準化は、インターネットによるコミュニケーションの広域化に促されて世界平和へ進むかに見えましたが、実際には地球規模での多国籍企業による自然破壊と格差拡大、国民国家の再編と新たな国境の壁の構築でした。左右の全体主義と権威主義体制が終わって、「退屈な」自由と民主主義が広がるという「歴史の終焉」論もありましたが、宗教の違いや人種・民族問題が至る所で吹き出し、新たな対立と紛争、抑圧と抵抗、暴力と追放、そして戦争が日常化してきました。そして、それを統括する大国の指導者たちは、アメリカン・ファーストの大統領、EUから脱退するイギリス首相、強権的な中国とロシアのトップ、彼らの権力と統治技術に比べると、沈み行く日本の安倍晋三は、いかにも小物の貧弱な国家主義者にみえます。

    かと かつて戦後西欧で、雇用と所得再分配を保障するケインズ主義的福祉国家は財政破綻をもたらしたとして「イギリス病」や「スウェーデン病」が叫ばれ、「小さくて強い政府」を掲げる英国サッチャー首相が登場したのが1979年、当時は、「鉄の女」の反共ポピュリズムと言われました。それが米国レーガン、西独コール、日本中曽根と広がったのが、1980年代でした。それから40年、新自由主義は、ソ連・東欧社会主義が自壊し、EUやアジアにも広がって、グローバリズムを牽引しました。同時に市場的自由競争、投機的マネーゲーム、私的自己責任の論理が世界に流され、中国やインドが国際社会のアクターとして台頭しました。科学技術の成果はグローバル企業の利益独占と核軍拡から宇宙へと広がった戦争準備につぎ込まれ、学術研究の世界もグローバルな人材確保競争と国家の産軍学協同推進の波に呑み込まれました。第二次次世界大戦後30年で西側に構築されたシステムが、その後の40年で新自由主義に再編されましたが、どうやらそのシステムも制度疲労が進み、内部矛盾が周辺部から吹き出しています。

    かと 大国の市場と金融支配の競争の中で、東南アジアで、中東で、アフリカで、ラテンアメリカで、とりわけアメリカと中国の覇権競争に小国や地域が巻き込まれ、膨大な移民や難民が彷徨い、それがEU諸国や、新自由主義下でも福祉国家を保持した北欧諸国にまで流れ込みました。もともと移民国家として生まれた北米や豪州でも、既得権を奪われかねない下層の階級・階層からも、高い壁を作れという声があがります。40年前とは方向の違う、ナショナリズムと排外主義を動員したポピュリズムが新たな支配者を産み、ネオ・ナチ政党や極右政党が議会でも勢力を伸ばします。かつてのムッソリーニ、ヒトラー、東条=昭和天皇とは異なる形での、権力分立や選挙・議会を残してのファシズム化です。21世紀新自由主義下の独裁は、国軍の権威や直接的暴力を担保にしながらも、経済界の支持調達とメディア支配、プロパガンダと情報戦による対抗文化の周辺化・抹殺を特徴とするようです。もっともそれぞれの国情に応じて、一度は悲劇として、二度目は喜劇としての運命に終わらせる余地は、グローバル化をくぐった社会運動のネットワークと、インターネットの民衆メディアがある限りにおいて、残されていますが。

    かと 日本が悲劇の国になるか、喜劇の国になるかは、2020年代の選択にかかります。1980年代に新自由主義の波に乗ったが、バブル崩壊と失われた30年で米中対立の狭間に沈没しつつある国が、国際社会の中で名誉を回復する道は、大きく二つあります。一つは、広島・長崎を経験した国として、核兵器の廃絶・違法化の先頭に立つこと、いま一つ、東日本大震災・福島原発事故の被災国として、度重なる地震・台風・風水害を過去も現在も幾度も繰り返してきた国として、地球的規模での温暖化・気候変動への対策、エネルギー転換、そのための科学技術転換、教育・学術研究への投資を率先して進めることです。その方向転換への障害となる、軍備拡張の対米従属や東アジア諸国への敵対とヘイトを改め、国内での格差と低賃金、女性・外国人労働者や沖縄への差別をなくしていくことです。初期ファシズム政権となった安倍晋三内閣は、当面の最大の国民的障害です。

    かと トップページの月一回更新にあわせて、「ネチズンカレッジ」全体のカリキュラムを、組み替えました。一橋大学・早稲田大学での40年近い教職を勤め上げたのを機に、これまでの4年制大学・学士論文向けカリキュラムから、大学院修士課程・博士課程を想定した新総合カリキュラムで、専修コース、主題別分類を採りました。まだ参考文献、pptパワポ原稿 やyou tube 映像の追加等はこれからの暫定版ですが、おいおい進めていきます。なお、これまで「情報処理センター」として皆様にご愛顧頂いたリンクページは、グーグルやウィキペディアの精緻化、スマホ検索の普及を踏まえてトップページからは廃止し、情報学研究室に歴史的資料としてのみ、残しました。イマジンカレッジ日誌と共に、いわば本カレッジの公文書です。その代わりに、「今月のお勧め」として、個人的に参考になった書物・論文やTV番組、you tube映像等を、図書館書評ページや学術論文データベ ースとは別に、取り上げて紹介していきます。

    かと [2020年1月のおすすめ] まずは本サイト・学術論文データベ ースの常連、神戸の弁護士深草徹さんの最近の寄稿「最近の日韓関係の危機の顛末と原因をつまびらかにし、その修復の道を論ずる」が加筆されて、市販の単行本になりました。『戦後最悪の日韓関係』というタイトルで、かもがわ出版から1月に刊行されます。世界の動きを、改めて人類史的に見るために、マルクス・ガブリエル、マイケル・ハート、ポール・メイソン『未来への大分岐ーー資本主義の終わりか、人間の終焉か?』(集英社新書)、編者・斎藤公平さんの発言を含め、考えるヒントが満載です。この間進めている、日本の科学技術と今日の大学・学問を考えるために読んでいる、谷川 建司、須藤 遙子『対米従属の起源 「1959年米機密文書」を読む』(大月書店)と志垣民郎『内閣調査室秘録ーー戦後思想を動かした男』(文春新書)、共に2019年の刊行ですが、前者は米国 USIS(広報文化交流局)の1950年代日本文化工作、後者は内閣調査室の1960年代日本知識人・学界工作を、実名入り第一次資料で明らかにする重要文献です。you tube を二本、共に今、香港民主化運動のなかで歌われている、「香港に栄光あれ」と「世情」ーー後者はもともと、日本の中島みゆきの名曲でシュプレヒコールが出てきます。

    かと 2020年も、新装「ネチズンカレッジ」をよろしく。


 

中曽根康弘は没して、新自由主義日本を残した!

2019.12.1 かと元首相・中曽根康弘が亡くなりました。享年101歳、大往生でした。<功成り名遂げた>政治家の死に、マスコミは「強力なリーダーシップ」「世界の指導者と渡り合った」「ロン・ヤス関係で強固な日米同盟」「風見鶏は現実主義者の愛称」、果ては「彼こそ平和主義者だった」と惜別の辞。20世紀の政治経済を長く見てきたものとしては、大いなる違和感です。中曽根康弘は、1980年代に、日本の政治経済の基本構造を大きく変えました。一言で言えば、日本における新自由主義政策の導入であり、一時はバブル経済で「ジャパン・アズ・ナンバーワン」などと浮かれましたが、90年代以降の「失われた30年」、今日の悲惨な日本衰退・頽廃への舵取り役となりました。もともとイギリスのサッチャー首相が始めた新自由主義を、アメリカのレーガン大統領、西ドイツのコール首相とともに、世界的な新自由主義グローバライゼーションへと牽引しました。「小さな政府」を掲げた臨調行革、国鉄・電電民営化は、その重要な一環でした。世界的に見れば、第二次世界大戦後のケインズ主義的福祉国家から、今日の市場礼賛・拝跪の新自由主義国家への、転換点に位置する政治家でした。

かと 中曽根康弘は、もともと戦時の内務省官僚でした。戦後は「青年将校」として保守政党を渡り歩き、日本国憲法改正・自主憲法制定の志向(憲法改正の歌!)を、米国の政治家たちにも隠さず、それを「戦後政治の総決算」と称しました。それは、一方で日本の国力の再建をめざし、天皇制に執着して靖国神社に公式参拝したり、防衛費の対GNP1%枠突破など、自衛隊の増強と国家主義教育を推進しました。他方で日本を「不沈空母」にすると公言したのは、西側同盟の一翼として米軍と「核の傘」に従い、経済政策も米国との調整で「一等国」になりあがろうとする、対米追随ナショナリズムでした。強烈な反共意識を持ち、国鉄民営化で総評型労働運動を衰弱させ、「プラザ合意」のようなドル基軸の国際協調には積極的に応じました。その西側資本主義全体の新自由主義再編圧力が、ソ連東欧の現存社会主義崩壊と「自由市場」参入の背景となり、欧州の「短い20世紀」の終焉を見届けました。渡辺恒雄・読売新聞主筆と組んだ露骨なメディア利用、自分に近い学者・文化人を呼んでの審議会政治でも、名を馳せました。今日のメディア翼賛化の先駆けです。

かと その国家主義と新自由主義の接点で、中曽根康弘は日本の核・原子力政策を主導し、牽引し、遂には福島原発事故の遠因を作りました。米国訪問で原子力の威力を知り、キッシンジャーの講義で権力均衡論と核抑止論を学んだ中曽根は、1954年3月、第五福竜丸ビキニ水爆被爆とほぼ同時に、「原子力の平和利用」の名目で、学界の反対を押し切り原子力予算を通過させ、議員立法で原子力基本法を作り、CIAエージェントで読売新聞社主の正力松太郎を担いで56年原子力委員会と科学技術庁を発足させました。これが、日本の原発の出発点になりましたが、当時の国会答弁等では、原発があれば「いつでも自前の原爆を持てる」とも公言していました。その後の科学技術庁長官、防衛庁長官、通産大臣等の閣僚歴は、日本の核政策・エネルギー政策の中枢で、地震に弱く狭い国土に原発を林立させ、同時に、アメリカの「核の傘」のもとでも原発=「潜在的核保有」を持続し肥大させるものでした。マスコミはあまり触れませんが、中曽根首相時代に、核燃サイクル用プルトニウム保有を認めさせる対米交渉が進展し、88年日米原子力協定に特例が書き込まれました。それらの中曽根核政策のつけが、多発した原発事故であり、3.11以後も再生エネルギーへの転換ができぬまま原発再稼働を許し、核兵器禁止条約に加わることもできない、今日の日本を形作りました。中曽根風「大統領型首相」を、うわべだけファッションとして受け継いだ軽薄な安倍晋三は、9月の国連気候変動サミットでは「美しい演説よりも具体的計画を」と演説を断られ、来日したローマ教皇から核政策をたしなめられる醜態を演じました。中曽根死すとも、中曽根流新自由主義・核政策は死なず、です。

かと 香港市民の民主主義、隠蔽と嘘に満ちた「桜を見る会」私物化など、時局的には触れたい問題が多々ありますが、この間のパソコン不調、更新トラブル、それに早稲田大学定年退職後2年の年齢と体調を考え、本サイトでの発言は、今回更新の「中曽根政治」のような、歴史的・大局的問題に絞り、全体をデータベース中心に切り替えていこうと思います。当面月2回だった更新を1回に減らし、過去の論文ばかりでなく、講演記録やパワポ資料もpdfやpptで保存し、「ネチズンカレッジ」カリキュラムを、きめ細かく再編成します。各種書評や、ゾルゲ事件・731部隊等も、イシューごとでまとめることを、計画しています。そのために、12月15日更新はパスし、次回更新は、新年1月1日の模様がえをめざします。常連の皆様には、ご不便をおかけしますが、ご容赦・ご期待ください。