LIVING ROOM 24 (Jan. to June 2008)

 ここには、<What's New>で定期的にトップに現れた、本ホームページの作成過程、試行版への反響、更新の苦労話、メールへのご返事、ちょっといい話、外国旅行記・滞在記などが、日誌風につづられます。趣味的なリンクガイドも兼ねます。ま、くつろぎのエッセイ集であり、対話のページであり、独白録です。日付けは下の方が古いので、逆読みしてください。


大正生れ」の高貴高齢者の誇り悲鳴を無視して、

ジャパン・ナッシングの新自由主義政治を続けていいのか?

2008.6.15  千葉県の蘇人生さん(大正生まれの90歳!)作詞の後期高齢者医療制度を嘆いた「大正生れの歌 」を、元祖「大正生れの歌 」を掲げる「大正っ子のパソコン操作」サイトのきくやすさん(大正15年生まれ)がアレンジして、茨城県のままなすさん(86歳)がメロディつきで歌ってくれました。本歌作詞作曲者の小林朗さんも、大正14年生まれの84歳ですから、作詞・作曲・編詞・歌の「大正生れ」4人あわせて340歳を越える怨歌です。でもその歌声は、日本政府にはなかなか通じません。そこできくやすさんは、「大正生まれの皆さんへ」と呼びかける、老人パワーの誇りと連帯を綴ったもう一つの替え歌「生き生き高貴高齢者の歌」を作って、本サイトに送ってきました。沖縄県議選では確実に民意を動かし与党過半数割れに追い込み、野党が多数の参議院でいったん撤回法案が可決されましたが、与党は衆院で継続審議、運用上の手直しでうやむやにしようとしています。ちょうど会期末国会の参院で福田首相問責決議が可決されたものの、翌日の衆院で首相信任決議が通り帳消しされる「ねじれ国会」の取引に使われたかたちです。でも、2度目の天引きに不服審査請求を申し立てたお年寄りが2291人、集会・デモ・座り込みでの抗議、地方自治体での制度撤回・凍結決議もあいついでいます。折から「大正生れの歌 」を発掘した私の旧著『戦後意識の変貌』(岩波ブックレット)も復刻されましたが、これが韓国なら、元気な「大正生れ」パワーに、若者たちが政府を批判し、キャンドルデモで合流してくれたでしょうが。韓国の米国産牛肉輸入制限撤廃に反対する市民運動は、中高校生がインターネットを通じて加わる全国100万人近い反政府運動になり、ろうそくをたてたキャンドルデモの平和的形態で、首相以下全閣僚16人の更迭、李明博大統領の政治手法変更・対米再協議・追加交渉に向かおうとしています。

 その韓国キャンドルデモ最高潮の頃、日本の若者の貧困・格差社会への憤り、ワーキングプアの社会的閉塞への不満・怒りは、秋葉原における無差別殺傷事件で、その一端が内向きに爆発し、表現されました。1999年にJR下関駅に男がレンタカーで突っ込み刃物で5人を殺害、10人に重軽傷を負わせた事件がありましたが、今回は、いまや世界に知られる日本のサブカルチャーの代名詞になったアキバの歩行者天国を狙い、7人が死亡し、10人が負傷しています。英BBCテレビは「日本社会にプレッシャーやストレスが蓄積している兆候か」と報じましたが、容疑者が携帯電話の投稿サイトに綴ったモノローグからは、確かに現代社会の深刻な病理が浮かんできます。容疑者が在学した青森高校は、東北地方有数の進学校です。おそらく同級生のほとんどは、都会の4年生大学や地元の弘前大学に進学したことでしょう。厳しかった両親への怨念、異性や友達への渇望、ゲームやクルマへの執着、神戸連続児童殺傷事件や大阪教育大学附属池田小学校事件との符合など、いくつもの潜在要因は抽出できますが、「直近で最大の不満は職場だった」という容疑者の供述が重要です。おそらく直接の引き金でしょう。不安定で低賃金な派遣労働のその職場さえリストラで奪われようとして、「4トントラックを工場の前に横付けして入り口を封鎖してやろうか」と語っていた容疑者の矛先が、職場の工場や管理者に向かっていたら、事件の様相は大きく変わっていたでしょう。逆にいえば、今日の新自由主義グローバル化のもとでの不安定雇用増大、ワーキングプアの実態が続く限り、第2・第3の秋葉原が出現する可能性は排除できません。「世に倦む日日」さんサイトが、連日若者の心の深い闇に迫っています。アメリカ在住の冷泉彰彦さんは、『from 911/USAレポート』第360回 アメリカから見たアキハバラ」で、「25歳の派遣社員」という日本の報道に疑問を感じたといいます。アメリカでさえ、フルタイムとパートタイムは時給換算の賃金は同じであり、派遣や偽装請負による人件費削減は奇異であり、容疑者は「自動車塗装工」という労働者として扱われるべきだというのです。昨年話題になった雑誌論文で、今はネットでも読める、『「丸山眞男」をひっぱたきたい 31歳フリーター。希望は、戦争』を想い出しました。

 とはいっても、ニュースの刹那的消費は、この国の政治とマスコミの習い性。後期高齢者医療制度や年金、防衛省汚職の問題は後景に退き、霞ヶ関の「居酒屋タクシー」の話も一過性の話題で終わり、日朝拉致問題協議から岩手・宮城内陸地震、G8サミットの方へと、シフトしていくでしょう。日本政府にとっての秋葉原事件の最大の衝撃は、G8を前に、治安維持の警備・監視を強化し、「安全・安心の国」を売り込もうとしていた矢先に、「自爆テロ」にも似た無差別殺傷事件が「アキバ」で起こってしまったことでしょう。G8に向けては、6月末から7月にかけて、さまざまな市民たちの、環境問題やグローバリズムに関する国際シンポジウムや抗議・連帯行動が企画されています。韓国キャンドル・デモの担い手たちも、その熱気をひっさげて、近場の日本にやってくるでしょう。そんな社会運動・市民連帯に、かのアントニオ・ネグリの入国を渡航直前に拒否したような政府の過剰警備があれば、日本は、チベット問題での中国政府の対応と似た国際的批判を浴びるでしょう。前回述べた、世界政治経済での「ジャパン・ナッシングnothing」のもとでは、秋葉原の惨劇や言論弾圧のようなマイナスイメージだけが増幅されて、忘れられていた日本がよみがえります。そんな時に世界では、直近の長崎市長銃殺事件、オウム真理教の地下鉄サリン事件や、三島由紀夫の自衛隊乱入割腹自殺などと共に、戦前のカミカゼ特攻隊から南京大虐殺・パールハーバーまでが想起されます。それが、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の威力が衰え、トヨタやソニーのブランドがアニメ、コミックやカラオケに重なる、海外の日本に対するステレオタイプに投影されるのです。

 そんな戦時日本の実像を、米国国立公文書館(NARA 2)の新公開資料から探る試みは、5月末に現地ワシントンで機密解除されたFBI個人記録CIA個人ファイル米国陸軍情報部作成個人ファイル中のいくつかを直接見て驚き、帰国後にウェブ情報を再度チェックして、ようやく全貌が見えてきました。これまでも米国国立公文書館の戦時・戦後資料は、私の『象徴天皇制の起源 アメ リカの心理戦「日本計画」』(平凡 社新書、2005書)や、昨年刊行した花伝社 論集『情報戦の時代ーーインターネットと劇場政治』、『情報戦と現代史ーー日本国憲法へのもうひとつの道』でも触れたように、20世紀についての通説や通念をくつがえす貴重な情報を提供してきました。ドイツ史の清水正義さん「ナチ戦争犯罪情報公開法の成立について」が、特に1998年ナチ戦争犯罪情報公開法(Nazi War Crimes Disclosure Act)及び2000年日本帝国政府情報公開法(Japanese Imperial Goverment Disclosure Act)による戦犯資料機密解除の歴史的意義を、丁寧に説明しています。つまり、戦犯にされた重要人物についてのみならず、米国の国益と戦後の対ソ戦略のために戦犯訴追されることなくアメリカに協力した旧軍人・情報将校・科学者・技術者らの記録を含むことによって、「今回の記録公開によりアメリカの知られざるナチ戦犯容認政策の実態が暴露される可能性がある」のです。日本についても同様で、2007年1月19日に、「日本の戦争犯罪に関する記録 100,000ページを新公開」したさい、真っ先にまとまったかたちで原資料のスキャナー画像を含めて公開されたのは、旧陸軍731部隊石井四郎らが米軍に人体実験記録を提供して戦犯訴追を免れた「悪魔の飽食」関係の「Select Documents on Japanese Warcrimes and Japanese Biological Warfare, 1934-2006」全170頁です。また、今回公表された資料についての整理にあたった米国側研究者・書誌学者の研究案内「Researching Japanese War Crimes: Introductory Essays」全240頁も充実していて、南京大虐殺従軍慰安婦の新資料から戦後占領下で暗躍した旧軍人河辺虎四郎らの「地下政府」「新日本軍」を示す資料まで、読み応えがあります。しかし、それらでもダウンロードすると全1700頁に及ぶ資料目録 electronic guideの中のほんの一部です。前回書いたように、そこから手探りでみつけた米国陸軍「野坂参三個人ファイルからだけでも、野坂の自筆GHQ宛て書簡をはじめ、画期的な現代史資料が出てきます。これらIWG文書の英文戦犯資料を全面的に用いれば、日本の戦前・戦中史、戦後占領史・自民党史は、確実に書き換えられます。月刊 現代』6月号に続いて7月号でも佐藤優さん連載「国家の嘘 『沖縄密約を証言した男』吉野文六の半生」で大きくとりあげていただいている、私の「崎村茂樹の6つの謎 」についての中間報告論文の裏付けもいくつかありそうですが、とても一人では扱いきれません。一緒に研究してくれる若い有志を募ります

 本サイトの目玉「国際歴史探偵」、特別研究室2008年の尋ね人」のテーマ<上海におけるゾルゲ、尾崎秀実の周辺>の、「鬼頭銀一山上正義川合貞吉水野成船越寿雄河村好雄野澤房二、副島隆起、新庄憲光大形孝平手嶋博俊坂田寛三日高為雄田中慎次郎らについて、情報をお持ちの方は、加藤katote@ff.iij4u.or.jpまたは渡部富哉watabe38@parkcity.ne.jpへお寄せください」を探求する過程で、3月訪中が、「ゾルゲと周恩来、上海で秘密接触=情報活動で協力−中国共産党元工作員が回想録」という時事通信発信ニュースに結びつきました。鍵を握るのは、日本ではあまり知られていない1930年代初頭の周恩来指揮下の地下情報組織「中共中央特科」と、その指導的活動家「潘漢年」という謎の人物で、さしあたりは、故丸山昇さんの『上海物語 国際都市上海と日中文化人』(講談社学術文庫、2004年)が背景理解に必読のほか、読売新聞社編『20世紀 どんな時代だったのか 戦争編 日本の戦争』(読売新聞社、1999年)、鈴木明『新「南京大虐殺」のまぼろし』(飛鳥新社、1999年)、謝幼田『抗日戦争中、中国共産党は何をしていたか 覆い隠された歴史の真実』(草想社、2006年)等に、「潘漢年」の話が出ていて、予期せぬ参考書となりました。尋ね人ページにはちきゅう座スタディルームの渡部富哉さん連載1−1「ゾルゲ事件の真相究明から見えてくるもの」、1−2「尾崎秀実の10月15日逮捕は検事局が作り上げた虚構のひとつ」、2−1「ゾルゲ事件の真相究明から見えてくるもの 2」2−2「尾崎秀実は日本共産党員だった」をリンクし、「尾崎秀実の後継諜報員として摘発された野沢房二の孤高な闘い」についての渡部富哉さんの最新の研究にもとづく小論を入れてあります。中間報告を論文にした、昨年の崎村茂樹の6つの謎 >とも相通じる、20世紀史の中に埋もれた無名の情報戦犠牲者たちの発掘です。

 八面六臂の活躍中の佐藤優さんが、現在発売中の雑誌月刊 現代』6月号・7月号国家の嘘 『沖縄密約を証言した男』吉野文六の半生」で、私の崎村茂樹の6つの謎についての中間報告論文を、敗戦当時在独日本大使館に勤めていた生き残り吉野文六さんに直接示して私たちの調査結果を確認し、「インテリジェンスの観点から実に興味深い人物」と評してくれています。吉野文六氏も、「崎村さんのことを懐かしく思い出しました。大学の先生で、大使館の嘱託だったと思う。左翼系の考えをもっているんじゃないかと噂されていました」と証言しています。佐藤・吉野対談では今後も取り上げられるようなので、楽しみです。実は佐藤さんが吉野さんに渡した私の中間報告後に、私たちの崎村茂樹探求チームは、次々に新しい資料と事実を発見しています。崎村茂樹は1937−41年の日本の論壇で、経済学者として20本近い論文を書いており、その一つでは、尾崎秀実と一緒に中国を論じていました。また、1943−44年のスウェーデン「亡命」についての在独日本大使館側資料が、上述米国国立公文書館文書中から見つかりました。そして、本サイト英語版の方でアップしたように、戦後のノーベル平和賞受賞者・元西独首相ウィリ・ブラント自伝中に、1944年亡命先ストックホルムでの崎村茂樹との出会いが出てきました。それも、スウェーデンのノーベル経済学賞・平和賞受賞者ミュルダール夫妻、戦後オーストリア首相クライスキーらの名前と一緒に、という衝撃的なものです。早速ご遺族に連絡したら、ブラントミュルダール夫妻の話は聞いたことはないが、ハイエクハマーショルドとは会ったことがあると亡父に聞いた、という話。戦後のノーベル賞受賞者5人が、崎村茂樹の周辺に立ち現れました。1945年の中国での活動も、いくつか新しい事実がわかってきました。関連する学問的仕事で、工藤章・田嶋信雄編『日独関係史』全3巻の完結と、その第3巻「体制変動の社会的衝撃」に私が寄稿した巻頭論文「ヴァイマール・ドイツの日本人知識人」を公刊、全編力作揃いで、4月27日の『毎日新聞』に、山内昌之さんが、良く読み込んだ書評を書いてくれました(東大出版会、2008年3月)。

 4月10日に発売された加藤哲郎・国廣敏文編『グローバル化時代の政治学』(法律文化社)は、立命館大学を3月限りで退職した中谷義和さんを記念する論集ですが、私自身は「グローバル・デモクラシーの可能性ーー世界社会フォーラムと『差異の解放』『対等の連鎖』」を書いています。自分自身の編著ですが、一般書籍ですので、発売3か月後に本サイトにアップロードします。本サイトの目玉「国際歴史探偵」、特別研究室2008年の尋ね人」のテーマ、<上海におけるゾルゲ、尾崎秀実の周辺>についても中国である成果がありましたが、それは近日公開。引き続き、鬼頭銀一山上正義川合貞吉水野成船越寿雄河村好雄野澤房二副島隆起、新庄憲光大形孝平手嶋博俊坂田寛三日高為雄田中慎次郎らについて、情報をお持ちの方は、加藤katote@ff.iij4u.or.jpまたは渡部富哉watabe38@parkcity.ne.jpへお寄せください。昨年の成果、花伝社 論集『情報戦の時代ーーインターネットと劇場政治』、『情報戦と現代史ーー日本国憲法へのもうひとつの道』について、『図書新聞』編集長米田綱路さんが、長文の書評を書いてくれました(第2859号、2008年2月23日)。「モスクワ、ベルリン、日本をまたぐ20世紀情報戦の人的ネットワークを解明」「『疑心暗鬼の政治学』にからめとられながら、『大義』に生きた人びとの系譜」ですって。よく読んでいただき多謝。続く情報戦のなかの『亡命』知識人ーー国崎定洞から崎村茂樹まで」20 世紀メディア研究所インテリジェンス 』誌第9号、2007/11,紀伊国屋書店)グローバルな地球社会のナショナルな国家」(尾崎行雄記念財団『世界と議会』第518号、2007年11月)はアップ済み。図書館「ネチズンカレッジ」 学術論文データベ ースに、宮内広利さん「世界史の最初と最後」をアップしました。宮内さんにはこれまでも力作を寄せていただいていますが、その最新版です。 学術論文データベ ースの私の論文●加藤哲郎「日本におけ る『市民社会』概念の受容と展開」(2006.1)と●周初(淵邊朋広・日本 語版監修)「第一部 台湾における市民社会の形成と民主化」(2006.1)が、北京大学国際関係学院の梁雲祥印紅標両先生と の連絡がとれて、かってトヨタ財団の助成を得て行った共同研究『華人地域における市民社会の形成と民主化』の全体を、 ●梁雲 祥(北京大学国際関係学院)「序章 市民社会と民主化の概念及び理論」 (2007.10)、●梁雲祥(北京大学国 際関係学院)「第二部 シンガポールの民主化」(2007.10)、●印紅標(北京大学国 際関係学院)「第三部 香港市民社会の発展と民主化」(2007.10)の3つの論文 が追加され、日本語インターネット版一書の体裁にまとまりました。この内容を、北京大学で英語で講演してきました。ジョルダンサンドさん寄稿「アメリカよりみた 『靖国問題』−ドーク氏に反論する」も入っていますが、高坂邦 彦さん「筐底拾遺」中「戦前 日本の外交評論と憲法解釈 ―清澤洌と植原悦二郎―評伝・植原悦二郎 」「評伝 ・清澤洌」は、再びつながりました。情報戦のビギナー向けに渡辺雅男・渡辺治 編『「現代」という環境』(旬報社)所収の講演「インターネット ーー情報という疑似環境」をどうぞ。昨年アップした論文「グ ローバリゼーションと国民国家」(2005年社会理論学会第13回大会報告)、岩波書店から昨年3月に刊行された慶應大学経済学部公開講座の記録、松村高夫・高草木光 一編『連続講義 東アジア 日本が問われていること、『情況』5/6月号のインタビュー「ポスト国民国家 時代における労働市場の変容と男性性」等もご笑覧を。

  『エコノミスト』誌 連載書評「歴史書の棚」は、5月20日号の、井手孫六『中国残留邦人――置き去られた六十余年』(岩波新書)今西光男『占領期の朝日新聞と戦争責任 村山長挙と緒方竹虎』(朝日新聞社)を、「厚生省は なぜ残留邦人を救えなかったのか」と題してアップ。4月15日号の「今さらマルクス? 今こそマルクス?」と題した佐藤優『私のマルクス』(文藝春秋)寺出道雄『山田盛太郎 マルクス主義者の知られざる世界』(日本経済評論社)、3月18日号の、城戸久枝『あの戦争から遠く離れて 私につながる歴史をたどる旅』(情報センター出版局)梁世勲『ある韓国外交官の戦後史 旧満州「新京」からオスロまで』(すずさわ書店)を「旧満州の記憶をめぐる、日・中・韓国人の落差」、2月18日号の、袖井林二郎『アーサー・シイク 義憤のユダヤ絵師』(社会評論社)三宅正樹『スターリン、ヒトラーと日ソ独伊連合構想』(朝日新聞社)を取り上げた「今こそ真剣に向き合うべき、世界大戦期日本外交」、1月21日号のピーター・バーク『時代の目撃者』(諸川春樹訳、中央公論美術出版)松村高夫・矢野久編著『大量虐殺の社会史 戦慄の20世紀』(ミネルヴァ書房) の組み合わせでの「イメージがつくる歴史の虚像と実像」、などと共にどうぞ。長文書評は、社会思想史学会年報『社会思想史研究』第31号(2007年)に寄せた西川正雄『社会主義インターナショナルの群像 1914-1923』(岩波書店)図書館に入れたところで、残念ながら西川教授の訃報で、追悼文を加えました。追悼文をもう二つ、元同志社大学人文科学研究所長田中真人さん追悼田中真人さんの学風と鮒寿司」を同志社大学『キリスト教社会問題研究』第56号(2008年2月)に発表し、さらに追悼会用の別文「田中真人さんが逝って、遺された者は…」も加えアップしました。栗木安延さん追悼文「『熟練工』』栗木安延さんを偲ぶ」も、このたび7回忌の「偲ぶ会」とのことで、バージョンアップしました。ついでに図書館特別室に入れていなかった廣松渉さん、森安達也さん追悼(『国民国家のエルゴロジー・あとがき』末尾)もアップ。廣松さん、森安さん西川さん田中真人さんと話し合った歴史学方法論が面白くなってきたので、ジョナサン・ハスラム『誠実という悪徳 E.H.カー 1892−1982』(現代思潮新社)にも書評で挑戦。『週刊読書人』2月1日号に掲載されました。

 恒例で、今年3月に卒業した一橋大学加藤ゼミ08卒業学士論文を5月にアップ。新入生用に、インターネット上では、「 ナレッジステーション 」に、丸山真男『日本の思想』、デーヴィッド・ヘルド『グローバル化とは何か』、斎藤純一『公共性』を「政治学 ・おすすめ本」として挙げておきました。ただしIDE大学協会『IDE 現代の高等教育』第495号(2007年11月)に寄せた「大学ランキング一橋大学の取組み」は、3月31日朝日新聞記事「上位狙いか疑問視か 海外発『世界大学ランキング』」にあるように、「ネチズンカレッジ」とは別世界の話ですので、本サイトには収録しません。ただし、朝日新聞社『2009年版大学ランキング』に寄せた「大学教員のメディア発信 広告塔か、社会貢献か」は、一般性を持つエッセイですので新規アップ。一橋大学学生用には新学期講義案内が更新してあります。


アメリカから「世界で何が起こっているか」は読めても、

「日本に何が起こっているか」は見えない!

大正生れの歌」の悲鳴は聞こえない!

2008.6.4  2週間ほどアメリカに行ってきて、まだ時差ボケです。デジカメをどうやらバックから盗まれたらしく、画像の最新ニュースはありません。ちょうど民主党のミシガン、フロリダの大統領予備選の代議員数が2分の1づつに算定されて、オバマのヒラリーに対する優位確定が大々的に報じられていました。ただ英語のテレビでは、もう一つの話題も大きくとりあげられていました。ブッシュ大統領の元報道官で記者会見でおなじみだった顔マクレラン氏の暴露本『何が起こったのか(What Happened)−ブッシュ・ホワイトハウスの内幕とワシントンの欺瞞(ぎまん)の文化の出版で、かつてテキサス州知事時代からの忠実な腹心が、親分ブッシュのイラク政策を「プロパガンダ」だったと批判し、ハリケーン・カトリーナ来襲時の対応を「大失策」とこき下ろしています。ちょうど中西部では大きな竜巻被害がでたばかりで、レームダックのブッシュは今や笑いものです。共和党のマケイン候補の影も薄く、「変化」を訴えるオバマ民主党大統領の誕生は、既定のコースのように扱われています。もちろん、その深層には、飛行機の中で読んだ堤未果『ルポ 貧困大国アメリカ』(岩波新書)が具体的事例で次々に挙げる深刻な現実があります。サブプライム・ローンを払えず家を失った人々、ブッシュのハリケーン時「大失策」で職場を失った人々、そして、株式会社化する病院に1日入院すれば100万円以上、出産3日で2万ドル(200万円!)かかる福祉の貧困、セーフティネットの欠如が、貧困層の蟻地獄を底なしにしています。

 前回まで本サイトで掲げてきた千葉県の蘇人生さん(大正生まれの90歳!)作詞の後期高齢者医療制度批判大正生れの歌 」を、元祖「大正生れの歌 」を掲げる「大正っ子のパソコン操作」サイトのきくやすさん(大正15年生まれ)が、メロディつきで歌ってくれました。早速リンク本歌作詞作曲者の小林朗さんも大正14年生まれの84歳ですから、作曲・編詞・歌の「大正生れ」3人あわせて250歳を越える怨歌です。でもその歌声は、日本政府には聞こえません。現代アメリカの様相は、ほとんど明日の日本なのに、日本の現在も「変化」のきざしも、アメリカでは見えません。中国四川大地震は連日アメリカでも報道されていますが、幾度ものアメリカ滞在で初めての経験ですが、テレビで日本関連の報道を見ることはありませんでした。参加した国際学会で話題になっていたアニメやアキバでも取り上げられないかと期待していたのですが、とうとう朝晩のニュースには、アニメも福田首相も登場することはありませんでした。首都ワシントンですから、ジャパン・ナッシングnothingです。手強い競争相手とされたバッシンbashingの時代はとっくに去り、新興中国への経由地としてのパッシングpassingの意味もなくなり、アメリカの世界地図から日本は消えています。普通の人々には、日本が見えなくなっています。大統領選の話題にも対日政策はのぼりません。もともとアメリカに言われて必至で「構造改革」を続け、アフガニスタンやイラクでのアメリカの戦争を後方支援してきたはずなのに、この片想いの「愛人」は捨てられそうです。そもそもアメリカ社会の中で、アジア系は急速に増えているんですが、それは中国や韓国やインドやベトナムからの人々で、かつて「名誉白人」風に肩を切っていた日本人ビジネスマンの影が薄いのです。そしてまた、グローバル化と新自由主義のもとでの格差拡大、貧困、ワーキングプアの問題は、ヨーロッパを含む全世界の問題ですから、それに対する異議申し立ての声の大きさが、アメリカにとっての政策優先順位になります。「貧困大国」につぐ貧困率ワースト2の国日本は、オバマ風「チェンジ」の声すら聞こえないので、特に相手にする必要もない属国ということになります。日本の存在感は、フェードアウト風に失われています。それは日本政府にとっては危機であっても、アメリカ政府にとっては、特に手を打つ必要もない既定の流れなのです。7月サミットでのホスト役も、この大きな流れに抗するものとはなりえないでしょう。

 そんな流れの一つの典型が、国際会議の主題であった世界の高等教育のグローバルな変容。ただしこの流れはアメリカが作ったのではなく、ヨーロッパのエラスムス計画からボローニャ・プロセスの衝撃のようです。戦後占領改革で導入されたアメリカ式6・3・3・4制教育の大前提が崩れ、気がついたら4年間の大学生活やサクラの季節の4月入学、学卒一斉就職の労働市場なんて日本だけ、となるかもしれません。ご存じの方も多いと思いますが、「エラスムス計画」とは、ベルリンの壁崩壊前の1987年に ECで開始された、ヨーロッパ共同体内部の人材育成=留学生・研究者派遣計画です。当初は年間3000人の学生、1000人の教員の12か国派遣交流でしたが、ECがEU(欧州連合)に発展して年10万人の学生、1万2000人の教員が30か国で学びあう大学連携・相互交流に発展し、すでに累計140万人以上の「ヨーロッパ市民」を育成してきました。その延長上で、多国間協力の共通カリキュラムを検討し、学士3年・修士2年・博士3年の学位の共通枠組を設定し、高等教育の質を相互に保証・認定しあい、学生・教員の相互乗り入れ、就職流動性を高めようというのが、いわゆる「ボローニャ・プロセス」で、2010年までに単位や学位の共通化が図られようとしています。すでにEU27か国の枠を越えて、49か国が加わっているといいますから、世界7000大学の所在国の4分の1に達し、21世紀の世界の大学システムは「地球市民」育成へと動いています。そのポイントは奨学金制度で、貧富の差や各国の経済力に関わりなく、域内の向学心ある学生に等しく高等教育機会を保証しようとするものです。実は今回の国際会議では、現代日本の教育システムの原型を作ったアメリカがボローニャ・システムにどう対応しようとしているかを知りたかったのですが、どうやらこの世界は「アメリカン・スタンダード」ではなく「ヨーロッパ・スタンダード」がグローバルな標準になり、むしろアメリカが4年生大学制度を再検討し、世界にアメリカ人学生を送り出して、ボローニャ・プロセスに加わろうとしています。つまり、かつてのフルブライト奨学金式の、世界のエリート学生をアメリカに集め学ばせて「親米市民」を育成する、国民国家を拡大する「帝国主義」型(?)人材育成は20世紀の過去のものとなり、アメリカさえも、脱国民国家の「帝国」型(?)「地球市民」創成に取り組もうとしています。もちろんボローニャ・プロセスでも、単位認定・学位認定では各国ネイティヴ言語の他の共通語は英語とされていますから、英米にとっては乗りやすいという事情があります。もう一つ会議に出て気がついたのは、もともとアジアでも高等教育は英語のインド、オーストラリアや香港、シンガポールはもちろんのこと、今や世界の留学生送りだしの中心となった中国や韓国が、この世界的流れにいち早く反応し、国を挙げて対応していることです。この点では、学部4年教育、日本語による日本国民育成、日本企業への人材供給を当然としてきた日本の対応の立ち後れが目立ち、知と人材育成の世界でも孤立し、魅力のない国になろうとしています

 そんな日本に誰がしたのかと、国際会議の合間を縫って一日だけ郊外カレッジパークの米国国立公文書館(NARA 2)に出かけました。主題は月刊 現代6月号に続いて7月号でも佐藤優さん連載「国家の嘘 『沖縄密約を証言した男』吉野文六の半生」で大きくとりあげていただいている、私の崎村茂樹の6つの謎についての中間報告論文の裏付けを、アメリカが押収した戦時ナチス資料の方から何かないかと探していて、米国国立公文書館IWG文書中に1943−44年在独日本大使館からスウェーデンに亡命した崎村茂樹の監視記録が当時のナチス秘密警察(ゲシュタポ)か、それに対抗するアメリカの反ナチ地下抵抗運動を支援した戦時情報局(OSS)文書中にありそうだと見当をつけて、日本を発つ前日にウェブサイトをあたっていたら、面白そうなファイルがいっぱい出てきたからです。

アメリカ議会は1998年10月8日にナチ戦争犯罪情報公開法(Nazi War Crimes Disclosure Act)(以下、ナチ情報公開法と略す)を、次いで2000年12月27日に日本帝国政府情報公開法(Japanese Imperial Goverment Disclosure Act)を制定した。前者はナチ戦争犯罪に関して合衆国政府機関が保管する機密扱い記録の機密解除と公開を、同様に後者は戦前日本政府・軍の戦争犯罪に関する機密扱い記録の機密解除と公開を主旨としたものである。両者はほぼ同一内容であり、後者は前者の執行過程で前者を補完するものとして制定された。……ナチ情報公開法は、アメリカ政府機関が所有するナチ関係記録で現在なお機密扱いされているものについて、なるべく広範に機密解除をするべくしかるべき機関が三年間の期間限定で記録調査、目録作成、機密解除指定等を行うことを定めている。

というあたりまでは、私の『象徴天皇制の起源 アメ リカの心理戦「日本計画」』(平凡 社新書、2005書)や、昨年刊行した花伝社 論集情報戦の時代ーーインターネットと劇場政治』、『情報戦と現代史ーー日本国憲法へのもうひとつの道でも触れているのですが、そうした資料の整理が進んで、どうやらIWGの膨大な個人ファイルも索引化され、現物が読めるようになったみたいなのです。その中の機密解除されたFBI個人記録CIA個人ファイル米国陸軍情報部作成個人ファイル中に、これまで機密扱いだった戦前・戦時・戦後の重要人物、特に「敵国」ドイツ人・日本人の膨大な個人ファイルが公開されており、私の進めている「国際歴史探偵」にとっては巨大な新資料の宝庫になっていました。もっとも直接の目当てである崎村茂樹やリヒアルト・ゾルゲの個人ファイルはありませんでしたが、その周辺の思わぬ記録がたくさんみつかりました。一つだけ例を挙げれば、米国陸軍の「野坂参三ファイル」は数百ページの充実した内容で、戦後占領期に日本共産党の指導者になった野坂参三が「解放軍」と見なしたマッカーサー将軍以下GHQ首脳への直筆手紙が多数入っていました。もちろん米軍側のスパイを使った野坂や共産党指導者に対する監視記録や写真・地図類も豊富で、日本の無名の市民がマッカーサー将軍宛に誰が共産主義者だから要注意などと告発する手紙類も、これまでどこかにあるとは考えられていたのですが、なんと米国陸軍「野坂参三個人ファイル」中に、現物のまま綴じ込まれていました。そのほかアッと驚くような資料も多数ありそうですが、その辺は解読がこれからなので、次回更新以降に。乞うご期待!

  前回述べたように、本サイトの目玉「国際歴史探偵」、特別研究室2008年の尋ね人」のテーマ<上海におけるゾルゲ、尾崎秀実の周辺>の、「鬼頭銀一山上正義川合貞吉水野成船越寿雄河村好雄野澤房二、副島隆起、新庄憲光大形孝平手嶋博俊坂田寛三日高為雄田中慎次郎らについて、情報をお持ちの方は、加藤katote@ff.iij4u.or.jpまたは渡部富哉watabe38@parkcity.ne.jpへお寄せください」を探求する過程で、3月訪中が、「ゾルゲと周恩来、上海で秘密接触=情報活動で協力−中国共産党元工作員が回想録」という時事通信発信ニュースに結びつきました。鍵を握るのは、日本ではあまり知られていない1930年代初頭の周恩来指揮下の地下情報組織「中共中央特科」と、その指導的活動家「潘漢年」という謎の人物で、さしあたりは、故丸山昇さんの『上海物語 国際都市上海と日中文化人』(講談社学術文庫、2004年)が背景理解に必読のほか、読売新聞社編『20世紀 どんな時代だったのか 戦争編 日本の戦争』(読売新聞社、1999年)、鈴木明『新「南京大虐殺」のまぼろし』(飛鳥新社、1999年)、謝幼田『抗日戦争中、中国共産党は何をしていたか 覆い隠された歴史の真実』(草想社、2006年)等に、「潘漢年」の話が出ていて、予期せぬ参考書となりました。

 八面六臂の活躍中の佐藤優さんが、現在発売中の雑誌月刊 現代』6月号・7月号国家の嘘 『沖縄密約を証言した男』吉野文六の半生」で、私の崎村茂樹の6つの謎についての中間報告論文を、敗戦当時在独日本大使館に勤めていた生き残り吉野文六さんに直接示して私たちの調査結果を確認し、「インテリジェンスの観点から実に興味深い人物」と評してくれています。吉野文六氏も、「崎村さんのことを懐かしく思い出しました。大学の先生で、大使館の嘱託だったと思う。左翼系の考えをもっているんじゃないかと噂されていました」と証言しています。佐藤・吉野対談では今後も取り上げられるようなので、楽しみです。実は佐藤さんが吉野さんに渡した私の中間報告後に、私たちの崎村茂樹探求チームは、次々に新しい資料と事実を発見しています。崎村茂樹は1937−41年の日本の論壇で、経済学者として20本近い論文を書いており、その一つでは、尾崎秀実と一緒に中国を論じていました。また、1943−44年のスウェーデン「亡命」についての在独日本大使館側資料が、なんと米国国立公文書館文書中から見つかりました。そして、すでに本サイト英語版の方でアップしたように、戦後のノーベル平和賞受賞者・元西独首相ウィリ・ブラント自伝中に、1944年亡命先ストックホルムでの崎村茂樹との出会いが出てきました。それも、スウェーデンのノーベル経済学賞・平和賞受賞者ミュルダール夫妻、戦後オーストリア首相クライスキーらの名前と一緒に、という衝撃的なものです。早速ご遺族に連絡したら、ブラントミュルダール夫妻の話は聞いたことはないが、ハイエクハマーショルドとは会ったことがあると亡父に聞いた、という話。戦後のノーベル賞受賞者5人が、崎村茂樹の周辺に立ち現れました。1945年の中国での活動も、いくつか新しい事実がわかってきました。この秋早稲田大学で、また佐藤優さんとご一緒の仕事を予定していますが、今から楽しみです。

 関連する学問的仕事で、工藤章・田嶋信雄編『日独関係史』全3巻の完結と、その第3巻「体制変動の社会的衝撃」に私が寄稿した巻頭論文「ヴァイマール・ドイツの日本人知識人」を公刊、全編力作揃いで、4月27日の『毎日新聞』に、山内昌之さんが、良く読み込んだ書評を書いてくれました(東大出版会、2008年3月)。4月10日に発売された加藤哲郎・国廣敏文編『グローバル化時代の政治学』(法律文化社)は、立命館大学を3月限りで退職した中谷義和さんを記念する論集ですが、私自身は「グローバル・デモクラシーの可能性ーー世界社会フォーラムと『差異の解放』『対等の連鎖』」を書いています。自分自身の編著ですが、一般書籍ですので、発売3か月後に本サイトにアップロードします。本サイトの目玉「国際歴史探偵」、特別研究室2008年の尋ね人」のテーマ、<上海におけるゾルゲ、尾崎秀実の周辺>についても中国である成果がありましたが、それは近日公開。引き続き、鬼頭銀一山上正義川合貞吉水野成船越寿雄河村好雄野澤房二副島隆起、新庄憲光大形孝平手嶋博俊坂田寛三日高為雄田中慎次郎らについて、情報をお持ちの方は、加藤katote@ff.iij4u.or.jpまたは渡部富哉watabe38@parkcity.ne.jpへお寄せください。「尋ね人」ページには、ちきゅう座スタディルームの渡部富哉さん連載1−1「ゾルゲ事件の真相究明から見えてくるもの」、1−2「尾崎秀実の10月15日逮捕は検事局が作り上げた虚構のひとつ」、2−1「ゾルゲ事件の真相究明から見えてくるもの 2」2−2「尾崎秀実は日本共産党員だった」をリンクし、「尾崎秀実の後継諜報員として摘発された野沢房二の孤高な闘い」についての渡部富哉さんの最新の研究にもとづく小論を入れてあります。中間報告を論文にした、昨年の崎村茂樹の6つの謎 >とも相通じる、20世紀史の中に埋もれた無名の情報戦犠牲者たちの発掘です。

2月22日のインド・デリー大学東アジア学部ブリジ・タンカ教授講演会旅人の記憶――日本とインドの近代は、来日中の中国社会科学院孫歌Sung-Guu)先生ら国際色豊かな研究者・学生のほか、インドに関心を持つ一般市民の方々もかけつけて、会場いっぱいの盛況でした。旅人の記憶」はパワーポイント原稿で保存します。昨年の成果、花伝社 論集情報戦の時代ーーインターネットと劇場政治』、『情報戦と現代史ーー日本国憲法へのもうひとつの道について、『図書新聞』編集長米田綱路さんが、長文の書評を書いてくれました(第2859号、2008年2月23日)。「モスクワ、ベルリン、日本をまたぐ20世紀情報戦の人的ネットワークを解明」「『疑心暗鬼の政治学』にからめとられながら、『大義』に生きた人びとの系譜」ですって。よく読んでいただき多謝。続く情報戦のなかの『亡命』知識人ーー国崎定洞から崎村茂樹まで」20 世紀メディア研究所インテリジェンス 』誌第9号、2007/11,紀伊国屋書店)グローバルな地球社会のナショナルな国家」(尾崎行雄記念財団『世界と議会』第518号、2007年11月)はアップ済み。図書館「ネチズンカレッジ」 学術論文データベ ースに、宮内広利さん「世界史の最初と最後」を新規アップしました。宮内さんにはこれまでも力作を寄せていただいていますが、その最新版です。 学術論文データベ ースの私の論文●加藤哲郎「日本におけ る『市民社会』概念の受容と展開」(2006.1)と●周初(淵邊朋広・日本 語版監修)「第一部 台湾における市民社会の形成と民主化」(2006.1)が、北京大学国際関係学院の梁雲祥印紅標両先生と の連絡がとれて、かってトヨタ財団の助成を得て行った共同研究華人地域における市民社会の形成と民主化』の全体を、 ●梁雲 祥(北京大学国際関係学院)「序章 市民社会と民主化の概念及び理論」 (2007.10)、●梁雲祥(北京大学国 際関係学院)「第二部 シンガポールの民主化」(2007.10)、●印紅標(北京大学国 際関係学院)「第三部 香港市民社会の発展と民主化」(2007.10)の3つの論文 が追加され、日本語インターネット版一書の体裁にまとまりました。この内容を、北京大学で英語で講演してきました。ジョルダンサンドさん寄稿「アメリカよりみた 『靖国問題』−ドーク氏に反論する」も入っていますが、高坂邦 彦さん「筐底拾遺」中「戦前 日本の外交評論と憲法解釈 ―清澤洌と植原悦二郎―評伝・植原悦二郎 」「評伝 ・清澤洌」は、再びつながりました。情報戦のビギナー向けに渡辺雅男・渡辺治 編『「現代」という環境』(旬報社)所収の講演「インターネット ーー情報という疑似環境」をどうぞ。昨年アップした論文「グ ローバリゼーションと国民国家」(2005年社会理論学会第13回大会報告)、岩波書店から昨年3月に刊行された慶應大学経済学部公開講座の記録、松村高夫・高草木光 一編『連続講義 東アジア 日本が問われていること、『情況』5/6月号のインタビュー「ポスト国民国家 時代における労働市場の変容と男性性」等もご笑覧を。

  『エコノミスト』誌 連載書評「歴史書の棚」は、5月20日号の、井手孫六『中国残留邦人――置き去られた六十余年』(岩波新書)今西光男『占領期の朝日新聞と戦争責任 村山長挙と緒方竹虎』(朝日新聞社)を、「厚生省は なぜ残留邦人を救えなかったのか」と題して新規アップ。4月15日号の「今さらマルクス? 今こそマルクス?」と題した佐藤優『私のマルクス』(文藝春秋)寺出道雄『山田盛太郎 マルクス主義者の知られざる世界』(日本経済評論社)、3月18日号の、城戸久枝『あの戦争から遠く離れて 私につながる歴史をたどる旅』(情報センター出版局)梁世勲『ある韓国外交官の戦後史 旧満州「新京」からオスロまで』(すずさわ書店)を「旧満州の記憶をめぐる、日・中・韓国人の落差」、2月18日号の、袖井林二郎『アーサー・シイク 義憤のユダヤ絵師』(社会評論社)三宅正樹『スターリン、ヒトラーと日ソ独伊連合構想』(朝日新聞社)を取り上げた「今こそ真剣に向き合うべき、世界大戦期日本外交」、1月21日号のピーター・バーク『時代の目撃者』(諸川春樹訳、中央公論美術出版)松村高夫・矢野久編著『大量虐殺の社会史 戦慄の20世紀』(ミネルヴァ書房) の組み合わせでの「イメージがつくる歴史の虚像と実像」、などと共にどうぞ。長文書評は、社会思想史学会年報『社会思想史研究』第31号(2007年)に寄せた西川正雄『社会主義インターナショナルの群像 1914-1923』(岩波書店)図書館に入れたところで、残念ながら西川教授の訃報で、追悼文を加えました。追悼文をもう二つ、元同志社大学人文科学研究所長田中真人さん追悼田中真人さんの学風と鮒寿司」を同志社大学『キリスト教社会問題研究』第56号(2008年2月)に発表し、さらに追悼会用の別文「田中真人さんが逝って、遺された者は…」も加えアップしました。栗木安延さん追悼文「『熟練工』』栗木安延さんを偲ぶ」も、このたび7回忌の「偲ぶ会」とのことで、バージョンアップしました。ついでに図書館特別室に入れていなかった廣松渉さん、森安達也さん追悼(『国民国家のエルゴロジー・あとがき』末尾)もアップ。廣松さん、森安さん西川さん田中真人さんと話し合った歴史学方法論が面白くなってきたので、ジョナサン・ハスラム『誠実という悪徳 E.H.カー 1892−1982』(現代思潮新社)にも書評で挑戦。『週刊読書人』2月1日号に掲載されました。

 恒例で、今年3月に卒業した一橋大学加藤ゼミ08卒業学士論文を5月に新規アップ。新入生用に、インターネット上では、「 ナレッジステーション 」に、丸山真男『日本の思想』、デーヴィッド・ヘルド『グローバル化とは何か』、斎藤純一『公共性』を「政治学 ・おすすめ本」として挙げておきました。ただしIDE大学協会『IDE 現代の高等教育』第495号(2007年11月)に寄せた「大学ランキング一橋大学の取組み」は、3月31日朝日新聞記事「上位狙いか疑問視か 海外発『世界大学ランキング』」にあるように、「ネチズンカレッジ」とは別世界の話ですので、本サイトには収録しません。ただし、朝日新聞社『2009年版大学ランキング』に寄せた「大学教員のメディア発信 広告塔か、社会貢献か」は、一般性を持つエッセイですので新規アップ。一橋大学学生用には新学期講義案内が更新してあります。

 


ゾルゲと周恩来、ブラントと崎村茂樹の出会いの意味とは?

 

「大正生れ」のお年寄りは、

 大正生まれの俺たちは 今では後期高齢者  貰う年金あてにして   細々生きる身なれども

介護・医療と差し引かれ  そのうち末期高齢者  それでも生きるぞ なあお前

「昭和生れ」の若者たちは、

 働けど働けど 我がくらし楽にならざり ぢっと手を見る

2008.5.15 ミャンマーのサイクロン被害は、国連発表は10万人以上、軍事政権発表では死者3万4千人、行方不明2万7千人以上、死者の4割以上がこどもたち、被災者100万人といわれます。でも同国軍政府は、軍事独裁を恒久化する新憲法への翼賛国民投票を優先し、外国からの人的支援を断り続けています。援助物資が軍部翼賛団体にだけ回されているという報道もあります。一分一秒の差が、いくつもの「いのち」に関わっているのに。中国では四川省を中心に大地震、死者は 5万人に達し、被災者1千万人とか、その一人一人に、家族があり、悲しみがあり、苦しみが待っています。異国にある「いのち」の重みを、私たちの感性とイマジメーションは、どれだけ感じ取れているでしょうか。日本の政治は、ついに福田内閣支持率10%台に。末期症状です。

 この週末、5月17−18日に、勤務先の一橋大学で、「中国の格差、日本の格差:格差社会をめぐる日中共同シンポジウム (社会発展過程中貧富分化問題与対策研討会)」と題する、一橋大学社会学研究科・清華大学人文社会科学院・中国社会科学院政治学研究所主催の国際シンポジウムがあります。私も、「<豊かさ>を抱きしめてーー戦後日本の政治意識と価値意識」という報告を、中国社会科学院孫歌Sung-Guu)先生たちと一緒に報告します。一般公開されますから、ご近所の方はどうぞ。

私のそこでの報告は、憲法記念日を前に千葉県の蘇人生さん(大正生まれの90歳!)から送っていただいた大正生れの歌の新バージョン、

大正生まれの俺たちは  今では後期高齢者  貰う年金あてにして   細々生きる身なれども
介護・医療と差し引かれ   そのうち末期高齢者   それでも生きるぞ なあお前  それでも生きるぞ なあお前
 
それに歌人石川啄木の、
 
働けど働けど 猶 我が生活(くらし) 楽にならざり ぢっと手を見る
 work after work  life never be well  I stare at my hands
 
が現実なのに、なぜ政治はそれに真正面から取り組まないのか、そこには政府主導の情報戦と価値観誘導、それを受容する国民意識の変容があるんではないか、と問題提起する予定です。

その原点は、日本国憲法第25条【生存権、国の生存権保障義務】

1 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
 

 中国の胡錦濤国家主席が来日中の5月8日、時事通信から目立たない歴史ニュースが流れました。「ゾルゲと周恩来、上海で秘密接触=情報活動で協力−中国共産党元工作員が回想録」というもので、これ、実は、私の3月中国旅行の副産物でした。

【北京8日時事】旧ソ連の大物スパイで、日本を舞台に諜報(ちょうほう)活動をして逮捕・処刑されたリヒャルト・ゾルゲが来日前の1931年、中国・上海に滞在中に中国共産党の事実上の最高幹部だった周恩来(後の首相)と秘密裏に接触していたことが、同党元工作員の回想録で8日までに分かった。ゾルゲが中国で活動中、共産党最高指導部にも人脈を広げていたことが判明したのは初めて。
 この本は、2002年に限定出版された「毛沢東の親族、張文秋回想録」(広東教育出版社)。著者の張文秋さんは古参党員で、毛沢東主席の長男、次男とそれぞれ結婚した姉妹の母親に当たる。出版前の同年7月、98歳で死去した。 

ネットではやや長いエスカフェの記事でも、その意味はわかりにくいでしょうが、実は、『信濃毎日新聞』などに全文が出た新聞報道では、私の談話が付されています。

加藤哲郎一橋大学教授(政治学)の話 ゾルゲが中国で何をしていたのか、中国側の資料が未公開で、ほとんど明らかになっていないだけに、周恩来との接触が記述された中国共産党元工作員の回想録は貴重な証言であり、驚きだ。ドイツ人研究者の著作[ユリウス・マーダー『ゾルゲ事件の真相』朝日ソノラマ、1986年]によると、ゾルゲは上海で、コミンテルンから中国紅軍(共産党軍)の軍事顧問に派遣されていたドイツ人らとも一緒に活動しており、ゾルゲが軍事情報を集めていたことが分かる。当時、ドイツからは蒋介石の国民党軍に大量の武器が供給されていたが、紅軍は武器が不足しており、ゾルゲが中国共産党のために武器調達にかかわっていたことを示す証言もこの本に記述されている。ゾルゲがその後、中国から日本になぜやってきたのかを研究する上でも、上海での活動実態を解明することが重要だ。(時事)

 この談話には、ちょっとした仕掛けがあります。というのは、本サイトの目玉「国際歴史探偵」、特別研究室2008年の尋ね人」のテーマ<上海におけるゾルゲ、尾崎秀実の周辺>の、「鬼頭銀一山上正義川合貞吉水野成船越寿雄河村好雄野澤房二副島隆起、新庄憲光大形孝平手嶋博俊坂田寛三日高為雄田中慎次郎らについて、情報をお持ちの方は、加藤katote@ff.iij4u.or.jpまたは渡部富哉watabe38@parkcity.ne.jpへお寄せください」を探求する過程で、どうやら1930−32年のゾルゲらドイツ人コミュニスト・グループと周恩来が関係しそうだと見当をつけ、在北京の友人にその裏付け資料収集を頼んでおいたところ、予想通り実際に出てきて、そのことを時事通信の北京特派員が友人から聞いて、私のところに確認を求めてきたもの。鍵を握るのは、日本ではあまり知られていない1930年代初頭の周恩来指揮下の地下情報組織「中共中央特科」と、その指導的活動家「潘漢年」という謎の人物です。詳しくは、来週からしばらくアメリカで、次回更新は6月3日すぎになりますが、その後で。乞う、ご期待!

 八面六臂の活躍中の佐藤優さんが、現在発売中の雑誌月刊 現代』6月号国家の嘘 『沖縄密約を証言した男』吉野文六の半生 第9回 ソ連軍との駆け引き」で、私の崎村茂樹の6つの謎についての中間報告論文を、敗戦当時在独日本大使館に勤めていた生き残り吉野文六さんに直接示して私たちの調査結果を確認し、「インテリジェンスの観点から実に興味深い人物」と評してくれています。吉野文六氏も、「崎村さんのことを懐かしく思い出しました。大学の先生で、大使館の嘱託だったと思う。左翼系の考えをもっているんじゃないかと噂されていました」と証言しています。佐藤・吉野対談では次号で本格的に展開されるようですが、楽しみです。実は佐藤さんが吉野さんに渡した私の中間報告後に、私たちの崎村茂樹探求チームは、次々に新しい資料と事実を発見しています。崎村茂樹は1937−41年の日本の論壇で、経済学者として20本近い論文を書いており、その一つでは、尾崎秀実と一緒に中国を論じていました。また、1943−44年のスウェーデン「亡命」についての在独日本大使館側資料が、なんと米国国立公文書館文書中から見つかりました。そして、すでに本サイト英語版の方でアップしたように、戦後のノーベル平和賞受賞者・元西独首相ウィリ・ブラント自伝中に、1944年亡命先ストックホルムでの崎村茂樹との出会いが出てきました。それも、スウェーデンのノーベル経済学賞・平和賞受賞者ミュルダール夫妻、戦後オーストリア首相クライスキーらの名前と一緒に、という衝撃的なものです。早速ご遺族に連絡したら、ブラントミュルダール夫妻の話は聞いたことはないが、ハイエクハマーショルドとは会ったことがあると亡父に聞いた、という話。戦後のノーベル賞受賞者5人が、崎村茂樹の周辺に立ち現れました。1945年の中国での活動も、いくつか新しい事実がわかってきました。この秋早稲田大学で、また佐藤優さんとご一緒の仕事を予定していますが、今から楽しみです。

 関連する学問的仕事では、工藤章・田嶋信雄編『日独関係史』全3巻の完結と、その第3巻「体制変動の社会的衝撃」に私が寄稿した巻頭論文「ヴァイマール・ドイツの日本人知識人」を公刊、全編力作揃いで、4月27日の『毎日新聞』に、山内昌之さんが、良く読み込んだ書評を書いてくれました(東大出版会、2008年3月)。4月10日に発売された加藤哲郎・国廣敏文編『グローバル化時代の政治学』(法律文化社)は、立命館大学を3月限りで退職した中谷義和さんを記念する論集ですが、私自身は「グローバル・デモクラシーの可能性ーー世界社会フォーラムと『差異の解放』『対等の連鎖』」を書いています。自分自身の編著ですが、一般書籍ですので、発売3か月後に本サイトにアップロードします。本サイトの目玉「国際歴史探偵」、特別研究室2008年の尋ね人」のテーマ、<上海におけるゾルゲ、尾崎秀実の周辺>についても中国である成果がありましたが、それは近日公開。引き続き、鬼頭銀一山上正義川合貞吉水野成船越寿雄河村好雄野澤房二副島隆起、新庄憲光大形孝平手嶋博俊坂田寛三日高為雄田中慎次郎らについて、情報をお持ちの方は、加藤katote@ff.iij4u.or.jpまたは渡部富哉watabe38@parkcity.ne.jpへお寄せください。「尋ね人」ページには、ちきゅう座スタディルームの渡部富哉さん連載1−1「ゾルゲ事件の真相究明から見えてくるもの」、1−2「尾崎秀実の10月15日逮捕は検事局が作り上げた虚構のひとつ」、2−1「ゾルゲ事件の真相究明から見えてくるもの 2」2−2「尾崎秀実は日本共産党員だった」をリンクし、「尾崎秀実の後継諜報員として摘発された野沢房二の孤高な闘い」についての渡部富哉さんの最新の研究にもとづく小論を入れてあります。中間報告を論文にした、昨年の崎村茂樹の6つの謎 >とも相通じる、20世紀史の中に埋もれた無名の情報戦犠牲者たちの発掘です。

2月22日のインド・デリー大学東アジア学部ブリジ・タンカ教授講演会旅人の記憶――日本とインドの近代は、来日中の中国社会科学院孫歌Sung-Guu)先生ら国際色豊かな研究者・学生のほか、インドに関心を持つ一般市民の方々もかけつけて、会場いっぱいの盛況でした。旅人の記憶」はパワーポイント原稿で保存します。昨年の成果、花伝社 論集情報戦の時代ーーインターネットと劇場政治』、『情報戦と現代史ーー日本国憲法へのもうひとつの道について、『図書新聞』編集長米田綱路さんが、長文の書評を書いてくれました(第2859号、2008年2月23日)。「モスクワ、ベルリン、日本をまたぐ20世紀情報戦の人的ネットワークを解明」「『疑心暗鬼の政治学』にからめとられながら、『大義』に生きた人びとの系譜」ですって。よく読んでいただき多謝。続く情報戦のなかの『亡命』知識人ーー国崎定洞から崎村茂樹まで」20 世紀メディア研究所インテリジェンス 』誌第9号、2007/11,紀伊国屋書店)グローバルな地球社会のナショナルな国家」(尾崎行雄記念財団『世界と議会』第518号、2007年11月)はアップ済み。図書館「ネチズンカレッジ」 学術論文データベ ースに、宮内広利さん「世界史の最初と最後」を新規アップしました。宮内さんにはこれまでも力作を寄せていただいていますが、その最新版です。 学術論文データベ ースの私の論文●加藤哲郎「日本におけ る『市民社会』概念の受容と展開」(2006.1)と●周初(淵邊朋広・日本 語版監修)「第一部 台湾における市民社会の形成と民主化」(2006.1)が、北京大学国際関係学院の梁雲祥印紅標両先生と の連絡がとれて、かってトヨタ財団の助成を得て行った共同研究華人地域における市民社会の形成と民主化』の全体を、 ●梁雲 祥(北京大学国際関係学院)「序章 市民社会と民主化の概念及び理論」 (2007.10)、●梁雲祥(北京大学国 際関係学院)「第二部 シンガポールの民主化」(2007.10)、●印紅標(北京大学国 際関係学院)「第三部 香港市民社会の発展と民主化」(2007.10)の3つの論文 が追加され、日本語インターネット版一書の体裁にまとまりました。この内容を、北京大学で英語で講演してきました。ジョルダンサンドさん寄稿「アメリカよりみた 『靖国問題』−ドーク氏に反論する」も入っていますが、高坂邦 彦さん「筐底拾遺」中「戦前 日本の外交評論と憲法解釈 ―清澤洌と植原悦二郎―評伝・植原悦二郎 」「評伝 ・清澤洌」は、再びつながりました。情報戦のビギナー向けに渡辺雅男・渡辺治 編『「現代」という環境』(旬報社)所収の講演「インターネット ーー情報という疑似環境」をどうぞ。昨年アップした論文「グ ローバリゼーションと国民国家」(2005年社会理論学会第13回大会報告)、岩波書店から昨年3月に刊行された慶應大学経済学部公開講座の記録、松村高夫・高草木光 一編『連続講義 東アジア 日本が問われていること、『情況』5/6月号のインタビュー「ポスト国民国家 時代における労働市場の変容と男性性」等もご笑覧を。

  『エコノミスト』誌 連載書評「歴史書の棚」は、4月15日号の、「今さらマルクス? 今こそマルクス?」と題した佐藤優『私のマルクス』(文藝春秋)寺出道雄『山田盛太郎 マルクス主義者の知られざる世界』(日本経済評論社)がアップされています。3月18日号の、城戸久枝『あの戦争から遠く離れて 私につながる歴史をたどる旅』(情報センター出版局)梁世勲『ある韓国外交官の戦後史 旧満州「新京」からオスロまで』(すずさわ書店)を「旧満州の記憶をめぐる、日・中・韓国人の落差」、2月18日号の、袖井林二郎『アーサー・シイク 義憤のユダヤ絵師』(社会評論社)三宅正樹『スターリン、ヒトラーと日ソ独伊連合構想』(朝日新聞社)を取り上げた「今こそ真剣に向き合うべき、世界大戦期日本外交」、1月21日号の、ピーター・バーク『時代の目撃者』(諸川春樹訳、中央公論美術出版)松村高夫・矢野久編著『大量虐殺の社会史 戦慄の20世紀』(ミネルヴァ書房) の組み合わせでの「イメージがつくる歴史の虚像と実像」、昨年12月18日新年特大号の「大連立の仕掛け人? うわさの新聞人の自伝」として渡邉恒雄『君命も受けざる所あり』(日本経済新聞出版社)菊池清麿『国境の町 東海林太郎とその時代』(北方新社)、11月20日号の「研究に定年はない、大家の健筆に脱帽」と題した今井清一『横浜の関東大震災』(有隣堂)藤田勇『自由・民主主義と社会主義 1917−1991』(桜井書店)等もアップしてあります。10月23日号の「ナショナリズムの罠とエスペラントの希望」の梅森直之編著『ベネディクト・アンダーソン グローバリゼーションを語る』(光文社新書)田中克彦『エスペラント 異端の言語』(岩波新書)、などと共にどうぞ。長文書評は、新年に社会思想史学会年報『社会思想史研究』第31号(2007年)に寄せた西川正雄『社会主義インターナショナルの群像 1914-1923』(岩波書店)図書館に入れたところで、残念ながら西川教授の訃報で、追悼文を加えました。追悼文をもう二つ、元同志社大学人文科学研究所長田中真人さん追悼田中真人さんの学風と鮒寿司」を同志社大学『キリスト教社会問題研究』第56号(2008年2月)に発表し、さらに追悼会用の別文田中真人さんが逝って、遺された者は…」も加えアップしました。栗木安延さん追悼文「『熟練工』』栗木安延さんを偲ぶ」も、このたび7回忌の「偲ぶ会」とのことで、バージョンアップしました。ついでに図書館特別室に入れていなかった廣松渉さん、森安達也さん追悼(『国民国家のエルゴロジー・あとがき』末尾)もアップ。廣松さん、森安さん西川さん田中真人さんと話し合った歴史学方法論が面白くなってきたので、ジョナサン・ハスラム『誠実という悪徳 E.H.カー 1892−1982』(現代思潮新社)にも書評で挑戦。『週刊読書人』2月1日号に掲載されました。

 恒例で、今年3月に卒業した一橋大学加藤ゼミ08卒業学士論文を新規アップ。新入生用に、インターネット上では、「 ナレッジステーション 」に、丸山真男『日本の思想』、デーヴィッド・ヘルド『グローバル化とは何か』、斎藤純一『公共性』を政治学 ・おすすめ本」として挙げておきました。ただしIDE大学協会『IDE 現代の高等教育』第495号(2007年11月)に寄せた「大学ランキング一橋大学の取組み」は、3月31日朝日新聞記事「上位狙いか疑問視か 海外発『世界大学ランキング』」にあるように、「ネチズンカレッジ」とは別世界の話ですので、本サイトには収録しません。ただし、朝日新聞社『2009年版大学ランキング』に寄せた「大学教員のメディア発信 広告塔か、社会貢献か」は、一般性を持つエッセイですので新規アップ。一橋大学学生用には新学期講義案内も更新してあります。


「格差」の裏から「貧困」が見えてきた!
 

「大正生れ」のお年寄りは、

 大正生まれの俺たちは 今では後期高齢者  貰う年金あてにして   細々生きる身なれども

介護・医療と差し引かれ  そのうち末期高齢者  それでも生きるぞ なあお前

「昭和生れ」の若者たちは、

 働けど働けど 我がくらし楽にならざり ぢっと手を見る

2008.5.1   憲法記念日を前に、千葉県の蘇人生さんから、大正生れの歌の新バージョンが送られてきました。

大正生まれの俺たちは  今では後期高齢者  貰う年金あてにして   細々生きる身なれども
介護・医療と差し引かれ   そのうち末期高齢者   それでも生きるぞ なあお前  それでも生きるぞ なあお前
 
大正15年が1926年ですから、大正生れの皆さんは、すでに80歳を越えています。「後期高齢者」なんて75歳で区切る悪法ができたために、「末期高齢者」にされるんじゃないかと、本当に怒っています。かつて世界一だった一人当たりGDPがいまや世界18位まで沈没した落ち目の日本が、なお世界に誇れるランキング・トップ、それが平均寿命なんですが、日本政府は、かつてジャパン・アズ・ナンバーワンとまで言われた栄光の時代を築いた人々を、もう働けないからと切り捨て棄民にしようとしています。
あらためて大正生れの歌を想い出してみましょう。
 
1番 大正生まれの俺(おれ)たちは/明治の親父(おやじ)に育てられ/ 忠君愛国そのままに/お国のために働いて/ みんなのために死んでいきゃ/日本男子の本懐と/ 覚悟は決めていた/なあお前
2番 大正生まれの青春は/すべて戦争(いくさ)のただなかで/ 戦い毎(ごと)の尖兵(せんぺい)は/みな大正の俺たちだ/ 終戦迎えたその時は/西に東に駆けまわり/ 苦しかったぞ/なあお前
3番 大正生まれの俺たちにゃ/再建日本の大仕事/ 政治経済教育と/ただがむしゃらに40年/ 泣きも笑いも出つくして/やっとふりむきゃ乱れ足/ まだまだやらなきゃ/なあお前
 

  数年前に、この曲の作詞作曲者小林朗さんにお会いしてインタビューした時、私にとって一番ショックだったのは、小林さんご自身の口から「私たちは、戦争の一番の犠牲者なんですよ」とお聞きしたことでした。「大正生れ」──1912−25年生まれの人々は、敗戦時に20歳ー35歳、日本本土でも植民地朝鮮・台湾でも、アジア・太平洋戦争の最大の犠牲者でした。同世代の多くの友人が、青春ばかりでなく生命を奪われました。死との背中合わせを体験し、生き残ったこと自体が好運でした。 それが戦後復興から高度経済成長を第一線で担い、ようやく悠々自適という時に「失われた十年」に突入し、年金が消されたりごまかされたり、「受益者負担」にさらされて医療費や介護保険の自己負担が増え、あげくのはてに「後期高齢者」という名で、少ない年金から保険料を天引きされているのです。「生活本位」の政治なら、「消えた年金」とこの老人医療問題を、徹底的に追及すべきです。ガソリン再値上げ反対や道路特定財源の一般財源化も重要ですが、保守王国山口2区衆院補選での民主党勝利には、あきらかに「老人たちの自民党離れ」が効いていました。前回参院選での民主党躍進・参院多数派獲得も、「農村の反乱・地方の自民党離れ」の結果でした。自民党は、支持率2割の悪役福田内閣に悪法・不人気政策を次々に実行させ、使い捨てる覚悟のようです。野党は、国会駆け引きの戦術よりも、「生活」の中身を深く分析し、政策を対置すべきです。

 生活」で困っているのは、「大正生れ」のお年寄りばかりではありません。昨4月30日『朝日新聞』に、わかりやすいグラフが載りました。「格差」ではなく「貧困」という活字が、久しぶりで新聞のトップを飾りました。「39歳、全財産100円」「細切れ雇用、食いつなぐ生活」という記事で、2面の「職求め、坂道を転がる日々」「32歳、脱・生活保護やってみる」に続き、「日本、貧困率ワースト2」ーーちなみにワースト・ワンは、新自由主義世界の盟友アメリカですーーの図表が出ています。NHKのワーキング・プアに触発されて、朝日新聞は、湯浅誠さんの「すべり台社会」を使い、政府の「再チャレンジ」政策を批判したようです。こうしたルポルタージュ記事は貴重です。年収200万円以下1000万人、生活保護100万世帯のリアルな「生活」を、ぜひこれからも報道してほしいものです。ただ、それをすぐに新しい言葉や流行語で説明するのではなく、ちょっと立ち止まって、深く掘り下げてほしいものです。

 グーグルにちょっと「働けど」と入れてみましょう。時ならぬ石川啄木ブームです。無論、『一握の砂』の次の歌が、ネット上に氾濫しているのです。

 働けど働けど 猶 我が生活(くらし) 楽にならざり ぢっと手を見る
 work after work  life never be well  I stare at my hands

実は、本サイトのウェブマスターは、石川啄木と同郷で、高校の後輩でもあります。ただしある時期から、啄木よりも、同じく高校の先輩である宮沢賢治の方に惹かれるようになりました。「過労死とサービス残業の政治経済学」を通じて、「エルゴロジーの政治学」を志した頃からです。その頃から、日本では非正規雇用が増え始め、いまや全労働力人口の3分の1を占めるにいたりました。その頃マスコミは、「フリーター」という英独混合の新日本語で、自発的に企業社会から離れる若者たちを、むしろあおっていました。かつて経済学の中心論点であった「貧困」や「失業」や「階級」は忘れられていきました。21世紀に入ると「ニート」というイギリス・ブレア政権御用達の新語が輸入され、やがて「フリーター」と同様に、官庁用語としても使われるようになりました。そのさい奇妙なことに、内閣府と厚生労働省では定義が異なり、したがって社会実情データ図録にあるように、「フリーター」や「ニート」の数も、両官庁で異なるものとなりました。「格差」の語は、1950年代から公文書でも使われてきましたが、当初は生計費に占める食費の割合=エンゲル係数で計られる平均的「生活水準」からの乖離、「所得格差」を意味していました。やがて経済成長で「生活水準」が向上すると、60年代末には「3種の神器(テレビ、冷蔵庫、洗濯機)」から「3C(カラーテレビ、クーラー、マイカー)」へと広がった「耐久消費財の普及度」で語られるようになり、70年代の「一億総中流」「モノの豊かさから心の豊かさへ」「エンゲル係数からエンジェル係数へ(生計費に占める教育費の割合)」を経て、一人当たり国民所得世界一のバブル時代には、「所得格差は解消したので資産格差」と謳われるようになりました。実際は、その時期からジニ指数は徐々に大きくなっていたのですが。その頃日本政府は、地価高騰による「資産格差」が「地域格差」を生み出しているとして、「豊かさ」の指標「住む」「費やす」「働く」「育てる」「癒す」「遊ぶ」「学ぶ」「交わる」と動詞化して8つの領域に分割し、富山県は所得はともかく「住む」にはいい、埼玉県は所得が多くて も「癒す」や「遊ぶ」が貧しい、と都道府県ランキングを発表しました。1990年代後半には、ちょうど5月の連休の頃、この「地域別豊かさランキング」が新聞のトップで発表され、なんとなく「格差」は「個性」「多様性」で癒されるものとなりました。もっとも毎年「豊かさ」最下位の埼玉県等からの抗議で都道府県ランキングは公表されなくなり、21世紀に入ると「情報格差」や「希望格差」の方に焦点が移ってきました。「マル金、マルビ」というバブル期の流行語もすっかり色褪せて、「貧困」を語ること自体が、古めかしく思われたものです。

  そこに、1990年代後半から急増した「非正規雇用」=パート、臨時・派遣労働を背景に、じわじわと古典的「所得格差」の拡大が認められ、「ワーキング・プア」というNHK特集から広がった言葉でフリーターが読み替えられ、ついに政府も弁明を余儀なくされる「プア=貧困」への注目がよみがえったのです。まだ政府は未公認ですが、石川啄木の「働けど働けど 我がくらし 楽にならざり ぢっと手を見る」が広く実感されるようになり、この間の選挙で自民・公明与党を敗北させるほどの政治的効果をもたらしているのです。ヨーロッパでは、「プレカリアート」や「サバルタン」や「マルチチュード」が、かつての「プロレタリアート」に代わる潜勢力として広がっています。中高年の年金と医療、若者の格差と貧困、これらこそ「生活本位」の原点です。5月3日は憲法記念日。「9条を世界へ」の大きなイベントもあります。同時に今年は、憲法25条をじっくり味わい考えたいものです。

日本国憲法第25条【生存権、国の生存権保障義務】
1 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

 

 崎村茂樹探求でのビッグニュースは、英語版の方でアップしました。ノーベル平和賞受賞者・元西独首相ウィリ・ブラント自伝中に、1944年亡命先ストックホルムでの崎村茂樹との出会いが出てくる、それも、スウェーデンのノーベル経済学賞・平和賞受賞者ミュルダール夫妻、戦後オーストリア首相クライスキーらの名前と一緒に、という衝撃的なもの。早速ご遺族に連絡したら、ブラントミュルダール夫妻の話は聞いたことはないが、ハイエクハマーショルドとは会ったことがあると亡父に聞いた、という話。戦後のノーベル賞受賞者5人が崎村茂樹の周辺に立ち現れました。本格的探求はこれから。学問的仕事では、工藤章・田嶋信雄編『日独関係史』全3巻の完結と、その第3巻「体制変動の社会的衝撃」に私が寄稿した巻頭論文「ヴァイマール・ドイツの日本人知識人」を公刊、全編力作揃いで、4月27日の『毎日新聞』に、山内昌之さんが、良く読み込んだ書評を書いてくれました(東大出版会、2008年3月)。4月10日に発売された加藤哲郎・国廣敏文編『グローバル化時代の政治学』(法律文化社)は、立命館大学を3月限りで退職した中谷義和さんを記念する論集ですが、私自身は「グローバル・デモクラシーの可能性ーー世界社会フォーラムと『差異の解放』『対等の連鎖』」を書いています。自分自身の編著ですが、一般書籍ですので、発売3か月後に本サイトにアップロードします。本サイトの目玉「国際歴史探偵」、特別研究室2008年の尋ね人」のテーマ、<上海におけるゾルゲ、尾崎秀実の周辺>についても中国である成果がありましたが、それは近日公開。引き続き、鬼頭銀一山上正義川合貞吉水野成船越寿雄河村好雄野澤房二副島隆起、新庄憲光大形孝平手嶋博俊坂田寛三日高為雄田中慎次郎らについて、情報をお持ちの方は、加藤katote@ff.iij4u.or.jpまたは渡部富哉watabe38@parkcity.ne.jpへお寄せください。「尋ね人」ページには、ちきゅう座スタディルームの渡部富哉さん連載1−1「ゾルゲ事件の真相究明から見えてくるもの」、1−2「尾崎秀実の10月15日逮捕は検事局が作り上げた虚構のひとつ」、2−1「ゾルゲ事件の真相究明から見えてくるもの 2」2−2「尾崎秀実は日本共産党員だった」をリンクし、「尾崎秀実の後継諜報員として摘発された野沢房二の孤高な闘い」についての渡部富哉さんの最新の研究にもとづく小論を入れてあります。中間報告を論文にした、昨年の崎村茂樹の6つの謎 >とも相通じる、20世紀史の中に埋もれた無名の情報戦犠牲者たちの発掘です。

2月22日のインド・デリー大学東アジア学部ブリジ・タンカ教授講演会旅人の記憶――日本とインドの近代は、来日中の中国社会科学院孫歌Sung-Guu)先生ら国際色豊かな研究者・学生のほか、インドに関心を持つ一般市民の方々もかけつけて、会場いっぱいの盛況でした。旅人の記憶」はパワーポイント原稿で保存します。昨年の成果、花伝社 論集情報戦の時代ーーインターネットと劇場政治』、『情報戦と現代史ーー日本国憲法へのもうひとつの道について、『図書新聞』編集長米田綱路さんが、長文の書評を書いてくれました(第2859号、2008年2月23日)。「モスクワ、ベルリン、日本をまたぐ20世紀情報戦の人的ネットワークを解明」「『疑心暗鬼の政治学』にからめとられながら、『大義』に生きた人びとの系譜」ですって。よく読んでいただき多謝。続く情報戦のなかの『亡命』知識人ーー国崎定洞から崎村茂樹まで」20 世紀メディア研究所インテリジェンス 』誌第9号、2007/11,紀伊国屋書店)グローバルな地球社会のナショナルな国家」(尾崎行雄記念財団『世界と議会』第518号、2007年11月)はアップ済み。図書館「ネチズンカレッジ」 学術論文データベ ースに、宮内広利さん「世界史の最初と最後」を新規アップしました。宮内さんにはこれまでも力作を寄せていただいていますが、その最新版です。 学術論文データベ ースの私の論文●加藤哲郎「日本におけ る『市民社会』概念の受容と展開」(2006.1)と●周初(淵邊朋広・日本 語版監修)「第一部 台湾における市民社会の形成と民主化」(2006.1)が、北京大学国際関係学院の梁雲祥印紅標両先生と の連絡がとれて、かってトヨタ財団の助成を得て行った共同研究華人地域における市民社会の形成と民主化』の全体を、 ●梁雲 祥(北京大学国際関係学院)「序章 市民社会と民主化の概念及び理論」 (2007.10)、●梁雲祥(北京大学国 際関係学院)「第二部 シンガポールの民主化」(2007.10)、●印紅標(北京大学国 際関係学院)「第三部 香港市民社会の発展と民主化」(2007.10)の3つの論文 が追加され、日本語インターネット版一書の体裁にまとまりました。この内容を、北京大学で英語で講演してきました。ジョルダンサンドさん寄稿「アメリカよりみた 『靖国問題』−ドーク氏に反論する」も入っていますが、高坂邦 彦さん「筐底拾遺」中「戦前 日本の外交評論と憲法解釈 ―清澤洌と植原悦二郎―評伝・植原悦二郎 」「評伝 ・清澤洌」は、高坂さんがこのたびホームペーページを閉鎖されると言うことで、惜しい作品ですがリンク切れになります。情報戦のビギナー向けに渡辺雅男・渡辺治 編『「現代」という環境』(旬報社)所収の講演「インターネット ーー情報という疑似環境」をどうぞ。昨年アップした論文「グ ローバリゼーションと国民国家」(2005年社会理論学会第13回大会報告)、岩波書店から昨年3月に刊行された慶應大学経済学部公開講座の記録、松村高夫・高草木光 一編『連続講義 東アジア 日本が問われていること、『情況』5/6月号のインタビュー「ポスト国民国家 時代における労働市場の変容と男性性」等もご笑覧を。

  『エコノミスト』誌 連載書評「歴史書の棚」は、4月15日号の、「今さらマルクス? 今こそマルクス?」と題した佐藤優『私のマルクス』(文藝春秋)寺出道雄『山田盛太郎 マルクス主義者の知られざる世界』(日本経済評論社)がアップされています。3月18日号の、城戸久枝『あの戦争から遠く離れて 私につながる歴史をたどる旅』(情報センター出版局)梁世勲『ある韓国外交官の戦後史 旧満州「新京」からオスロまで』(すずさわ書店)を「旧満州の記憶をめぐる、日・中・韓国人の落差」、2月18日号の、袖井林二郎『アーサー・シイク 義憤のユダヤ絵師』(社会評論社)三宅正樹『スターリン、ヒトラーと日ソ独伊連合構想』(朝日新聞社)を取り上げた「今こそ真剣に向き合うべき、世界大戦期日本外交」、1月21日号の、ピーター・バーク『時代の目撃者』(諸川春樹訳、中央公論美術出版)松村高夫・矢野久編著『大量虐殺の社会史 戦慄の20世紀』(ミネルヴァ書房) の組み合わせでの「イメージがつくる歴史の虚像と実像」、昨年12月18日新年特大号の「大連立の仕掛け人? うわさの新聞人の自伝」として渡邉恒雄『君命も受けざる所あり』(日本経済新聞出版社)菊池清麿『国境の町 東海林太郎とその時代』(北方新社)、11月20日号の「研究に定年はない、大家の健筆に脱帽」と題した今井清一『横浜の関東大震災』(有隣堂)藤田勇『自由・民主主義と社会主義 1917−1991』(桜井書店)等もアップしてあります。10月23日号の「ナショナリズムの罠とエスペラントの希望」の梅森直之編著『ベネディクト・アンダーソン グローバリゼーションを語る』(光文社新書)田中克彦『エスペラント 異端の言語』(岩波新書)、などと共にどうぞ。長文書評は、新年に社会思想史学会年報『社会思想史研究』第31号(2007年)に寄せた西川正雄『社会主義インターナショナルの群像 1914-1923』(岩波書店)図書館に入れたところで、残念ながら西川教授の訃報で、追悼文を加えました。追悼文をもう二つ、元同志社大学人文科学研究所長田中真人さん追悼田中真人さんの学風と鮒寿司」を同志社大学『キリスト教社会問題研究』第56号(2008年2月)に発表し、さらに追悼会用の別文田中真人さんが逝って、遺された者は…」も加えアップしました。栗木安延さん追悼文「『熟練工』』栗木安延さんを偲ぶ」も、このたび7回忌の「偲ぶ会」とのことで、バージョンアップしました。ついでに図書館特別室に入れていなかった廣松渉さん、森安達也さん追悼(『国民国家のエルゴロジー・あとがき』末尾)もアップ。廣松さん、森安さん西川さん田中真人さんと話し合った歴史学方法論が面白くなってきたので、ジョナサン・ハスラム『誠実という悪徳 E.H.カー 1892−1982』(現代思潮新社)にも書評で挑戦。『週刊読書人』2月1日号に掲載されました。

 新入生用に、インターネット上では、「 ナレッジステーション 」に、丸山真男『日本の思想』、デーヴィッド・ヘルド『グローバル化とは何か』、斎藤純一『公共性』を政治学 ・おすすめ本」として挙げておきました。ただしIDE大学協会『IDE 現代の高等教育』第495号(2007年11月)に寄せた「大学ランキング一橋大学の取組み」は、3月31日朝日新聞記事「上位狙いか疑問視か 海外発『世界大学ランキング』」にあるように、「ネチズンカレッジ」とは別世界の話ですので、本サイトには収録しません。一橋大学学生用には新学期講義案内も更新してあります。


保険料年金天引きの「後期高齢者医療」より

「老人医療無料化」こそ福祉では?

中文ばかりではない、Wikipediaの書き換えにご注意を!

2008.4.25  千葉県の蘇人生さんから、大正生れの歌の新バージョンが送られてきました。

大正生まれの俺たちは  今では後期高齢者  貰う年金あてにして   細々生きる身なれども
介護・医療と差し引かれ   そのうち末期高齢者   それでも生きるぞ なあお前  それでも生きるぞ なあお前


2008.4.15  久しぶりで、なだ・いなださん「老人党」のサイトに向かいました。5月4−6日に幕張メッセで開かれる「9条世界会議」への賛同がうたわれ、映画「靖国」上映中止問題でのスレッドはできていますが、4月15日から800万人、最終的に1300万人ものお年寄りについて、保険料の年金からの天引きが始まる、75歳以上の「後期高齢者医療制度」についてのスレッドはありません。2年も前の小泉内閣時代に決まっていたのに、6万3000人に新しい保険証が行き渡らないという準備のお粗末、高齢者は踏んだり蹴ったりで「棄民」化されようとしています。これは危ないと思って、わが「IMAGINE! イマジン」推奨の老人パワーサイト、吉田悟郎さん「ブナ林便り」伊豆利彦さん「日々通信」作田啓一さん「激高老人のブログとまわりましたが、高齢者医療での特別のコーナーはありません。一時ご病気だった1921年生まれの吉田悟郎さん「ブナ林便り」は相変わらずお元気に世界の時事情報を集めていらっしゃいますが、1922年生まれ作田啓一さん激高老人のブログ」が2007年10月で、1926年生まれ伊豆利彦さん「日々通信」が2008年2月で、更新がとまっているのが気になります。今こそ、「激高」すべき時なのに。いやむしろ、バーチャル政党である老人党や、「後期高齢者」自身に決起を促すのは酷な話で、政党や社会運動、若者たちこそが、お年寄りに代わって、政府に抗議し、制度をただすべき問題です。そもそも「後期高齢者」から改めて医療費を取ろうという算段が世界にも例がなく、北欧をはじめとする世界の福祉の趨勢に対する逆行です。宇沢弘文教授も警告するように、市場原理主義による医療崩壊です。75歳以上の老人たちの今日の日本社会形成への貢献を、この国の為政者たちは、せせこましいアメリカ式コスト・ベネフィット、受益者負担原則でどう「計算」したのでしょうか。大正生れの歌をどう聴いたのでしょうか。「高度成長で一生懸命働き、経済大国にしてくれてありがとう、はいご苦労さん、財政危機なので、保険料をいちいち払うのは面倒でしょうから、年金から天引きします」では、あんまりではないでしょうか。「棄民」制度とよぶゆえんです。

 かつて、1969年の美濃部東京都知事は、老人医療費を無料にすることで、日本における高齢社会化における「安心」への道を拓きました。それを、平成12年度版『厚生白書』「老人医療費無料化政策の功罪」は、「この制度導入後の高齢化の進展もあいまって、老人医療費は著しく増大し、各医療保険の財政を圧迫した」と総括して、介護保険と今回の「後期高齢者医療制度」が導入されました。新自由主義への転換です。この話には、後日談があります。平成12年度版『厚生白書』の「1969(昭和44)年に秋田県と東京都が老人医療費の無料化に踏み切ったことを契機に、各地の地方公共団体がこの動きに追随し、1972(昭和47)年には、2県を残して全国で老人医療費が無料化される状況となった」という記述が、昨2007年9月発表の平成19年版『厚生労働白書』では、「医療構造改革の目指すもの」の項で繰り返されました。しかし、歴史的事実としては、東京都や秋田県より早く、老人医療無料化を実現した自治体がありました。その自治体、岩手県沢内村(現西和賀町)は、「沢内村では、深沢晟雄村長が1960(昭和35)年に65歳以上を無料化、翌61年には60歳以上に拡大した。所得制限もなく「自分たちの命は自分たちで守る」姿勢が話題となり、当時の武見太郎日本医師会長も村を何度も視察。東京都などの無料化につながった」のが事実です。そこで岩手県西和賀町議会は、「営々と頑張った村の努力が否定されたようだ。誤解される表現を許すほど白書とはいいかげんなものなのか」と厚労省に抗議しました。政策立案の根拠となった「生命尊重の歴史」についての認識そのものが、いい加減だったのです。それに対する厚労省の回答は、「村でなくて、都道府県段階の無料化を取り上げたまで」というつれないもの。一言だけウェブ版で補足されましたが、年金問題にも、医療費問題にも、道路特定財源問題の基底にも、こういう歴史認識・現状認識のいい加減さ、官僚的「計算」の錯誤が横たわっているのです。

 新学期が始まって、ゼミ選考やオリエンテーションで、あっという間に2週間。締切原稿を積み残したまま、たちまち更新を迎えました。前回中国紀行文で述べた、本「ネチズンカレッジ」がホテルのLANで検閲され開けなかった体験談、いろいろ反響があり、考えさせられました。私のサイトだけではないと例示した、1千万ヒットを越す超人気ブログ「世に倦む日日」さんは、4月2日のブログで、チベット暴動を論じた3月に入って急に中国からのアクセスが減ったと報告しています。有田芳生さんの「酔醒漫録」も、4月8日のブログで、テレサ・テンを描いた著書『私の家は山の向こう』が中国本土に届かなかった体験をまじえ、「ネット言論への見えない介入を許すな!」と言及されました。中国におけるインターネット規制は、たんに検閲や削除だけでなく、世界中へのサイトへの侵入脅し、書き換えを含む深刻なもののようです。前回、Wikipedia中文版は、台湾製だから見られないと書きましたが、どうやら米国など今や世界中に在住する在外中国人も参加できるオープンソース百科事典だからこそ、中国本土では、その存在そのものを否定されているらしいです。もっとも「上海からの雑文」さんによると、2006年11月15日に、日本語版・中文版Wikipediaにアクセスできたとあります。「中国を翔ける/海外生活マニュアル」さんには、同じ2006年の「 インターネット規制が緩和??-中国インターネット事情 」という記事があり、「Wikipediaと中国の動き」が、次のように整理されています。

2001年1月15日:Wikipediaプロジェクトが正式始動。
2002年10月:Wikipediaに初めて中国語で書かれた項目が掲載。
2004年6月2〜21日:中国が初めてWikipediaを遮断。その後、中国語版Wikipediaの新規ユーザー、項目、編集の数は6カ月以上の間急減した。
同年9月23〜27日:Wikipediaが中国の一部ユーザーから利用できなくなるか、不安定になった。
2005年10月19日:中国からWikipediaのあらゆる記事にアクセスできなくなった。
2006年10月10日:中国でのWikipediaへのアクセスが一部解禁されたが、中国語版にはまだアクセスできない状態。 

 その後2006年末に、「さくらインターネット創業日記」さんに「また中国からウィキペディア(Wikipedia)が見れなくなった」という記事が載っています。2007年8月には、「Wikipedia創設者が検閲を解除させるために中国へ直談判に」という記事がありますが、その結果はわかりません。最新の情報では、「中国リアルIT事情」さんに、「中国で先週からWikipediaが見れるようになった」という報告がありますが、そこでリンクされている同じ2008年4月8日のロイター電には、「中国語版Wikipediaはまだアクセス制限されており、英語版でも「チベット」や「天安門広場」にはアクセスできない」とあり、「北京と上海のインターネットユーザーは4月5日にWikipedia英語版にアクセスできることを確認したが、中国語版はまだ制限されている。」「「ヨハン・セバスチャン・バッハ」「点心」などの言葉をランダムに検索してみると英語版の項目が見つかったが、チベットなどの政治的に微妙な言葉を検索すると、ブラウザがインターネットにつながらないというメッセージが表示された。先に国際オリンピック委員会(IOC)の調査官は北京の五輪開催者に、2008年オリンピックの間はインターネットをオープンにしなければならず、ネットの遮断は開催国に「不名誉を与える」と伝えた。社会の不満を刺激したくない中国政府は、メディアを厳しく監視し、反政府的な意見が生じる可能性のある人気サイトやフォーラムを頻繁に遮断、検閲している」とあります。やはり中国では、読めないようです。その代わり、中国には自家製「wikipediaまがい」があり、そこで中国政府公認「百科事典」が作られているらしいことがわかりました。一つは「百度百科 全球最大中文百科全書」というもので、タイトルからして仰々しい「検閲付き中国版wikipedia」なそうです。もう一つ、日本語で中国人留学生が作ったらしい「中国情報局」というサーチエンジンがあり、そこに「中国情報局・Wikipedia記事検索 」というページがあります。そこに「チベット」と入れるとびっくり、中国政府公認の「外交部、チベットに関する欧州議会決議に反対 」「聖火リレー妨害の瞬間、写真を大量配信」「北京五輪:各国の政府要員が北京五輪への支持表明」と言った記事だけが検索で出てきます。

 その「公認ニュース」中に、2008年4月9日付けで「ダライ・ラマ14世が毛沢東に送った電報を公開」 とあるので見てみると、「中国国家档案局(資料局)は7日、中央档案館の所蔵する「ダライ・ラマ14世が『取り決め』支持を表して毛沢東主席に送った電報」を公開した。ダライ・ラマ14世は電報の中で「西蔵(チベット)平和的解放の方法に関する取り決め」への明確な支持を表明し、「毛主席と中央政府の指導のもとで祖国領土主権の統一を守る」ことへの意欲を示していた」とあります。時事情報だけではなく、歴史資料をも独占して、都合のいいものだけを小出しにする例の手法です。現代史研究にたずさわるものにとっては、悲しい現実です。なぜなら、「中国国家档案局(資料局)管轄の中央档案館(公文書館)の所蔵する」史資料中にこそ、例えば本サイトの目玉「国際歴史探偵」の特別研究室2008年の尋ね人」のテーマ、<上海におけるゾルゲ、尾崎秀実の周辺>についても、鬼頭銀一山上正義川合貞吉水野成船越寿雄河村好雄野澤房二副島隆起、新庄憲光大形孝平手嶋博俊坂田寛三日高為雄田中慎次郎らについても、最も貴重で確実な史資料があるはずですが、そこは、私たち外国人研究者ばかりでなく、中国の研究者もほとんどアクセスできない聖域になっているのです。

 そんなWikipediaの現在をちょっと覗いたら、すごい増殖ぶりです。「よりオープンでよりカジュアルな百科事典」になって、使用言語は253、項目数は約700万、日本語版も50万項目まで増えています。深刻なのは、英語版や日本語版のWikipedia記事が、たぶん中国のどこかから、政治的に書き換えられている疑いがあることです。実はこの「Wikipediaの記事書き換え」問題、現代情報戦の主舞台の一つです。Wikipediaの編集履歴を調べるツール「Wikiscanner」を使った調査では、「これまでに、CIAやFBIといった米国の政府機関、イスラエル、オーストラリア、南アフリカなどの外国政府、国連などの国際機関、米共和党、米民主党などの政党組織、BBC、ロイター通信社、、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、、フォックスニュース、アルジャジーラなどの大手マスコミ、マイクロソフト、キャタピラー、フォード、任天堂、ソニー、トヨタといった大企業など、様々な組織が編集合戦を繰り広げていたことが判明している」と出ています。日本語でも、山谷えり子参院議員の項目の書き換えや、総務省、文部科学省、宮内庁等行政機関による行政に批判的な記述を削除する書き換えが問題になりました。「情報操作による世論誘導」といわれても仕方ありませんね。あの梅田望夫さんの新著『ウェブ時代をゆく』(ちくま新書)でも、「不特定多数を信頼する」非営利プロジェクト「ウィキペディアのリーダーシップ」が論じられています。ネチズンの皆さん、せっかくのオープンソース百科事典です。気になるところはチェックして、どんどん改善していきましょう。英語版のように、執筆参加者が増えれば増えるほど信頼性が高まるような、プラス・サムなかたちにしたいものです。

 崎村茂樹探求でのビッグニュースは、英語版の方でアップしました。ノーベル平和賞受賞者・元西独首相ウィリ・ブラント自伝中に、亡命先ストックホルムでの崎村茂樹との出会いが出てくる、それも、スウェーデンのノーベル経済学賞・平和賞受賞者ミュルダール夫妻、戦後オーストリア首相クライスキーらの名前と一緒に、という衝撃的なもの。詳しくは、もう少し調べてから。学問的仕事では、工藤章・田嶋信雄編『日独関係史』全3巻の完結と、その第3巻「体制変動の社会的衝撃」に私が寄稿した巻頭論文「ヴァイマール・ドイツの日本人知識人」を公刊、全編力作揃いです(東大出版会、2008年3月)。4月10日に発売された加藤哲郎・国廣敏文編『グローバル化時代の政治学』(法律文化社)は、立命館大学を3月限りで退職した中谷義和さんを記念する論集ですが、私自身は「グローバル・デモクラシーの可能性ーー世界社会フォーラムと『差異の解放』『対等の連鎖』」を書いています。自分自身の編著ですが、一般書籍ですので、発売3か月後に本サイトにアップロードします。本サイトの目玉「国際歴史探偵」、特別研究室2008年の尋ね人」のテーマ、<上海におけるゾルゲ、尾崎秀実の周辺>についても中国である成果がありましたが、それは近日公開。引き続き、鬼頭銀一山上正義川合貞吉水野成船越寿雄河村好雄野澤房二副島隆起、新庄憲光大形孝平手嶋博俊坂田寛三日高為雄田中慎次郎らについて、情報をお持ちの方は、加藤katote@ff.iij4u.or.jpまたは渡部富哉watabe38@parkcity.ne.jpへお寄せください。「尋ね人」ページには、ちきゅう座スタディルームの渡部富哉さん連載1−1「ゾルゲ事件の真相究明から見えてくるもの」、1−2「尾崎秀実の10月15日逮捕は検事局が作り上げた虚構のひとつ」、2−1「ゾルゲ事件の真相究明から見えてくるもの 2」2−2「尾崎秀実は日本共産党員だった」をリンクし、「尾崎秀実の後継諜報員として摘発された野沢房二の孤高な闘い」についての渡部富哉さんの最新の研究にもとづく小論を入れてあります。中間報告を論文にした、昨年の崎村茂樹の6つの謎 >とも相通じる、20世紀史の中に埋もれた無名の情報戦犠牲者たちの発掘です。

2月22日のインド・デリー大学東アジア学部ブリジ・タンカ教授講演会旅人の記憶――日本とインドの近代は、来日中の中国社会科学院孫歌Sung-Guu)先生ら国際色豊かな研究者・学生のほか、インドに関心を持つ一般市民の方々もかけつけて、会場いっぱいの盛況でした。旅人の記憶」はパワーポイント原稿で保存します。昨年の成果、花伝社 論集情報戦の時代ーーインターネットと劇場政治』、『情報戦と現代史ーー日本国憲法へのもうひとつの道について、『図書新聞』編集長米田綱路さんが、長文の書評を書いてくれました(第2859号、2008年2月23日)。「モスクワ、ベルリン、日本をまたぐ20世紀情報戦の人的ネットワークを解明」「『疑心暗鬼の政治学』にからめとられながら、『大義』に生きた人びとの系譜」ですって。よく読んでいただき多謝。続く情報戦のなかの『亡命』知識人ーー国崎定洞から崎村茂樹まで」20 世紀メディア研究所インテリジェンス 』誌第9号、2007/11,紀伊国屋書店)グローバルな地球社会のナショナルな国家」(尾崎行雄記念財団『世界と議会』第518号、2007年11月)はアップ済み。図書館「ネチズンカレッジ」 学術論文データベ ースに、宮内広利さん「世界史の最初と最後」を新規アップしました。宮内さんにはこれまでも力作を寄せていただいていますが、その最新版です。 学術論文データベ ースの私の論文●加藤哲郎「日本におけ る『市民社会』概念の受容と展開」(2006.1)と●周初(淵邊朋広・日本 語版監修)「第一部 台湾における市民社会の形成と民主化」(2006.1)が、北京大学国際関係学院の梁雲祥印紅標両先生と の連絡がとれて、かってトヨタ財団の助成を得て行った共同研究華人地域における市民社会の形成と民主化』の全体を、 ●梁雲 祥(北京大学国際関係学院)「序章 市民社会と民主化の概念及び理論」 (2007.10)、●梁雲祥(北京大学国 際関係学院)「第二部 シンガポールの民主化」(2007.10)、●印紅標(北京大学国 際関係学院)「第三部 香港市民社会の発展と民主化」(2007.10)の3つの論文 が追加され、日本語インターネット版一書の体裁にまとまりました。この内容を、北京大学で英語で講演してきました。ジョルダンサンドさん寄稿「アメリカよりみた 『靖国問題』−ドーク氏に反論する」も入っていますが、高坂邦 彦さん「筐底拾遺」中「戦前 日本の外交評論と憲法解釈 ―清澤洌と植原悦二郎―評伝・植原悦二郎 」「評伝 ・清澤洌」は、高坂さんがこのたびホームペーページを閉鎖されると言うことで、惜しい作品ですがリンク切れになります。情報戦のビギナー向けに渡辺雅男・渡辺治 編『「現代」という環境』(旬報社)所収の講演「インターネット ーー情報という疑似環境」をどうぞ。昨年アップした論文「グ ローバリゼーションと国民国家」(2005年社会理論学会第13回大会報告)、岩波書店から昨年3月に刊行された慶應大学経済学部公開講座の記録、松村高夫・高草木光 一編『連続講義 東アジア 日本が問われていること、『情況』5/6月号のインタビュー「ポスト国民国家 時代における労働市場の変容と男性性」等もご笑覧を。

  『エコノミスト』誌 連載書評「歴史書の棚」は、4月15日号の、「今さらマルクス? 今こそマルクス?」と題した佐藤優『私のマルクス』(文藝春秋)寺出道雄『山田盛太郎 マルクス主義者の知られざる世界』(日本経済評論社)を新規アップ。3月18日号の、城戸久枝『あの戦争から遠く離れて 私につながる歴史をたどる旅』(情報センター出版局)梁世勲『ある韓国外交官の戦後史 旧満州「新京」からオスロまで』(すずさわ書店)を「旧満州の記憶をめぐる、日・中・韓国人の落差」、2月18日号の、袖井林二郎『アーサー・シイク 義憤のユダヤ絵師』(社会評論社)三宅正樹『スターリン、ヒトラーと日ソ独伊連合構想』(朝日新聞社)を取り上げた「今こそ真剣に向き合うべき、世界大戦期日本外交」、1月21日号の、ピーター・バーク『時代の目撃者』(諸川春樹訳、中央公論美術出版)松村高夫・矢野久編著『大量虐殺の社会史 戦慄の20世紀』(ミネルヴァ書房) の組み合わせでの「イメージがつくる歴史の虚像と実像」、昨年12月18日新年特大号の「大連立の仕掛け人? うわさの新聞人の自伝」として渡邉恒雄『君命も受けざる所あり』(日本経済新聞出版社)菊池清麿『国境の町 東海林太郎とその時代』(北方新社)、11月20日号の「研究に定年はない、大家の健筆に脱帽」と題した今井清一『横浜の関東大震災』(有隣堂)藤田勇『自由・民主主義と社会主義 1917−1991』(桜井書店)等もアップしてあります。10月23日号の「ナショナリズムの罠とエスペラントの希望」の梅森直之編著『ベネディクト・アンダーソン グローバリゼーションを語る』(光文社新書)田中克彦『エスペラント 異端の言語』(岩波新書)、などと共にどうぞ。長文書評は、新年に社会思想史学会年報『社会思想史研究』第31号(2007年)に寄せた西川正雄『社会主義インターナショナルの群像 1914-1923』(岩波書店)図書館に入れたところで、残念ながら西川教授の訃報で、追悼文を加えました。追悼文をもう二つ、元同志社大学人文科学研究所長田中真人さん追悼田中真人さんの学風と鮒寿司」を同志社大学『キリスト教社会問題研究』第56号(2008年2月)に発表し、さらに追悼会用の別文田中真人さんが逝って、遺された者は…」も加えアップしました。栗木安延さん追悼文「『熟練工』』栗木安延さんを偲ぶ」も、このたび7回忌の「偲ぶ会」とのことで、バージョンアップしました。ついでに図書館特別室に入れていなかった廣松渉さん、森安達也さん追悼(『国民国家のエルゴロジー・あとがき』末尾)もアップ。廣松さん、森安さん西川さん田中真人さんと話し合った歴史学方法論が面白くなってきたので、ジョナサン・ハスラム『誠実という悪徳 E.H.カー 1892−1982』(現代思潮新社)にも書評で挑戦。『週刊読書人』2月1日号に掲載されました。

 新入生用に、インターネット上では、「 ナレッジステーション 」に、丸山真男『日本の思想』、デーヴィッド・ヘルド『グローバル化とは何か』、斎藤純一『公共性』を政治学 ・おすすめ本」として挙げておきました。ただしIDE大学協会『IDE 現代の高等教育』第495号(2007年11月)に寄せた「大学ランキング一橋大学の取組み」は、3月31日朝日新聞記事「上位狙いか疑問視か 海外発『世界大学ランキング』」にあるように、「ネチズンカレッジ」とは別世界の話ですので、本サイトには収録しません。一橋大学学生用には新学期講義案内も更新してあります。


テレビは検閲され、Wikipediaを読めない国から、

ネグリの入国を拒否し『靖国』が上映できない国を見ると…

2008.4.1  これは、エープリル・フールではありません。実体験です。中国の上海・北京・長春を旅してきたのですが、その間ある世界的政治問題について、知ることができませんでした。外国人の宿泊するホテルでは、NHK衛星テレビも英語のCNNも見られます。台湾総統選挙アメリカ大統領選選挙の動きはわかりました。中国国内ニュースも、ちょうど全人代の最中で、大々的に報じられていました。ところが、チベット暴動関連報道が始まると、突然電波がとぎれるのです。停電かと思ってNHKの隣のハングル語放送にチャンネルを変えると、ちゃんと映ってます。NHKに戻すと映らず、しばらくすると突如復旧して、温家宝首相の「黒幕はダライ・ラマ」といった談話だけは映るのです。中国国民には、中国政府の公式発表や新華社電だけが伝えられる仕組みです。やむをえずインターネットで知ろうと、グーグルやヤフーの日本語ニュースをあたると、こちらは何とか読めます。ところがチベット独立運動のことを知ろうとウィキペディアで調べようとすると、日本語グーグル検索で出てくるウィキペディア・サイトが、一切アクセスできません。現地に長く滞在する日本人に聞くと、そもそもウィキペディア中文版「維基百科:自由的百科全書」は台湾製で、中国ではないことになっており、日本語版も英語版も見られないのだそうです。言葉の定義の国家的独占です。そのうえホテルのLAN接続プロバイダーは限定されていますから、一般サイトについても検閲があるようです。実は私の中国滞在中、本「ネチズンカレッジ」は一切見ることができませんでした。検索にはかかるのですが、ページが開きません。トップばかりではと、現代史研究の論文など個別ページの閲覧も試みましたが、一切出てきません。勤務先の大学サイトは開きましたが、そこから「ネチズンカレッジ」へもアクセスできません。私のサイトばかりではありません。有田芳生さんの「酔醒漫録」も、最近1千万ヒットを越えた「世に倦む日日」さんも開きません。言論の自由は、地球民主主義の原点なのに。

 2005年上海のホテルでは、確かに本サイトを見ることも更新することもできましたから、なぜチェックされたかの、心当たりはあります。一昨年から昨年の崎村茂樹の6つの謎についての情報収集です。日本人山口隆一とイタリア人アントニオ・リヴァが死刑になった「1950年毛沢東暗殺未遂事件」についての情報提供を求め、その中間報告を論文にして公開したからでしょう。有田芳生さん「酔醒漫録」の場合は、テレサ・テンについての情報満載ですから、これも中国政府にとっては、見てもらいたくないものでしょう。「世に倦む日日」さんは、リアルタイムでチベット暴動問題での鋭い分析を連日掲載しているからでしょう。ただし、すべての時事サイトが検閲されているわけではありません。五十嵐仁さんの「転成仁語」や日本共産党の「しんぶん赤旗」は普通に毎日読めますし、反中国のナショナリスティックな群小サイトやブログの多くも、ちゃんとつながります。また。北京や上海の友人たちの中には、勤務先や自宅から私のサイトを見て会ってくれた人もいますから、ウィキペディアのような完全検閲ではなく、外国人客の泊まる大きなホテルにLANを提供する特定のプロバイダー向け検閲のようです。とすると、わが「ネチズンカレッジ」や有田芳生さん「酔醒漫録」、「世に倦む日日」さんは、中国政府から「影響力ある要注意日本語サイト」と認定された(?)、インターネット・ジャーナリズムの光栄ある情報戦サイトになるのかもしれません(早速ログチェックした「世に倦む日日」さんによると、3月に入って急に中国からのアクセスが減ったそうです)。本サイトを見ている中国大陸在住の皆さん、もしも勤務先や自宅からも見られなくなったら、何らかの方法で連絡ください。

 とはいっても、中国には言論の自由が全くなく、チベット暴動弾圧は人権抑圧だから直ちに北京オリンピックをボイコットせよ、とここで訴えるわけではありません。北京や上海の友人たちと話す限りでは、彼らはさまざまな方法で世界の情報を得る術を知ってますし、かつてよりは言論状況もよくなったといいます。共産党支配の正統性と天安門事件などいくつかのタブーに触れない限りでは、いわゆる西側情報も、非マルクス主義の思想・学問も、むしろ氾濫しています。文化大革命の問題も、歴史的・学術的に取り上げられるようになったようです。夏の北京オリンピック中は、『プレイボーイ』誌を解禁し販売許可する、という話しも聞きました。北京の空気は汚い、食糧は危険だといわれますが、過去数回の訪問時に比べれば、自動車は増えたものの、河川も公園も格段に綺麗になり、王府井のマーケットは、外国製品で溢れています。毎日中国料理で過ごしましたが、別に食あたりもありませんでした。上海や北京ばかりでなく、旧偽満州国であった東北地方の長春も含めて、工業化・近代化は急速に進み、少なくとも経済発展では日本を凌駕する勢いがあるのも事実です。世界的なドル安も、アメリカと心中して沈没しかねない日本とは違って、中国はユーロにシフトすることで、リスクを分散し緩和しているようです。台湾総統選挙にチベット暴動が影響するかの観測が日本のネット情報にはありましたが、中国側は国民党勝利に冷静に対応し、テレビも事実はちゃんと報道していました。チベット暴動報道で言うと、実は検閲された日本のNHK衛星ニュースは軟弱で、CNN/BBCなど欧米メディア発の情報と中国政府の情報を並列で報じるため、その欧米発の中国批判報道、ダライ・ラマ記者会見等の特定情報部分がカットされたかたちです。CNNなどは、ニュースは検閲され北京ではこの部分が報道されていない、と繰り返し衛星テレビで流していますから、中国側も全面カットができず、時々中断しても欧米メディアの厳しく批判的な論調は視聴者にわかります。むしろ、毒入り餃子事件が尾を引き、胡錦濤主席来日延期G8洞爺湖サミットを気にして優柔不断な日本の対応が、外国報道の中では目立ちます。ドイツ首相フランス外相のオリンピック開会式ボイコット発言は英語ニュースで流され、それを私から聞いた中国人の友人たちは、深刻な問題と受けとめたようでした。

おまけに中国旅行中に、かの『帝国』『マルチチュード』の著者アントニオ・ネグリが、日本政府から「ペルソナ・ノン・グラータ」(好ましからざる人物)として入国を拒否されたというニュースが、メールで届きました。ネグリは過去5年間に中国や韓国を含む22か国に入国していますから、この点では、日本は中国以下の不自由国です。それも国際文化会館が、牛場記念フェローとして公的に招聘していたものです。洞爺湖G8サミットでの「反グローバリズム」運動への影響を気にしてのことでしょうが、実に狭い了見で、世界への恥さらしです。アントニオ・ネグリ『帝国』の議論には、も部分的に異論を述べていますが、同時に刺激的な学問的問題提起としての重要性は、十分評価できます。だからこそ、日本の社会科学・人文学の最先端の人々が集い、京大東大東京芸術大での学術講演会を企画していたのに、直接の対話ができなくなったことはきわめて遺憾です。日本政府の措置に、世界中から抗議の声があがっています。ネグリのメッセージも届いています。

日本の友人たちへの手紙
 皆さん、 まったく予期せぬ一連の事態が出来し、私たちは訪日をあきらめざるを得なくなりました。この訪日にどれほどの喜びを覚えていたことか! 活発な討論、知的な出会い、さまざまな交流と協働に、すでに思いをめぐらせていました。
 およそ半年前、私たちは国際文化会館の多大な助力を得て、次のように知りました。EU加盟国市民は日本への入国に際し、賃金が発生しないかぎり査証を申請する必要はない、と。用心のため、私たちは在仏日本大使館にも問い合わせましたが、なんら問題はありませんでしたし、完璧でした。
ところが2日前の3月17日(月)、私たちは予期に反して査証申請を求められたのです。査証に関する規則変更があったわけではないにもかかわらずです。私たちはパリの日本大使館に急行し、書類に必要事項をすべて記入し、一式書類(招聘状、イベントプログラム、飛行機チケット)も提示しました。すると翌18日、私たちは1970年代以降のトニの政治的過去と法的地位に関する記録をそれに加えて提出するよう求められたのです。これは遠い昔に遡る膨大な量のイタリア語書類であり、もちろん私たちの手元にもありません。そして、この5年間にトニが訪れた22カ国のどこも、そんな書類を求めたことはありませんでした。
飛行機は、今朝パリを飛び立ち、私たちはパリに残りました。大きな失望をもって私たちは訪日を断念します。
数カ月にわたり訪日を準備してくださったすべての皆さんに対し、私たちは申し上げたい。あなたたちの友情に、遠くからですが、ずっと感謝してきました。私たちはこの友情がこれからも大きくなり続けることを強く願っています。皆さんの仕事がどれほど大変だったかよく分かります。そして皆さんがどれほど私たちに賛辞を送ってくださっているかも。
パーティは延期されただけで、まもなく皆さんの元へ伺う機会があるだろう、と信じたい気持ちです。 友情の念と残念な思いを込めて……
 
2008年3月19日 パリにて                       ジュディット・ルヴェル アントニオ・ネグリ (訳 市田良彦神戸大学教授) 

もっとも、この点でも、インターネットは、新時代を創っています。私自身ネグリとの直接の対話は、2005年5月日仏学院での衛星テレビを通じての討論会でした。インターネットを通じての対談なら、簡単にでき、今ではyou tubeを通じてビデオ画像でも配信できます。中国では見られませんでしたが、帰国してすぐに探したら、ネグリ招聘の中心になった神戸大市田良彦教授や東大姜尚中教授の画像入りビデオでの抗議が入手できました。この意味でも日本政府は、時代錯誤の非民主的措置で、世界の笑いものになってしまいました。おまけに、在日中国人リー・イン監督の撮った文化庁助成、香港国際映画祭最優秀ドキュメンタリー映画「靖国 YASUKUNI」の上映中止も、エイプリル・フールではなさそうです。日本政府は、この間、インド洋の自衛鑑の給油ができなくなったら世界から孤立する、日銀総裁が空席になったら国際金融・株式市場が大混乱する、ガソリンの暫定税率がなくなると大変なことになる、と言ってきました。事実は、どうだったでしょうか。インド洋での米軍への給油は、イラク情勢にもアフガン復興にもほとんど影響せず、むしろアメリカ・ブッシュ政権向けの リップサービスで、なお闇に包まれた防衛省疑獄の舞台でイージス艦の奢りの源泉だったのではないかという疑惑を招いただけでした。日銀総裁は、私の帰国前に決着ついているかと思ったら政争の焦点になって空席でしたが、中国の政治経済研究者・ジャーナリストとの間ではほとんど話題にならず、金融不安も株安も、大きな変動はありません。暫定税率期限切れのガソリン値下げは、国民も織り込み済みなようで、私も明日あたり、ガソリン価格比較サイトGoGo GSをチェックした上で、安くなったスタンドを探そうかと思っています。要するに、世界経済・政治の中で日本の存在感はどんどん小さくなっており、世界金融や国際安全保障での影響力は低下しています。毒入り餃子問題さえ、日本国内薬品混入説の中国人の友人は「日本が中国の食品をボイコットしたって、中国の食品輸出先はいくらでもあり、大きな影響はない。むしろ自給率の低い日本の方が困るのでは」と豪語していました。象徴的だったのは、幾度か講演経験のある北京大学で、今回は政府管理学院(Department of Government)の政治学者の友人からゼミナー講演を頼まれたのですが、これまでは日本語で話して中国語訳だったのですが、今回は全部英語でやってくれ、ペーパーはいらないからパワーポイントを使ってくれと頼まれ、そのようにしたことでした。中国の最先端研究者の眼は、欧米との対等の議論に向かっており、エリート学生たちの留学希望先は圧倒的に欧米、カナダ、オーストラリアで、かつての日本語学習熱は完全に冷めています。まだ東北地方にはトヨタの工場が来るからと日本に関心を持って貰ったのが救いなくらいで、アメリカにとっても、中国にとっても、いまや日本は中継する必要のない国になりつつあります。そんな時に、ネグリの来日中止や『靖国』の公開中止は、心ある中国の若者たちにとって、日本は、いっそう魅力のない国と映るでしょう。アメリカは、アシスト創業者ビル・トッテンさんを、「ペルソナ・ノン・グラータ」としたとか。G8に向けて、外国人を選別し、国民監視体制が強まる動きが、加速しつつあります。

 実は訪中の目的であった歴史探偵と現地調査でも、いくつか重要な成果があったのですが、次回以降にします。崎村茂樹探求でのビッグニュースは、英語版の方でアップしました。学問的最新ニュースは、工藤章・田嶋信雄編『日独関係史』全3巻の完結と、その第3巻「体制変動の社会的衝撃」に私が寄稿した巻頭論文「ヴァイマール・ドイツの日本人知識人」が公刊されたことです。全編力作揃いです(東大出版会、2008年3月)。4月10日に発売される加藤哲郎・国廣敏文編『グローバル化時代の政治学』(法律文化社)は、立命館大学を3月限りで退職した中谷義和さんを記念する論集ですが、私自身は「グローバル・デモクラシーの可能性ーー世界社会フォーラムと『差異の解放』『対等の連鎖』」を書いています。自分自身の編著ですが、一般書籍ですので、発売3か月後に本サイトにアップロードします。本サイトの目玉「国際歴史探偵」、特別研究室2008年の尋ね人」のテーマ、<上海におけるゾルゲ、尾崎秀実の周辺>についても中国である成果がありましたが、それは近日公開。引き続き、鬼頭銀一山上正義川合貞吉水野成船越寿雄河村好雄野澤房二副島隆起、新庄憲光大形孝平手嶋博俊坂田寛三日高為雄田中慎次郎らについて、情報をお持ちの方は、加藤katote@ff.iij4u.or.jpまたは渡部富哉watabe38@parkcity.ne.jpへお寄せください。「尋ね人」ページには、ちきゅう座スタディルームの渡部富哉さん連載1−1「ゾルゲ事件の真相究明から見えてくるもの」、1−2「尾崎秀実の10月15日逮捕は検事局が作り上げた虚構のひとつ」、2−1「ゾルゲ事件の真相究明から見えてくるもの 2」2−2「尾崎秀実は日本共産党員だった」をリンクし、「尾崎秀実の後継諜報員として摘発された野沢房二の孤高な闘い」についての渡部富哉さんの最新の研究にもとづく小論を入れてあります。中間報告を論文にした、昨年の崎村茂樹の6つの謎 >とも相通じる、20世紀史の中に埋もれた無名の情報戦犠牲者たちの発掘です。

2月22日のインド・デリー大学東アジア学部ブリジ・タンカ教授講演会旅人の記憶――日本とインドの近代は、来日中の中国社会科学院孫歌Sung-Guu)先生ら国際色豊かな研究者・学生のほか、インドに関心を持つ一般市民の方々もかけつけて、会場いっぱいの盛況でした。旅人の記憶」はパワーポイント原稿で保存します。昨年の成果、花伝社 論集情報戦の時代ーーインターネットと劇場政治』、『情報戦と現代史ーー日本国憲法へのもうひとつの道について、『図書新聞』編集長米田綱路さんが、長文の書評を書いてくれました(第2859号、2008年2月23日)。「モスクワ、ベルリン、日本をまたぐ20世紀情報戦の人的ネットワークを解明」「『疑心暗鬼の政治学』にからめとられながら、『大義』に生きた人びとの系譜」ですって。よく読んでいただき多謝。続く情報戦のなかの『亡命』知識人ーー国崎定洞から崎村茂樹まで」20 世紀メディア研究所インテリジェンス 』誌第9号、2007/11,紀伊国屋書店)グローバルな地球社会のナショナルな国家」(尾崎行雄記念財団『世界と議会』第518号、2007年11月)はアップ済み。図書館「ネチズンカレッジ」 学術論文データベ ースに、宮内広利さん「世界史の最初と最後」を新規アップしました。宮内さんにはこれまでも力作を寄せていただいていますが、その最新版です。 学術論文データベ ースの私の論文●加藤哲郎「日本におけ る『市民社会』概念の受容と展開」(2006.1)と●周初(淵邊朋広・日本 語版監修)「第一部 台湾における市民社会の形成と民主化」(2006.1)が、北京大学国際関係学院の梁雲祥印紅標両先生と の連絡がとれて、かってトヨタ財団の助成を得て行った共同研究華人地域における市民社会の形成と民主化』の全体を、 ●梁雲 祥(北京大学国際関係学院)「序章 市民社会と民主化の概念及び理論」 (2007.10)、●梁雲祥(北京大学国 際関係学院)「第二部 シンガポールの民主化」(2007.10)、●印紅標(北京大学国 際関係学院)「第三部 香港市民社会の発展と民主化」(2007.10)の3つの論文 が追加され、日本語インターネット版一書の体裁にまとまりました。この内容を、北京大学で英語で講演してきました。ジョルダンサンドさん寄稿「アメリカよりみた 『靖国問題』−ドーク氏に反論する」も入っていますが、高坂邦 彦さん「筐底拾遺」中「戦前 日本の外交評論と憲法解釈 ―清澤洌と植原悦二郎―評伝・植原悦二郎 」「評伝 ・清澤洌」は、高坂さんがこのたびホームペーページを閉鎖されると言うことで、惜しい作品ですがリンク切れになります。情報戦のビギナー向けに渡辺雅男・渡辺治 編『「現代」という環境』(旬報社)所収の講演「インターネット ーー情報という疑似環境」をどうぞ。昨年アップした論文「グ ローバリゼーションと国民国家」(2005年社会理論学会第13回大会報告)、岩波書店から昨年3月に刊行された慶應大学経済学部公開講座の記録、松村高夫・高草木光 一編『連続講義 東アジア 日本が問われていること、『情況』5/6月号のインタビュー「ポスト国民国家 時代における労働市場の変容と男性性」等もご笑覧を。

  長文書評は『図書新聞』7月21日号掲載書評白 井久也編『米国公文書 ゾルゲ事件資料集』(社会評論社) に加えて、新年に社会思想史学会年報『社会思想史研究』第31号(2007年)に寄せた西川正雄『社会主義インターナショナルの群像 1914-1923』(岩波書店)図書館に入れたところで、残念ながら西川教授の訃報で、追悼文を加えました。追悼文をもう二つ、元同志社大学人文科学研究所長田中真人さん追悼田中真人さんの学風と鮒寿司」を同志社大学『キリスト教社会問題研究』第56号(2008年2月)に発表し、さらに追悼会用の別文田中真人さんが逝って、遺された者は…」も加えアップしました。栗木安延さん追悼文「『熟練工』』栗木安延さんを偲ぶ」も、このたび7回忌の「偲ぶ会」とのことで、バージョンアップしました。ついでに図書館特別室に入れていなかった廣松渉さん、森安達也さん追悼(『国民国家のエルゴロジー・あとがき』末尾)もアップ。廣松さん、森安さん西川さん田中真人さんと話し合った歴史学方法論が面白くなってきたので、ジョナサン・ハスラム『誠実という悪徳 E.H.カー 1892−1982』(現代思潮新社)にも書評で挑戦。『週刊読書人』2月1日号に掲載されました。『エコノミスト』誌 連載書評「歴史書の棚」は、3月18日号の、城戸久枝『あの戦争から遠く離れて 私につながる歴史をたどる旅』(情報センター出版局)梁世勲『ある韓国外交官の戦後史 旧満州「新京」からオスロまで』(すずさわ書店)を「旧満州の記憶をめぐる、日・中・韓国人の落差」と題してアップ。旧満州国を見る旅の予習の副産物です。2月18日号の、袖井林二郎『アーサー・シイク 義憤のユダヤ絵師』(社会評論社)三宅正樹『スターリン、ヒトラーと日ソ独伊連合構想』(朝日新聞社)を取り上げた「今こそ真剣に向き合うべき、世界大戦期日本外交」は、1月21日号の、ピーター・バーク『時代の目撃者』(諸川春樹訳、中央公論美術出版)松村高夫・矢野久編著『大量虐殺の社会史 戦慄の20世紀』(ミネルヴァ書房) の組み合わせでの「イメージがつくる歴史の虚像と実像」で同じ系列で、方法論づいています。昨年12月18日新年特大号の「大連立の仕掛け人? うわさの新聞人の自伝」として渡邉恒雄『君命も受けざる所あり』(日本経済新聞出版社)菊池清麿『国境の町 東海林太郎とその時代』(北方新社)、11月20日号の「研究に定年はない、大家の健筆に脱帽」と題した今井清一『横浜の関東大震災』(有隣堂)藤田勇『自由・民主主義と社会主義 1917−1991』(桜井書店)もアップしてあります。10月23日号の「ナショナリズムの罠とエスペラントの希望」の梅森直之編著『ベネディクト・アンダーソン グローバリゼーションを語る』(光文社新書)田中克彦『エスペラント 異端の言語』(岩波新書)、などと共にどうぞ。

 東京のサクラは満開で、新学期です。 新入生用に、インターネット上では、「 ナレッジステーション 」に、丸山真男『日本の思想』、デーヴィッド・ヘルド『グローバル化とは何か』、斎藤純一『公共性』を政治学 ・おすすめ本」として挙げておきました。ただしIDE大学協会『IDE 現代の高等教育』第495号(2007年11月)に寄せた「大学ランキング一橋大学の取組み」は、3月31日朝日新聞記事「上位狙いか疑問視か 海外発『世界大学ランキング』」にあるように、「ネチズンカレッジ」とは別世界の話ですので、本サイトには収録しません。一橋大学学生用には、2008年度ゼミナール案内を入れたほか、新学期講義案内も更新してあります。 


やっぱりニュースは消費され、消耗するもの、

防衛疑獄も年金問題も文民統制も「卒業」していいの?

2008.3.14   東京は暖かで、すぐサクラが咲いてもおかしくない陽気です。明日から中国で、しかも初めての旧「満州国」調査旅行の予定に加え、北京大学で 急遽「東アジアにおける市民社会」について報告することになったため、時間がとれません。前回分を残したマイナーチャンジに留め、帰国後に更新します。本当に前回見出しの通りで、「ロス疑惑」は続いていますが、自衛隊イージス艦関連のニュースはめっきり少なくなり、沖縄の少女暴行事件にいたっては全く見えなくなりました。変わりに登場した日銀総裁人事も、帰国する頃には何らかの決着にいたっているでしょう。二院制のもとで当然考え得る事態ですが、もっと生活に密着した法案だったら世論もついていくでしょうが、雲上人のたすきがけ人事阻止への野党のいやがらせ風に見えるのが難点。防衛省や国土交通省など、矛先が財務省に向いてほくそえんでいるかもしれません。何より、今ごろ解散・総選挙だったはずの昨年末までの「空気」はどうなったんでしょうか。「風」になる前に、年金問題も、道路税問題も、防衛費疑獄も文民統制案も、深刻な状況が露わになりつつある医療問題も、年度末が近づいて単位不足のまま「卒業」しそうです。こんな政治で、果たして「東アジア共同体」なんて可能なのか、中国では日本がどう見られているか、見てきます。

 この間長春の研究者たちと連絡をとって、「偽満州国」関係の資料収集は、一筋縄ではいかないことを痛感しました。長年の「国際歴史探偵」で、ロシア、アメリカ、ドイツ、メキシコ、インド、スウェーデンなど様々な国の史料館をまわりましたが、中国「档案館」は、やはりガードがかたいようです。別に日本人だからではなく、中国人研究者にとっても同様のようです。でもこうした問題では、慶應大学の松村高夫さんや早稲田大学の小林英夫さんらのグループが、現地の研究者と交流し粘り強い共同研究の中で第一次資料を発掘してきた実績があります。今回は、さしあたり、その可能性を探る下調べの旅になりそうです。ちょっとした心配。こうした旅のために換金せずに残してきたドルの価値が、どんどん下がっています。メディアでは1ドル百円を切る円高と騒がれていますが、円と元やユーロの関係では円が高くなってはいません。かつて唯一の世界通貨だった米ドルが減価している、ドル安です。日本の手持ち外貨準備は、ほとんど米国債といわれます。アメリカと一緒に心中し沈没つつある日本、外から見ると、その辺を確かめることができるでしょう。


"CHANGE"で若者が動くアメリカ、

ニュースとは、消費され、消耗するもの?

イージス艦も沖縄海兵隊も忘れてはいけない! 

2008.3.1  かつて週刊誌とワイドショーを独占した「ロス疑惑」、「疑惑の銃弾」が、一般紙の一面までを埋めています。一事不再理や国際刑事裁判の問題はありますが、自衛隊イージス艦の漁船衝突事件に比べて、どれほど重要な問題でしょうか。しかもそれで、2週間前までの大事件、沖縄の米軍海兵隊女生徒暴行事件の報道は、すっかり消えてしまいました。沖縄では、すでに全41市町村の議会で米軍への抗議決議が出され、3月23日に北谷公園で県民集会も予定されています。しかしそれは、インターネットで琉球新報沖縄タイムスを追いかけない限り、本土からは見えなくなります。もちろんそれは、自衛隊イージス艦「あたご」による漁船転覆事件にもっと紙面を割け、というだけではありません。沖縄の米軍海兵隊と日本の自衛隊は、同じ問題を抱えています。「雀の子、そこのけそこのけお馬が通る」は小林一茶の句。この句に託したイージス艦批判が、ネット上には溢れています。「漁船ども、そこのけそこのけイージス艦が通る」が、イージス艦事件のポイントです。「日本人、そこのけそこのけ米軍が通る」が、基地の島沖縄の現実です。沖縄の被害者の少女が告訴を取りさげ、加害者が不起訴になったにしても、そのようになった経緯そのものに基地の問題が孕まれています。「軍」が「民」を見下し、「文民統制」も効かず、「国家有事」を楯に暴走するとき、「軍」の暴力性が、むきだしになります。それはすでに、昨年からの防衛省汚職事件でも、インド洋給油問題でも表面に出ていた、時代の徴候の現れです。「軍」とは本質的に情報隠蔽・情報操作に走りがちな組織です。例えば今年の第80回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞Taxi to the Dark Side(闇へ)」は、私もかつて論じたアメリカ軍による『アブグレイブ刑務所の拷問』を描いたものです。ジャーナリズムとは、本来そうした暴走に歯止めをかけ、監視する役割なのではないでしょうか。ニュースはあっという間に消費され、消耗します。だからこそ、系統的で粘り強い追究が必要です。

 細部の検証はこれからです。 なにしろ1453億円で最新レーダー装備が売りのイージスです。そのレーダーシステムが漁船清徳丸を見逃していたのですから、お話しになりません。国会では防衛大臣の情報隠蔽と辞任問題に収斂しつつあります。この問題を見るとき、1988年潜水艦「なだしお」による海難事故の記録を、今こそ精査すべきです。その原型は、1971年雫石の全日空機と自衛隊機の衝突事故にありました。当時世界最大の航空事故で「全日空機と自衛隊戦闘機が激突し、全日空機の乗客乗員162名全員が亡くなったこの大惨事では、自衛隊機のパイロット2人が助かったこともあり、防衛庁は平謝りに徹した。これで自衛隊イコール悪者のイメージが根付き、隊員の士気も低下した」。そこで「主張するところは主張しよう」と自衛隊が開き直ったのが、「なだしお」事件の海難審判でした。ですから、あるサイトには、「愛国心」の観点から漁船や釣り船は自衛鑑を優先的に通すべきだという議論も出ています。問題は「軍」というものの本質に関わるからです。『中国新聞』に面白い記事が出ています。

イージス艦衝突事故で海上自衛隊は、横須賀海上保安部による業務上過失往来危険容疑での 「あたご」の家宅捜索を受け入れた。ミサイル防衛(MD)の中核を担う「機密の塊」に 対する部外の捜査機関の強制捜査は避けたいのが本音だが、民間人の人命を巻き込んだ 事故だけに、全面協力に追い込まれた格好だ。…… 「秘密が詰まったイージス艦に文民警察の強制捜査が入るのを極端に嫌がる 米側の意向があった」(海自幹部)といい、イージス艦の家宅捜索に関しては、 海自が「捜査に必要な資料の任意提出に応じるから、強制捜査だけは勘弁して」と かたくなだったとされる。 今回の事故で海自が態度を一変させた背景を別の海自幹部は 「民間人の命にかかわる事故で捜査に全面協力しなければ、世論の袋だたきに遭う。 (世論の猛反発を買った1988年の)『潜水艦なだしお事故』の二の舞いは避けたかった」 と本音を漏らした。 また、今回は捜索対象が軍事機密が集中する戦闘指揮所(CIC)などの中枢ではなく、 艦橋など操船や運航にかかわる部分に限られるため、海自サイドがすんなり応じたとの見方もある。

日本の「軍」は、「なだしお」事件からどのような教訓を導いたのでしょうか。どうも「なだしお方式」の情報隠蔽と「雫石方式」の世論工作の二正面作戦のようです。この問題について、「なだしお」事件時の冬柴現国土交通相の政府追及を引きだした水島朝穂さんの緊急直言、平和に生きる権利の確立をめざす懇談会の「イージス艦の漁船衝突事件に際しての声明」、それに「世に倦む日日」さんのブログをお勧めしておきます。国会議員では保坂展人「どこどこ日記」が光ってます。

 ようやく試験期のヤマ場を越え、本サイトの目玉である「国際歴史探偵」、特別研究室「2008年の尋ね人」を本格的に起動します。2008年の尋ね人」は、<上海におけるゾルゲ、尾崎秀実の周辺>です。鬼頭銀一山上正義川合貞吉水野成船越寿雄河村好雄野澤房二副島隆起、新庄憲光大形孝平手嶋博俊坂田寛三日高為雄田中慎次郎らについて、情報をお持ちの方は、加藤katote@ff.iij4u.or.jpまたは渡部富哉watabe38@parkcity.ne.jpへ」と年頭に入れましたが、名前を挙げただけでは情報がないので、「尋ね人」ページに、ちきゅう座スタディルームの渡部富哉さん連載1−1「ゾルゲ事件の真相究明から見えてくるもの」、1−2「尾崎秀実の10月15日逮捕は検事局が作り上げた虚構のひとつ」、2−1「ゾルゲ事件の真相究明から見えてくるもの 2」2−2「尾崎秀実は日本共産党員だった」をリンクし、「尾崎秀実の後継諜報員として摘発された野沢房二の孤高な闘い」についての渡部富哉さんの最新の研究にもとづく小論を入れました。すでに中間報告を論文にした、昨年の崎村茂樹の6つの謎 >とも相通じる、20世紀史の中に埋もれた無名の情報戦犠牲者たちの発掘です。実は私自身も、次回更新を早めに済ませて、中国に調査に出かけます。上海、北京の定点観測のほかに「偽満州国」の首都だった長春まで足を伸ばす予定です。

本サイトでも予告した2月22日のインド・デリー大学東アジア学部ブリジ・タンカ教授講演会旅人の記憶――日本とインドの近代は、来日中の中国社会科学院孫歌Sung-Guu)先生ら国際色豊かな研究者・学生のほか、インドに関心を持つ一般市民の方々もかけつけて、会場いっぱいの盛況でした。昨年の成果、花伝社 論集情報戦の時代ーーインターネットと劇場政治』、情報戦と現代史ーー日本国憲法へのもうひとつの道について、『図書新聞』編集長米田綱路さんが、長文の書評を書いてくれました(第2859号、2008年2月23日)。「モスクワ、ベルリン、日本をまたぐ20世紀情報戦の人的ネットワークを解明」「『疑心暗鬼の政治学』にからめとられながら、『大義』に生きた人びとの系譜」ですって。よく読んでいただき多謝。情報戦のなかの『亡命』知識人ーー国崎定洞から崎村茂樹まで」20 世紀メディア研究所インテリジェンス 』誌第9号、2007/11,紀伊国屋書店)グローバルな地球社会のナショナルな国家」(尾崎行雄記念財団『世界と議会』第518号、2007年11月)は私の論文ですが、図書館「ネチズンカレッジ」 学術論文データベ ースに、宮内広利さん「世界史の最初と最後」を新規アップ。宮内さんにはこれまでも力作を寄せていただいていますが、その最新版です。 学術論文データベ ースの私の論文●加藤哲郎「日本におけ る『市民社会』概念の受容と展開」(2006.1)と●周初(淵邊朋広・日本 語版監修)「第一部 台湾における市民社会の形成と民主化」(2006.1)が、北京大学国際関係学院の梁雲祥印紅標両先生と の連絡がとれて、かってトヨタ財団の助成を得て行った共同研究華人地域における市民社会の形成と民主化』の全体を、 ●梁雲 祥(北京大学国際関係学院)「序章 市民社会と民主化の概念及び理論」 (2007.10)、●梁雲祥(北京大学国 際関係学院)「第二部 シンガポールの民主化」(2007.10)、●印紅標(北京大学国 際関係学院)「第三部 香港市民社会の発展と民主化」(2007.10)の3つの論文 が追加され、日本語インターネット版一書の体裁にまとまりました。この著者たちと会うのも、中国訪問の目的です。ジョルダンサンドさん寄稿「アメリカよりみた 『靖国問題』−ドーク氏に反論する」のほか、高坂邦 彦さん「筐底拾遺」中「戦前 日本の外交評論と憲法解釈 ―清澤洌と植原悦二郎―評伝・植原悦二郎 」及び姉妹編「評伝 ・清澤洌」ほかもリンクのかたちで採用してきましたが、高坂さんはこのたびホームペーページを閉鎖されると言うことで、惜しい作品ですから、ファイルそのものを本学術論文データベ ースに入れて頂くよう交渉中です。情報戦のビギナー向けは、渡辺雅男・渡辺治 編『「現代」という環境』(旬報社)所収の講演「インターネット ーー情報という疑似環境」をどうぞ。昨年アップした論文「グ ローバリゼーションと国民国家」(2005年社会理論学会第13回大会報告)、岩波書店から昨年3月に刊行された、昨年夏 の慶應大学経済学部の公開講座の記録、松村高夫・高草木光 一編『連続講義 東アジア 日本が問われていること『情況』5/6月号のインタビュー「ポスト国民国家 時代における労働市場の変容と男性性」等もご笑覧を。 ただしIDE大学協会『IDE 現代の高等教育』第495号(2007年11月)に寄せた「大学ランキング一橋大学の取組み」は「ネチズンカレッジ」とは別世界の話ですので、本サイトには収録しません。

  長文書評は『図書新聞』7月21日号掲載書評白 井久也編『米国公文書 ゾルゲ事件資料集』(社会評論社) に加えて、新年に社会思想史学会年報『社会思想史研究』第31号(2007年)に寄せた西川正雄『社会主義インターナショナルの群像 1914-1923』(岩波書店)図書館に入れたところで、残念ながら西川教授の訃報で、追悼文を加えました。追悼文はもう一つ、元同志社大学人文科学研究所長田中真人さん追悼「田中真人さんの学風と鮒寿司」を同志社大学『キリスト教社会問題研究』第56号(2008年2月)に発表しました。アップは追って。西川さんや田中さんと話し合った歴史学方法論が面白くなってきたので、ジョナサン・ハスラム『誠実という悪徳 E.H.カー 1892−1982』(現代思潮新社)にも書評で挑戦。『週刊読書人』2月1日号に掲載されました。『エコノミスト』誌 連載書評「歴史書の棚」は、2月18日号の、袖井林二郎『アーサー・シイク 義憤のユダヤ絵師』(社会評論社)三宅正樹『スターリン、ヒトラーと日ソ独伊連合構想』(朝日新聞社)を取り上げ、「今こそ真剣に向き合うべき、世界大戦期日本外交」を 新規アップ。1月21日号の、ピーター・バーク『時代の目撃者』(諸川春樹訳、中央公論美術出版)松村高夫・矢野久編著『大量虐殺の社会史 戦慄の20世紀』(ミネルヴァ書房) の組み合わせでの「イメージがつくる歴史の虚像と実像」で同じ系列で、方法論づいています。昨年12月18日新年特大号の「大連立の仕掛け人? うわさの新聞人の自伝」として渡邉恒雄『君命も受けざる所あり』(日本経済新聞出版社)菊池清麿『国境の町 東海林太郎とその時代』(北方新社)、11月20日号の「研究に定年はない、大家の健筆に脱帽」と題した今井清一『横浜の関東大震災』(有隣堂)藤田勇『自由・民主主義と社会主義 1917−1991』(桜井書店)もアップしてあります。10月23日号の「ナショナリズムの罠とエスペラントの希望」の梅森直之編著『ベネディクト・アンダーソン グローバリゼーションを語る』(光文社新書)田中克彦『エスペラント 異端の言語』(岩波新書)、9月25日号の「国民国家の記憶作りに介入した経済学者たち」と題したローラ・ハイン『理 性ある人びと 力ある言葉 大内兵衛グループの思想と行動』(大島かおり訳、岩波 書店)佐藤卓己・孫安石編 『東アジアの終戦記念日  敗北と勝利のあいだ』(ちくま新書)、などと共にどうぞ。 インターネット上では、「 ナレッジステーション 」に、丸山真男『日本の思想』、デーヴィッド・ヘルド『グローバル化とは何か』、斎藤純一『公共性』を政治学 ・おすすめ本」として挙げておきました。一橋大学学生用に、2008年度ゼミナール案内を入れました。

 米兵犯罪に何も言えず総選挙が遠のく日本、

でも世界の趨勢は、ドルからユーロの方に? 

2008.2.15 私たちの職業で最も忙しい時期です。各種試験が重なり、膨大な論文や答案を読み、採点があります。おまけに今年は、国立大学法人の法人評価が重なり、かつての春休みは、旧き佳き日の遠い想い出になりました。アメリカ大統領予備選の行方が見えてきました。「変化」「統一」を掲げる若いオバマ候補の勢いは、すでに代議員数でもヒラリー・クリントンを上回り、初の女性大統領の野望をうち砕きそうです。共和党はなつかしのマケイン候補になりそうですが、勢いからいけば"Yes, We Can Do !"のオバマ民主党でしょうか。しかし、スキャンダルから暗殺まで、何でもありなのがアメリカ政治。テレビとインターネットが劇場政治に組み込まれた今日では、ちょっとした失言や涙の表情でも流れが変わります。サブプライムローンからモノライン保険飛び火した信用不安は、ドルの力を弱め、その分、ユーロの存在感を大きくしています。それでも若者が政治に熱くなる機会を持つ国は、今ごろ予算審議が行き詰まり首相不信任案から解散・総選挙のはずだったのに、なぜか政権交代は遠のいて、殺伐たるニュースの続くどこかの内向きの国よりは、まだまだ底力がありそうです。

 またしても、というべきでしょう。沖縄の皆さんは、もう怒りの爆発寸前でしょう。米軍海兵隊員の女子中学生暴行事件は、基地がなければ起こりえなかった犯罪です。きっこの日記さんが、1955年の由美子ちゃん事件までさかのぼって告発していますが、独立国日本政府の存在意義が問われる問題です。そこで真っ先に発言すべき法務大臣は、「志布志事件はえん罪ではなかった」のトンデモ発言と、「成人は20歳か18歳か」の目くらまし劇場、外務大臣は日米地位協定の「好意的考慮」の運用に逃げ込み。肝心の総理大臣が、アメリカ大統領及び予備選有力候補に沖縄県民の怒りと日本国民の声を届け、厳重抗議と今後の対応を問いただしてくれるかと思いきや、「沖縄県民の気持ちはよくわかる。最大限受け止めてやっていく」という官僚答弁でお茶を濁し、ブッシュ大統領に直通電話もできない首相。この首相には、感情がなきの如くです。沖縄では1995年の少女暴行事件、昨年の沖縄戦教科書検定事件に続いて、県民大会が開かれそうです。岩国市長選挙のような補助金頼りの泣き寝入りに追いつめないように、監視カメラ設置のピント外れでもなく、本土からの声が重要です。

 本サイトは、2008年ダボス会議のポイントとして、ジョージ・ソロスのドル基軸経済終焉の衝撃的警告に注目しました。終焉かどうかはともかく、世界経済の中でのドルが凋落し、ユーロの力が大きくなっています。かつて「1ドル=100円=1ユーロ」のアジア円ブロックが夢に見られた時代は去って、円はドルと心中してジリ貧、台湾・シンガポールや香港・中国から円安ブランド買い成金旅行が急増しています。もっとも今回の世界金融危機は、チャイナマネーやアラブマネーも入っていて、ユーロをも巻き込むもの、『サピオ』最新2月27日号によれば、「ユーロへの信頼がEUを苦しめるジレンマ」が生まれているようです。前回更新では、ダボス会議でのソロスのドル凋落報告に加えて、グーグル創業者ダボス参加記や新聞王マードックのダボス発言ビル・ゲイツの「創造的資本主義」の提唱を指摘しました。そしたらなんと、そのグーグルマイクロソフトマードックが、三つどもえのヤフー争奪戦、日本ではまだヤフーが検索エンジンの王者なそうですが、世界はとっくにクーグル2.0の時代、それに新聞メディア出身のマードックとOS独占のMSビル・ゲイツヤフーを買収して対抗しようとする構図ですから、これぞ世界経済情報戦の最前線、中国発の「百度」が参入すれば、オールスター戦です。でもネチズンとしては、検索エンジンの性能と使い勝手こそポイント、長年愛用してきたメールソフト・ユードラが、いったんホリエモンのライブドアに渡って以降、すっかり不便になった当サイトとしては、資本のマネーゲームよりは、オープンソース化・無償化競争の方を推奨します。テレビでは警視庁が初めて公開した特殊部隊SITの訓練の模様がニュースになっています。これが7月洞爺湖サミットに向けてのデモンストレーションと見抜いた人は、情報戦通。その7月サミットまで、国民監視政策は、現場で着々と強化されます。それをあの失言続きの法務大臣にまかせておいて、いいのでしょうか。

 ダボスの「世界経済フォーラムWEF)」に対抗した「世界社会フォーラムWSF)」1月 グローバル・アクションの世界的動きは、まだ公式サイトの世界地図の報告以外、見あたりません。やはりピープルズ・プラン研究所小倉利丸さんのいう「商業化と制度化の危機にある世界社会フォーラム」なのでしょうか、ヴァンダナ・シヴァの言うとおり、「世界社会フォーラムはインドのクンバメラ祭のようになるべきです。クンバメラ祭は世界の創造を祝う地上最大のお祭りで、3000万もの人びとが集まってガンジス川で沐浴をします。沐浴は毎日するものですけれど、クンバメラは12年に一度だけ行われる大祭です。同じように、私たちが毎日する政治の「沐浴」は地域ごと国ごとで行う活動ということになります。世界社会フォーラムは10年に一度か二度だけ開かれればいいでしょう」ということでしょうか。さしあたり、「もったいない図書館」や「議員報酬日当制」導入で知られる福島県矢祭町に学びましょう。

2月22日に、インド・デリー大学東アジア学部ブリジ・タンカ教授の講演会を、一橋大学国際交流セミナーとして開催します。タンカ教授は、英語圏での北一輝や岡倉天心の研究で知られる著名な日本史家で、日本インドの近代史・思想を精力的に探求し、靖国神社問題情報ネットワークなどでも発言しています。このたび早稲田大学客員教授として来日されたのを機に、かつて日本での留学先であった一橋大学でも話をしてくれることになりました。一般公開ですので、本サイトの読者の皆様もどうぞ。

日  時 平成20 年2月22日(金)午後3時30分 〜 5時30分
場  所  一橋大学 佐野書院 会議室 ( キャンパス地図の23番)  
講 演 者 ブリッジ・タンカ Brij Tankha(インド・デリー大学東アジア学部教授・早稲田大学客員教授、日本史)
演 題 「旅人の記憶――日本とインドの近代」(日本語で講演、質疑は英語・日本語)
著書
Buddhist Pilgrimage (June 2000)
Kita Ikki And the Making of Modern Japan : A Vision of Empire (July 2006)
Okakura Tenshin and Pan-asianism : Shadows of the Past (May 2008)
Kenji Mizoguchi and the Art of Japanese Cinema (Aug 2008)
(照 会 先) 一橋大学大学院社会学研究科  加藤 哲郎 (政治学) 電 話 042-580-8276

 正月に、情報処理センターリンク集 政治学が楽しくなるインターネット宇宙の流し方」及び平和情報リンク「IMAGINE! イマジン」を更新しました。昨年の成果、情報戦のなかの『亡命』知識人ーー国崎定洞から崎村茂樹まで」20 世紀メディア研究所インテリジェンス 』誌第9号、2007/11,紀伊国屋書店)グローバルな地球社会のナショナルな国家」(尾崎行雄記念財団『世界と議会』第518号、2007年11月)をアップしました。2007年に出した花伝社 論集情報戦の時代ーーインターネットと劇場政治』、情報戦と現代史ーー日本国憲法へのもうひとつの道及び崎村茂樹探索の延長上で、本年の特別研究室「2008年の尋ね人」 は、ゾルゲ事件国際情報戦のなかに位置づけ、1930年代初頭上海でゾルゲ、尾崎秀実の周辺にいた、鬼頭銀一山上正義川合貞吉水野成船越寿雄河村好雄野澤房二、副島隆起、手嶋博俊坂田寛三日高為雄らについて、集中的に調べることにしました。情報をお持ちの方は、加藤katote@ff.iij4u.or.jpまたは渡部富哉さwatabe38@parkcity.ne.jpへ。

 図書館「ネチズンカレッジ」 学術論文データベ ースには、これまでも私の論文●加藤哲郎「日本におけ る『市民社会』概念の受容と展開」(2006.1)と●周初(淵邊朋広・日本 語版監修)「第一部 台湾における市民社会の形成と民主化」(2006.1)が入って いましたが、北京大学国際関係学院の梁雲祥印紅標両先生と の連絡がとれて、かってトヨタ財団の助成を得て行った共同研究『華人地域における市民社会の形成と民主化』の全体を、 日本語のインターネット版で一挙にアップ。●梁雲 祥(北京大学国際関係学院)「序章 市民社会と民主化の概念及び理論」 (2007.10)、●梁雲祥(北京大学国 際関係学院)「第二部 シンガポールの民主化」(2007.10)、●印紅標(北京大学国 際関係学院)「第三部 香港市民社会の発展と民主化」(2007.10)の3つの論文 が学術論文データベ ースに追加され、一書の体裁にまとまりました。ジョルダンサンドさん寄稿「アメリカよりみた 『靖国問題』−ドーク氏に反論する」や高坂邦 彦さん「筐底拾遺」中「戦前 日本の外交評論と憲法解釈 ―清澤洌と植原悦二郎―評伝・植原悦二郎 」及び姉妹編「評伝 ・清澤洌」、「ポパ ー哲学入門 ― 科学的・合理的なものの見方・考え方 」もリンクのかたちで採用してあります。情報戦のビギナー向けは、渡辺雅男・渡辺治 編『「現代」という環境』(旬報社)所収の講演「インターネット ーー情報という疑似環境」をどうぞ。尾崎行雄記念財団『世界と議会』第518号(2007年11月)に寄せた加藤「グローバルな地球社会のナショナルな国家」は、昨年アップした論文「グ ローバリゼーションと国民国家」(2005年社会理論学会第13回大会の基調報告)の要約版ですが新年にアップ岩波書店から昨年3月に刊行された、昨年夏 の慶應大学経済学部の公開講座の記録、松村高夫・高草木光 一編『連続講義 東アジア 日本が問われていることで、私は「<天皇制民主主義>論」を報告し、鈴木邦男さんと「天皇制と民主主義」を対論しています。ぜひご笑覧を。『情況』5/6月号のインタビュー「ポスト国民国家 時代における労働市場の変容と男性性」は、最近はあまり追いかけていない領域のインタビュー記録です。 ただしIDE大学協会『IDE 現代の高等教育』第495号(2007年11月)に寄せた「大学ランキング一橋大学の取組み」は「ネチズンカレッジ」とは別世界の話ですので、本サイトには収録しません。

  長文書評は『図書新聞』7月21日号掲載書評白 井久也編『米国公文書 ゾルゲ事件資料集』(社会評論社) に加えて、新年に社会思想史学会年報『社会思想史研究』第31号(2007年)に寄せた西川正雄『社会主義インターナショナルの群像 1914-1923』(岩波書店)図書館に入れたところで、残念ながら西川教授の訃報です。『エコノミスト』誌 連載書評「歴史書の棚」は、1月21日号の、ピーター・バーク『時代の目撃者』(諸川春樹訳、中央公論美術出版)松村高夫・矢野久編著『大量虐殺の社会史 戦慄の20世紀』(ミネルヴァ書房) の組み合わせで「イメージがつくる歴史の虚像と実像」をアップ。昨年12月18日新年特大号の「大連立の仕掛け人? うわさの新聞人の自伝」として渡邉恒雄『君命も受けざる所あり』(日本経済新聞出版社)菊池清麿『国境の町 東海林太郎とその時代』(北方新社)、11月20日号の「研究に定年はない、大家の健筆に脱帽」と題した今井清一『横浜の関東大震災』(有隣堂)藤田勇『自由・民主主義と社会主義 1917−1991』(桜井書店)もアップしてあります。10月23日号の「ナショナリズムの罠とエスペラントの希望」の梅森直之編著『ベネディクト・アンダーソン グローバリゼーションを語る』(光文社新書)田中克彦『エスペラント 異端の言語』(岩波新書)、9月25日号の「国民国家の記憶作りに介入した経済学者たち」と題したローラ・ハイン『理 性ある人びと 力ある言葉 大内兵衛グループの思想と行動』(大島かおり訳、岩波 書店)佐藤卓己・孫安石編 『東アジアの終戦記念日  敗北と勝利のあいだ』(ちくま新書)、8月28日号の「新潟をジュネーヴから解く、靖国をオレゴンから見直す」 と題したテッサ・モーリス -スズキ(田代泰子訳)『北朝鮮へのエクソダス 「帰国事業」の影をたどる』(朝 日新聞社) と中村直文・NHK取 材班『靖国 知られざる占領下の攻防』(NHK出版)などと共にどうぞ。 インターネット上では、「 ナレッジステーション 」に、丸山真男『日本の思想』、デーヴィッド・ヘルド『グローバル化とは何か』、斎藤純一『公共性』を政治学 ・おすすめ本」として挙げておきました。一橋大学学生用に、2008年度ゼミナール案内を入れました。


2008年は不透明な出発、世界も日本も政治も経済も、

ネオコン・ネオリベの曲がり角になる?

2008.2.1   去る1月28日、西洋史研究の東京大学名誉教授西川正雄さんがお亡くなりになりました。昨年4月のローザ・ルクセンブルク国際会議でひさしぶりでお会いし、一緒にランチをとったのが、二人だけで話した最期の機会になりました。あの時はまだお元気だったのに。西川さんは、第二インターナショナルの研究で著名ですが、最初の御著書は故富永幸生さんらとの共著『ファシズムとコミンテルン』(東京大学出版会、1978)であったことに、お亡くなりになって気がつきました。私はたまたま第3インターナショナル=コミンテルンの本格的研究を始めた頃で、どこの雑誌か新聞かは忘れましたが、やや長文の生意気な書評を書き、ちょっとしたドイツ語翻訳上の問題を指摘しました。するとすぐに、まだお会いしたことはなかった東大教授西川さんから丁寧なお手紙がきて、恐縮したことをおぼえています。その後は学会ベースのつきあいでしたが、ちょうど冷戦崩壊の頃、平凡社の「これからの世界史」シリーズの企画で、故平田清明さん故広松渉さんらと一緒の研究会でご一緒し、月に一度、東中野の居酒屋で、西川さんの世界史像を詳しくお聞きする機会がありました。九州出身の平田さん、広松さんが酒が入るとナショナリスティックになるのに、西川さんは端然として崩れず。帝国主義・植民地問題を第二インターのアキレス鍵として探求してきた論述の延長上で、時々鋭くアイロニカルなナショナリズム批判を発するのが印象的でした。新年に本サイト 図書館に収録した、社会思想史学会年報『社会思想史研究』第31号(2007年)に寄せた私の書評西川正雄『社会主義インターナショナルの群像 1914-1923』(岩波書店)について、お礼状をいただいたのが最期になりました。私が書評中で社会運動としての「世界社会フォーラムWSF)」の「もう一つの世界は可能だ!」について書いたところ、いや実は自分もインドまで行き、ムンバイ・フォーラムを見てきたよと、写真入りで「論証」してきました。史料批判に厳しく、歴史教育に熱心な、律儀な学者で紳士でした。享年75歳、心からご冥福をお祈り申しあげます。合掌!

 前回更新で述べたように、本サイトは、1月末に行われる3つのイベントから、その年の行方を定点観測するよう提唱してきました。そのうち第3の、ブッシュ大統領最期アメリカ大統領年頭教書演説は、予想通り、生彩のないものでした。泥沼のイラク占領はもとより、世界同時株安への緊急政策さえ出せなかったのですから。大国アメリカの行方は、名門ケネディ家がオバマ候補に乗りヒラリー・クリントンの勝利が不透明になった民主党、9.11時のニューヨーク市長だったジュリアーニ候補が脱落しマケイン候補を軸に混戦となった共和党の、アメリカ大統領予備選に焦点が移りました。2月5日の「スーパー・チューズデイ」を待ちましょう。

第1の指標である「世界経済フォーラムWEF通称ダボス会議)は、今年は日本でも大きく報じられました。なにしろ福田首相がG8洞爺湖サミットのホスト国首相として、全体会議で地球温暖化問題を演説したのですから。ただし、テレビに映ったのは日本語原稿を見失い言葉をなくした福田首相の右往左往と、それを素早くカバーするブレア前英国首相の紳士のみだしなみ風リップサービス。新聞が報じたのは福田首相の温暖化対策演説と、それへの出席者の控えめな反響、それに福田首相が5月横浜でのアフリカ開発会議U2のボノを招待した話し程度です。削減数値目標を強く打ち出すヨーロッパ諸国からの批判や、ジョージ・ソロスのドル基軸経済終焉の衝撃的警告は、あまり出てきません。やっぱり国際会議の雰囲気を知るならインターネット。グーグル創業者や新聞王マードックのダボス参加記や、ビル・ゲイツの「創造的資本主義」の提唱など結構面白いですが、総じて政治も経済も、イラク戦争の行方もサブプライムローンに発する世界金融危機も、不確かな年になりそうです。まずは、多角的な角度からの情報収集が必要です。1月31日、朝日読売日経3紙の記事や社説を比較して読めるウェブサイト「あらたにす」がオープン、なるほど便利です。

 2008年を占う第2の定点観測点、「世界社会フォーラム」(WSFの方は、21世紀に入って始まった世界の民衆運動・抵抗運動の一大イベントで、今年はブラジルのポルトアレグレ、インドのムンバイ、ケニアのナイロビと開催地を移動し十万人以上の活動家が一同に集ってきた祭典方式ではなく、1月26日を統一行動日に設定し、同じ日に世界中で「 グローバル・アクション」というさまざまな連帯のデモ・集会・イベントが行われる方式でした。ところが、その実際の規模が、よくわかりません。ブラジルで156箇所,イタリアで119,アメリカ58,フランス41,スペイン26,インド19,パキスタン18,メキシコ16,ドイツ15,ロシア15と行動の数は出ていますが、日本や韓国は1つだけとあります。しかし実際は、日本でも東京荒川北海道札幌で開かれています。世界的にどのくらいの動きがあったかは、いまだ不透明です。「ヤパーナ社会フォーラム」や『日刊ベリタ』、ATTAC JAPAN等でも、まだ速報も出ていません。バリ島COP3をふまえた環境・地球温暖化問題への世界の取り組みがどうなったか、7月洞爺湖G8サミットに対し世界のNGOからどういう態度表明があったかもわかりません。どうやらこの辺が、中心のないネットワーク型運動の問題点のようです。次回にチェックしてみましょう。より本質的な「世界社会フォーラム」(WSFの問題については、本サイトで幾度か紹介したインドの環境思想家ヴァンダナ・シヴァの「世界社会フォーラム 持続可能な経済と平和を築く政治を求めて」(『自然と人間』2004年2月)と昨年のケニア・ナイロビ・フォーラムを踏まえたピープルズ・プラン研究所小倉利丸さんの「商業化と制度化の危機にある世界社会フォーラム」が秀逸です。

2月22日に、インド・デリー大学東アジア学部ブリジ・タンカ教授の講演会を、一橋大学国際交流セミナーとして開催します。タンカ教授は、英語圏での北一輝や岡倉天心の研究で知られる著名な日本史家で、日本インドの近代史・思想を精力的に探求し、靖国神社問題情報ネットワークなどでも発言しています。このたび早稲田大学客員教授として来日されたのを機に、かつて日本での留学先であった一橋大学でも話をしてくれることになりました。一般公開ですので、本サイトの読者の皆様もどうぞ。

日  時 平成20 年2月22日(金)午後3時30分 〜 5時30分
場  所  一橋大学 佐野書院 会議室 ( キャンパス地図の23番)  
講 演 者 ブリッジ・タンカ Brij Tankha(インド・デリー大学東アジア学部教授・早稲田大学客員教授、日本史)
演 題 「旅人の記憶――日本とインドの近代」(日本語で講演、質疑は英語・日本語)
著書
Buddhist Pilgrimage (June 2000)
Kita Ikki And the Making of Modern Japan : A Vision of Empire (July 2006)
Okakura Tenshin and Pan-asianism : Shadows of the Past (May 2008)
Kenji Mizoguchi and the Art of Japanese Cinema (Aug 2008)
(照 会 先) 一橋大学大学院社会学研究科  加藤 哲郎 (政治学) 電 話 042-580-8276

 ただし、このWEFWSF両者、さらにアメリカ大統領選挙を含む短期的不透明性は、長期的にみると、重要な意味を持っています。つまり、これまで10年ほど世界に猛威を振るった政治のネオコン(新保守主義)、経済のネオリベ(新自由主義)が、従来のようなかたちでふるまうことができなくなったのです。地球温暖化も核独占も、アフガン・イラク軍事占領もアメリカ単独行動主義も、市場競争優先の「小さな政府」も規制緩和も、これでいいのだろうかと、世界中がたちどまり、もうひとつの世界を考え始めたことを意味します。 日本国内でいえば、ネオリベ小泉構造改革の郵政民主化選挙で自民党に圧倒的な議席を与え、その勢いでネオコン安倍内閣が憲法改正のための国民投票法から教育基本法まで手をつけ防衛庁を防衛省に昇格させたのに対し、国民が年金問題、薬害肝炎などからおかしいと感じ始め、参院選では民主党を勝たせてブレーキをかけ、安倍内閣の政権投げだしに追い込んだ、あの流れです。もちろんこの流れは、茫洋とした福田内閣に満足できず、かといって小沢一郎民主党にも不安を抱いている、そんな「曲がり角」感覚です。アメリカのブッシュ大統領が今年限りなのは、はっきりしています。しかし民主党も共和党も、どこまで世界に参入し協調できるか、イラク撤兵に踏み切るのかどうかもはっきりしない。ブリックスの長期的成長は明らかだが、その分世界金融は一つになっていて、アラブ諸国や中国の政府金融がアメリカの景気回復の鍵を握るようになってきた、そのリスクの一体化と相乗作用をおそれて、投機・信用市場は安全パイの金や希少資源、石油に向かった。そんな意味での見通しの不透明で、曲がり角なのです。私たちも、目先のガソリン料金リッター25円の行方は確かに気になりますが、やはり、年金問題や格差構造の問題で、政治の基本方向をどうすべきかを考えるべきでしょう。もはや神通力を失ったアメリカ一辺倒の外交・安全保障でいいのか、かといっていまや対米貿易を越えた中国への貿易依存・食糧依存でいいのか、そんな問題が問われる2008年になりそうです。「もったいない図書館」や「議員報酬日当制」導入で知られるようになった福島県矢祭町のような、自主自立の政治の動きが大切です。

 正月に、情報処理センターリンク集 政治学が楽しくなるインターネット宇宙の流し方」及び平和情報リンク「IMAGINE! イマジン」を更新しました。昨年の成果、情報戦のなかの『亡命』知識人ーー国崎定洞から崎村茂樹まで」20 世紀メディア研究所インテリジェンス 』誌第9号、2007/11,紀伊国屋書店)グローバルな地球社会のナショナルな国家」(尾崎行雄記念財団『世界と議会』第518号、2007年11月)をアップしました。2007年に出した花伝社 論集情報戦の時代ーーインターネットと劇場政治』、情報戦と現代史ーー日本国憲法へのもうひとつの道及び前回アップした崎村茂樹探索の延長上で、本年の特別研究室「2008年の尋ね人」 は、ゾルゲ事件国際情報戦のなかに位置づけ、1930年代初頭上海でゾルゲ、尾崎秀実の周辺にいた、鬼頭銀一山上正義川合貞吉水野成船越寿雄河村好雄野澤房二、副島隆起、手嶋博俊坂田寛三日高為雄らについて、集中的に調べることにしました。情報をお持ちの方は、加藤katote@ff.iij4u.or.jpまたは渡部富哉さwatabe38@parkcity.ne.jpへ。

 図書館「ネチズンカレッジ」 学術論文データベ ースには、これまでも私の論文●加藤哲郎「日本におけ る『市民社会』概念の受容と展開」(2006.1)と●周初(淵邊朋広・日本 語版監修)「第一部 台湾における市民社会の形成と民主化」(2006.1)が入って いましたが、北京大学国際関係学院の梁雲祥印紅標両先生と の連絡がとれて、かってトヨタ財団の助成を得て行った共同研究『華人地域における市民社会の形成と民主化』の全体を、 日本語のインターネット版で一挙にアップすることができ ました。●梁雲 祥(北京大学国際関係学院)「序章 市民社会と民主化の概念及び理論」 (2007.10)、●梁雲祥(北京大学国 際関係学院)「第二部 シンガポールの民主化」(2007.10)、●印紅標(北京大学国 際関係学院)「第三部 香港市民社会の発展と民主化」(2007.10)の3つの論文 が学術論文データベ ースに追加され、一書の体裁にまとまりました。ジョルダンサンドさん寄稿「アメリカよりみた 『靖国問題』−ドーク氏に反論する」や高坂邦 彦さん「筐底拾遺」中「戦前 日本の外交評論と憲法解釈 ―清澤洌と植原悦二郎―評伝・植原悦二郎 」及び姉妹編「評伝 ・清澤洌」、「ポパ ー哲学入門 ― 科学的・合理的なものの見方・考え方 」もリンクのかたちで採用してあります。情報戦のビギナー向けは、渡辺雅男・渡辺治 編『「現代」という環境』(旬報社)所収の講演「インターネット ーー情報という疑似環境」をどうぞ。尾崎行雄記念財団『世界と議会』第518号(2007年11月)に寄せた加藤「グローバルな地球社会のナショナルな国家」は、昨年アップした論文「グ ローバリゼーションと国民国家」(2005年社会理論学会第13回大会の基調報告)の要約版ですが新年にアップ岩波書店から昨年3月に刊行された、昨年夏 の慶應大学経済学部の公開講座の記録、松村高夫・高草木光 一編『連続講義 東アジア 日本が問われていることで、私は「<天皇制民主主義>論」を報告し、鈴木邦男さんと「天皇制と民主主義」を対論しています。ぜひご笑覧を。『情況』5/6月号のインタビュー「ポスト国民国家 時代における労働市場の変容と男性性」は、最近はあまり追いかけていない領域のインタビュー記録です。 ただしIDE大学協会『IDE 現代の高等教育』第495号(2007年11月)に寄せた「大学ランキング一橋大学の取組み」は「ネチズンカレッジ」とは別世界の話ですので、本サイトには収録しません。

  長文書評は『図書新聞』7月21日号掲載書評白 井久也編『米国公文書 ゾルゲ事件資料集』(社会評論社) に加えて、新年に社会思想史学会年報『社会思想史研究』第31号(2007年)に寄せた西川正雄『社会主義インターナショナルの群像 1914-1923』(岩波書店)図書館に入れたところで、残念ながら西川教授の訃報です。『エコノミスト』誌 連載書評「歴史書の棚」は、1月21日号の、ピーター・バーク『時代の目撃者』(諸川春樹訳、中央公論美術出版)松村高夫・矢野久編著『大量虐殺の社会史 戦慄の20世紀』(ミネルヴァ書房) の組み合わせで「イメージがつくる歴史の虚像と実像」をアップ。昨年12月18日新年特大号の「大連立の仕掛け人? うわさの新聞人の自伝」として渡邉恒雄『君命も受けざる所あり』(日本経済新聞出版社)菊池清麿『国境の町 東海林太郎とその時代』(北方新社)、11月20日号の「研究に定年はない、大家の健筆に脱帽」と題した今井清一『横浜の関東大震災』(有隣堂)藤田勇『自由・民主主義と社会主義 1917−1991』(桜井書店)もアップしてあります。10月23日号の「ナショナリズムの罠とエスペラントの希望」の梅森直之編著『ベネディクト・アンダーソン グローバリゼーションを語る』(光文社新書)田中克彦『エスペラント 異端の言語』(岩波新書)、9月25日号の「国民国家の記憶作りに介入した経済学者たち」と題したローラ・ハイン『理 性ある人びと 力ある言葉 大内兵衛グループの思想と行動』(大島かおり訳、岩波 書店)佐藤卓己・孫安石編 『東アジアの終戦記念日  敗北と勝利のあいだ』(ちくま新書)、8月28日号の「新潟をジュネーヴから解く、靖国をオレゴンから見直す」 と題したテッサ・モーリス -スズキ(田代泰子訳)『北朝鮮へのエクソダス 「帰国事業」の影をたどる』(朝 日新聞社) と中村直文・NHK取 材班『靖国 知られざる占領下の攻防』(NHK出版)などと共にどうぞ。 インターネット上では、「 ナレッジステーション 」に、丸山真男『日本の思想』、デーヴィッド・ヘルド『グローバル化とは何か』、斎藤純一『公共性』を政治学 ・おすすめ本」として挙げておきました。一橋大学学生用に、2008年度ゼミナール案内を入れました。


2008年はどうなる? 1月末の3つのイベント 、

1/26WSFグローバル・アクションで観測しましょう!

2008.1.15   年末年始に、新しい年の経済や政治を予測するのが、マスメディアの恒例になっています。曰く、株価は為替はどうなる?、国会解散・総選挙はいつ?、「消えた年金」はどうなる?、等々。21世紀に入って、本サイトは、もっと世界に目を向けて、1月末に行われる3つのイベントから、その年の行方を定点観測するよう提唱してきました。幾度か「カレッジ日誌(過去ログ)」にもでてきますが、第1に「世界経済フォーラムWEF通称ダボス会議)、第2にそれに対抗する「世界社会フォーラムWSF)」の「もう一つの世界は可能だ!」の行方、そして第3に、支配的超大国アメリカ合衆国大統領の年頭一般教書(State of the Union Address)です。この第3は、今年はアメリカ大統領選挙の年ですから、2月5日の「スーパー・チューズデイ」「メガ・チューズデイ」と合わせて、アメリカの行方を見るべきでしょう。また、日本に即して言えば、7月にG8洞爺湖サミットが開かれ、京都議定書の発効・拘束期限開始、昨年末のバリ島COP3をふまえた環境・地球温暖化問題への世界の取り組みが主題になります。本来国会でのテロ特措法討論も、こうした見通しを踏まえてなさるべきだったのですが、日本の政治も経済も、その国際的地位の低下に萎縮して、内向きに自閉しつつあります。

 第一の「世界経済フォーラム」は、今年は1月23−27日に、スイスのリゾート地ダボスの高級ホテルで開かれます。世界の政治・経済エリートの集まるVIP会議で、新自由主義グローバリズムの牽引者の集まり、2008年のテーマは「 The Power of Collaborative Innovation」、今年の共同議長Co-Chairs は、前イギリス首相トニー・ブレア(Tony Blair),JPモルガンCEOジェームズ・ダイモン(James Dimon, JPMorgan Chase & Co., USA)、元米国国務長官ヘンリー・キッシンジャー(Henry Kissinger, USA)、ペプシコーラ社CEOのIndra K. Nooyi(PepsiCo, USA)、シェブロン社CEOのDavid J. O'Reilly(Chevron Corporation, USA)の常連に加えて 、インドからK.V. Kamath(Managing Director and Chief Executive Officer, ICICI Bank, India)中国からWang Jianzhou(Chief Executive, China Mobile Communications Corporation, People's Republic of China)が加わると発表されています。日本の福田首相が出席の意向を表明し、民主党の小沢代表も行くと言っていますが、世界からはほとんど注目されていません。26日に開かれる日本経済についてのセッションのテーマは「忘れられた強国A Forgotten Power」で、かつて世界第二の経済大国として脚光を浴びた時代もありましたが、今日では「世界経済フォーラム」が発表するグローバル競争力ランキング2007-2008 で第8位、ITランキングも14位に転落、男女格差(ジェンダー・ギャップ)是正にいたっては世界38位という凋落ぶりを反映しています。別の統計では、2007年の株価上昇率が世界52か国中下から2番目の落第生、つまりダボス会議に集まるグローバル投資家にとって、全く魅力のない国になっています。福田首相は、今年度G8サミット議長国として「ポスト京都議定書」の枠組みを演説するはずですが、12月のCOP3で高い国別削減数値目標を打ち出すEUと数値目標設定に反対するアメリカ・中国のあいだで右往左往し、環境NGOの気候変動ネットワークから参加国中取り組みワーストワンの「化石賞」を受賞したばかりですから、多くは望めません。まさか 、雪深いスイスの山奥で、世界から相手にされないことにショックを受けた福田首相と小沢民主党代表が、挙国一致の「大連立」第二幕の「ドメスティック外交」、なんてことはないでしょうね。

 40年近い伝統を持つグローバリズムの先導者「世界経済フォーラム」に比べて、「世界社会フォーラム」の方は、21世紀に入って始まった世界の民衆運動・抵抗運動の一大イベントです。今年はブラジルのポルトアレグレ、インドのムンバイ、ケニアのナイロビと開催地を移動し、十万人以上の活動家が一同に集ってきた祭典方式ではなく、1月26日を統一行動日に設定し、同じ日に世界中で「 グローバル・アクション」というさまざまな連帯のデモ・集会・イベントが行われる方式です。1月14日の朝日新聞に、歴史家安丸良夫さんの「民衆運動 暴力・狂信のレッテルを貼る前に」という「千年王国主義的民衆運動」についてのコラムが掲載されていますが、世界社会フォーラムは、まさに、現代において、新自由主義的グローバリズムのもたらす地域共同性と生活世界の破壊、貧困・格差・抑圧に抵抗する「千年王国主義的民衆運動」です。それも原理主義的宗教やテロリズムによってではなく、「もう一つの世界は可能だ」を合言葉に、無数の差異と創意を抱え込んで連帯しようという実験です。私が昨年出した情報戦の時代ーーインターネットと劇場政治の主題の一つであり、その7年の歴史や内部に抱える問題を詳しく分析しています。例によって日本のマスコミはほとんど無視するでしょうが、「ヤパーナ社会フォーラム」や『日刊ベリタ』、ATTAC JAPAN等でインターネット上には同時中継されますし、日本語で読める世界社会フォーラムの記録集『もうひとつの世界は可能だ』『帝国への挑戦』もありますから、ぜひご注目ください。世界からも日本でのグローバル・アクションは注目されています。なぜなら、この運動への日本での統一行動と連帯が、7月洞爺湖サミット時に世界中からやってくる新自由主義グローバリズム反対の社会運動NGO/NPOのホスト国としての受け皿になりますから。

 第3のアメリカ大統領年頭教書演説は、今年はあまり重要ではないでしょう。福田首相の支持率はついに不支持率によって追い越されましたが、ブッシュ大統領の支持率は、イラク占領の長期化・泥沼化で、長期低落どころか惨めな末期症状28%です。民主党の1月大統領予備選が「変化」をめぐるヒラリー・クリントンとバラック・オバマ候補の争いに絞られ、共和党はブッシュ後継の有力候補を出せずにいる状況が雄弁に物語っています。女性初のヒラリー大統領にせよ、すでに日本でも支援サイトができた非白人オバマ大統領にせよ、アメリカ建国以来の「変化」が起こる可能性濃厚で、おそらく今年のダボス会議では、世界の支配層が「ポスト・ブッシュ」の行方について情報交換するのでしょう。落ち目のアメリカの第二バイオリン=日本なんかよりも、中国・インドなどブリックス(BRICS)優良企業をグローバリズムの仲間に組み入れることが目指されるでしょう。その意味では、アメリカ大統領予備選において、2月5日の「スーパー・チューズデイ」に向けて、各候補が中国やインド、アジア経済についてどのような発言をするか、サブプライムローン問題と中東中国政府資金の流入について何らかの態度を表明するか、それにいまやアフリカ系以上の勢力となったヒスパニック移民の不法滞在問題を争点にするかどうかが、今後の大統領選挙の行方を見るポイントです。もっと長期的に見ると、20世紀の政治で支配的であった「政党政治」が、大統領選挙の情報戦化のなかで、政党選びよりも指導者個人を選ぶかたちに変質してきた流れが、今回どのようになるか。つい最近のJNN世論調査で、次の選挙では自民党・公明党40%よりも民主党勝利を望む声が54%と高いのに、小沢民主党代表の総理大臣就任には77%が反対と圧倒的に拒否反応が強いのですから、今後の日本政治の行方、各政党の「顔」をどうするかを占ううえでも、重要な問題です。ちなみに世界社会フォーラムは、「私たちは多様である。このことこそが私たちの力だ。それゆえ、あらゆる人びとに呼びかける。この行動週間に、それぞれの人がかかえている各自の課題について、自分たちなりのやり方で、創造的な行動を、行為を、出来事を、そして結集をはかろう」と1・26グローバル・アクションをよびかけ、その憲章第8条では、 「世界社会フォーラムは、さまざまな価値や考え方を認め、信条の違いを超え、政府機関や政党とは関係を持ちません。もう一つの世界を打ち立てるために、中央集権にならない方法で、団体や運動組織がたがいに連携し、地域レベルから国際レベルまで具体的に活動をすすめます」と、政党の政党としての参加は拒否しています。ただし、政党員や政党所属各級議員も、個人の資格では参加・発言することを認められ、「議員フォーラム」が設けられています。日本でいえば、「もったいない図書館」や「議員報酬日当制」導入で知られるようになった、福島県矢祭町のような、自主自立の政治の世界化をめざしています。

  正月の話題のひとつ。老舗家電メーカー松下電器産業が、社名を変更して「パナソニック株式会社」に変わります。これもグローバル化の作用で、ソニーやキャノンに比べ海外ブランド力が弱いため、海外で通用しているグローバルブランドPanasonicに商品名を統一し、「松下」や「ナショナル」はなくそうという決断です。世界市場で勝負せざるをえない企業にとっては、おそらく賢明な選択、いや遅すぎた決断でしょう。実はちょうど、アマゾンで購入した古本、斎藤周行『拝啓 松下幸之助殿 つくられた神話への提言』(一光社、1976年)は、著者が1934年から51年まで松下電器の海外貿易・輸出入業務に従事し、松下電器貿易代表取締役専務まで登り詰めた創成期の立役者で、朝鮮戦争時のGHQ情報機関キャノン機関の関わる「衣笠丸事件」の当事者の一人です。前回アップした情報戦のなかの『亡命』知識人ーー国崎定洞から崎村茂樹まで」の延長上での占領期情報戦研究の資料として読み始めたのですが、「経営の神様」松下幸之助の側近として「学卒販売員第一号」、海外事業を切り開いてきた第一線企業戦士の話ですから、同社の歴史もよくわかります。他社の技術開発に追随して「マネシタ電器」といわれた時期、松下幸之助宅への新年・ボーナス支給時の「本宅参り」、戦時下軍部への売り込みと造船・プレハブ事業への参入、戦後の公職追放・資産凍結・企業再建、三洋電機の分離とオランダ・フィリップス社への接近、等々が内幕を含めて書かれ、公式社史とは異なる面白さです。それがなぜ中国の国共内戦、朝鮮戦争に巻き込まれるかは、「衣笠丸事件」がらみで「国際歴史探偵」の仕事にとっておきますが、戦後日本資本主義の再建が、家電のような「平和産業」であっても、いかにアメリカの世界支配戦略、反共情報戦、朝鮮戦争特需に組み込まれていたかが、よくわかります。松下家の家族経営からも脱したのですから、社名変更も当然でしょう。むしろ企業の社会的責任・コンプライアンスの飛躍の機会にしいてほしいものです。もっとも創業者がつくった「松下政経塾」は名を変えず、「パナソニック政経塾」にはならないとか。そういえば、政界は2代目・3代目の世襲議員で占められ、前回詳述した防衛省疑獄の焦点「日米平和・文化交流協会は、その前身である日米文化振興会」を1947年に創設した初代会長笠井重治GHQとの繋がりから始まったように、占領期の闇をひきずったままです。

 正月に、情報処理センターリンク集 政治学が楽しくなるインターネット宇宙の流し方」及び平和情報リンク「IMAGINE! イマジン」を更新しました。昨年の成果、情報戦のなかの『亡命』知識人ーー国崎定洞から崎村茂樹まで」20 世紀メディア研究所インテリジェンス 』誌第9号、2007/11,紀伊国屋書店)グローバルな地球社会のナショナルな国家」(尾崎行雄記念財団『世界と議会』第518号、2007年11月)をアップしました。2007年に出した花伝社 論集情報戦の時代ーーインターネットと劇場政治』、情報戦と現代史ーー日本国憲法へのもうひとつの道及び前回アップした崎村茂樹探索の延長上で、本年の特別研究室「2008年の尋ね人」 は、ゾルゲ事件国際情報戦のなかに位置づけ、1930年代初頭上海でゾルゲ、尾崎秀実の周辺にいた、鬼頭銀一山上正義川合貞吉水野成船越寿雄河村好雄野澤房二、副島隆起、手嶋博俊坂田寛三日高為雄らについて、集中的に調べることにしました。情報をお持ちの方は、加藤katote@ff.iij4u.or.jpまたは渡部富哉さwatabe38@parkcity.ne.jpへ。

 図書館「ネチズンカレッジ」 学術論文データベ ースには、これまでも私の論文●加藤哲郎「日本におけ る『市民社会』概念の受容と展開」(2006.1)と●周初(淵邊朋広・日本 語版監修)「第一部 台湾における市民社会の形成と民主化」(2006.1)が入って いましたが、北京大学国際関係学院の梁雲祥印紅標両先生と の連絡がとれて、かってトヨタ財団の助成を得て行った共同研究『華人地域における市民社会の形成と民主化』の全体を、 日本語のインターネット版で一挙にアップすることができ ました。●梁雲 祥(北京大学国際関係学院)「序章 市民社会と民主化の概念及び理論」 (2007.10)、●梁雲祥(北京大学国 際関係学院)「第二部 シンガポールの民主化」(2007.10)、●印紅標(北京大学国 際関係学院)「第三部 香港市民社会の発展と民主化」(2007.10)の3つの論文 が学術論文データベ ースに追加され、一書の体裁にまとまりました。ジョルダンサンドさん寄稿「アメリカよりみた 『靖国問題』−ドーク氏に反論する」や高坂邦 彦さん「筐底拾遺」中「戦前 日本の外交評論と憲法解釈 ―清澤洌と植原悦二郎―評伝・植原悦二郎 」及び姉妹編「評伝 ・清澤洌」、「ポパ ー哲学入門 ― 科学的・合理的なものの見方・考え方 」もリンクのかたちで採用してあります。情報戦のビギナー向けは、渡辺雅男・渡辺治 編『「現代」という環境』(旬報社)所収の講演「インターネット ーー情報という疑似環境」をどうぞ。尾崎行雄記念財団『世界と議会』第518号(2007年11月)に寄せた加藤「グローバルな地球社会のナショナルな国家」は、昨年アップした論文「グ ローバリゼーションと国民国家」(2005年社会理論学会第13回大会の基調報告)の要約版ですが新年にアップ岩波書店から昨年3月に刊行された、昨年夏 の慶應大学経済学部の公開講座の記録、松村高夫・高草木光 一編『連続講義 東アジア 日本が問われていることで、私は「<天皇制民主主義>論」を報告し、鈴木邦男さんと「天皇制と民主主義」を対論しています。ぜひご笑覧を。『情況』5/6月号のインタビュー「ポスト国民国家 時代における労働市場の変容と男性性」は、最近はあまり追いかけていない領域のインタビュー記録です。 ただしIDE大学協会『IDE 現代の高等教育』第495号(2007年11月)に寄せた「大学ランキング一橋大学の取組み」は「ネチズンカレッジ」とは別世界の話ですので、本サイトには収録しません。

  長文書評は『図書新聞』7月21日号掲載書評白 井久也編『米国公文書 ゾルゲ事件資料集』(社会評論社) に加えて、新年に社会思想史学会年報『社会思想史研究』第31号(2007年)に寄せた西川正雄『社会主義インターナショナルの群像 1914-1923』(岩波書店)図書館に。『エコノミスト』誌 連載書評「歴史書の棚」は、12月18日新年特大号の「大連立の仕掛け人? うわさの新聞人の自伝」として渡邉恒雄『君命も受けざる所あり』(日本経済新聞出版社)菊池清麿『国境の町 東海林太郎とその時代』(北方新社)を入れました。昨年11月20日号の「研究に定年はない、大家の健筆に脱帽」と題した今井清一『横浜の関東大震災』(有隣堂)藤田勇『自由・民主主義と社会主義 1917−1991』(桜井書店)もアップしてあります。10月23日号の「ナショナリズムの罠とエスペラントの希望」梅森直之編著『ベネディクト・アンダーソン グローバリゼーションを語る』(光文社新書)田中克彦『エスペラント 異端の言語』(岩波新書)、9月25日号の「国民国家の記憶作りに介入した経済学者たち」と題したローラ・ハイン『理 性ある人びと 力ある言葉 大内兵衛グループの思想と行動』(大島かおり訳、岩波 書店)佐藤卓己・孫安石編 『東アジアの終戦記念日  敗北と勝利のあいだ』(ちくま新書)、8月28日号の「新潟をジュネーヴから解く、靖国をオレゴンから見直す」 と題したテッサ・モーリス -スズキ(田代泰子訳)『北朝鮮へのエクソダス 「帰国事業」の影をたどる』(朝 日新聞社) と中村直文・NHK取 材班『靖国 知られざる占領下の攻防』(NHK出版)などと共にどうぞ。 インターネット上では、「 ナレッジステーション 」に、丸山真男『日本の思想』、デーヴィッド・ヘルド『グローバル化とは何か』、斎藤純一『公共性』を政治学 ・おすすめ本」として挙げておきました。


謹賀新年! 2008年が 、格差と環境の転機の年になりますように!

2008.1.1 あけまして、おめでとうございます。新年恒例で、情報処理センターリンク集 政治学が楽しくなるインターネット宇宙の流し方」及び平和情報リンク「IMAGINE! イマジン」を更新しました。昨年の成果、情報戦のなかの『亡命』知識人ーー国崎定洞から崎村茂樹まで」グローバルな地球社会のナショナルな国家」をアップしました。

 といっても、ほの暗い新年です。パキスタンのブット元首相暗殺、アメリカのサブプライムローン問題の継続と中東中国政府資金の流入、アメリカ大統領選挙の行方、京都議定書に代わるCOP3への環境問題解決の枠組み、北朝鮮の核開発、すべて不透明です。ネパールの王制廃止が決定して世界最大の君主制国家日本はいよいよ「ラストエンペラー」の国になってきました。そんななかで、年末に日本の一人当たりGDPOECD30か国中世界18位に転落、という結果が発表されました。かつて1994年には世界の17.9%を占めた名目GDP総額も、ついに1割を切り9.1%になりました。「豊かな国」からの退却が続いています。長期的データでみても、世界経済に占める日本のプレゼンスのピークは終わったと考えられます。物価の高さと贅沢なライフスタイルだけは、まだ続いているようですが。この世界でよく取り上げられる、ブリックス(BRICS)の命名者、アメリカの投資顧問会社ゴールドマン・サックス社の長期見通しDreaming with BRICs: The Path to 2050(BRICsについての大胆な予測:2050年への道程)」と題する調査レポートがあります。同社のホームページに入ると、動画画像での説明も読めます。「BRICsとはブラジル、ロシア、インド、中国の頭文字であり、 この四カ国GDPが今後40年間でG6(日米英独仏伊)のGDPを凌駕する」「2050年のGDPは1位中国44兆4530億ドル、2位米国35兆1650億ドル、3位インド27兆8030億ドル、大きく遅れて4位日本6兆6730億ドル、5位ブラジル6兆740億ドル、6位ロシア5兆8700億ドル、7位英国3兆7820億ドル、8位ドイツ3兆6030億ドルの順になる」という予測で、世界170カ国を対象とし、ブリックスに続く「ネクスト・イレブン」(イラン、インドネシア、エジプト、韓国、トルコ、ナイジェリア、バングラデシュ、パキスタン、フィリピン、ベトナム、メキシコ)の台頭も予測し、韓国では「2050年には韓国の1人当たりの国内総生産(GDP)が8万1000ドルとなり、米国に次ぐ世界2位になる」ともてはやされています。年末に韓国の大統領選挙を現地で見てきましたが、確かに「北朝鮮より経済」が争点で、大学卒業者の半分しか就職できないと言うのに「ビジネスフレンドリーな政府を作る」と公言する現野党ハンナラ党李明博候補の経済成長路線が、「88万ウオン世代」といわれる若者たちの圧倒的支持を得ました。しかし日本は、2050年まで待たずとも世界経済の中心から静かに退場を迫られているようです。格差拡大とワーキングプアの世界で、これまでの成長主義・新自由主義とは異なる環境・生活フレンドリーな社会を構想し、軌道修正し、再建すること、これが2008年の日本に課された難題です。

 日本ではようやく携帯電話が行き渡り(世界では第22位)、薄型テレビが30%まで普及してきた局面で、中国・インドを含む世界のデジタル化は急速に進んでいます。「知の技法」の世界でいえば、百科事典の世界でのWikipedia の普及Google Book Searchの威力。日本では『広辞苑』の第6版が24万項目で発売されましたが、Wikipediaは日本語版でもすでに45万項目、英語版は218万項目で、40以上の言語でオープンソース方式で創られ、日々拡大しています。昨年ローザ・ルクセンブルクについての国際会議があり、Wikipediaで調べて驚きました。確かに日本語版でもある程度のことはわかりますが、ドイツ語、英語、ロシア語、フランス語などほとんどの言語で独自の解説が書かれており、その長さや内容を比べると、各国別の受容の仕方の違いと特色がわかります。またレーニン、トロツキーやベルンシュタイン、グラムシら同時代のマルクス主義理論家の項目と各国語版で並べてみると、現代的評価の国別の違いもわかります。なによりもそれぞれの項目に参照リンクがあり、英語なら自由に原文も読めるサイト「Rosa Luxemburg Internet Archive 」にクリック一つで飛べますから、Wikipediaの記述そのものを批判的に検討することができます。もちろん写真だって簡単にみつかります。この流れの究極がGoogle Book Search 。先日「国崎定洞」についての英語の記述を転載させてくれというExecuted Today.com (アメリカ?)からのメールがあり、もちろん了承して、どうやってみつけたんだろうと英語のGoogleに<Kunizaki Teido>と入れてみたら、何と私の英語論文だけではなく、イタリアで出た英語の書物Reflections on the Gulag: With a Documentary Index on the Italian(2003年)のpage 113 つまり、コミンテルン研究の権威フィルソフ博士の論文中で言及されていることがわかりました。一度そのページがみつかると、前後のページを含む論文自体も pdfファイルで読むことができて大感激。日本語の著作権の関係でプリントアウトは出来ませんが、特定の問題の研究の仕方は飛躍的に効率的になります。また日本語版Googleブック検索で、2002年に亡くなった作家中薗英助さんの遺著『過ぎ去らぬ時代 忘れ得ぬ友』(岩波書店、2002)中に、「『世界』元編集長の安江良介さんから「国崎定洞」を調べてみないかという宿題を提案されたことがある」という話が入っていることがわかりました。21世紀の研究スタイルは、これまでと大きく変わるだろうと予感しました。

そんな最新研究ツールを駆使した共同研究の成果、情報戦のなかの『亡命』知識人ーー国崎定洞から崎村茂樹まで」20 世紀メディア研究所インテリジェンス 』誌第9号、2007/11,紀伊国屋書店)を正月にアップ。これまで本サイトで情報提供を求めてきた崎村茂樹の6つの謎についての中間報告を論文にしたものです。さらなる謎解きと情報提供を求めます。2007年に出した花伝社 論集情報戦の時代ーーインターネットと劇場政治』、情報戦と現代史ーー日本国憲法へのもうひとつの道及び今回アップした崎村茂樹探索の延長上で、本年の特別研究室「2008年の尋ね人」 は、ゾルゲ事件国際情報戦のなかに位置づけ、1930年代初頭上海でゾルゲ、尾崎秀実の周辺にいた、鬼頭銀一山上正義川合貞吉水野成船越寿雄河村好雄野澤房二、副島隆起、手嶋博俊坂田寛三日高為雄らについて、集中的に調べることにしました。情報をお持ちの方は、加藤katote@ff.iij4u.or.jpまたは渡部富哉さwatabe38@parkcity.ne.jpへ。

 こうした手法は、現在進行中の日本政治の一つの焦点、「消えた年金」問題や防衛省疑獄の解明にも役立ちます。日本の年金制度軍人恩給から始まり、 アジア・太平洋戦争のための戦費調達 が直接の起源であったこと、薬害肝炎のもとになった血液製剤フィブリノゲン発売元ミドリ十字が、関東軍731部隊に発することは前回書きました。フィクサー日米平和・文化交流協会常務理事安全保障議員協議会秋山直紀」の疑惑を解く鍵は、日米平和・文化交流協会の前身日米文化振興会」を1947年に創設した初代会長笠井重治GHQとの繋がり、特に「昭和天皇を救ったキリスト者」などと讃えられ、かの戦後象徴天皇制残存に重要な役割を果たしたマッカーサーの副官「ボナー・フェラーズ」と関係があるのではないか、というのも前回の国際歴史探偵のポイントでした。この笠井重治の名を日本語版Googleブック検索に入れると、80件もの文献が出てきました。特に重要なのは塩田道夫『天皇と東条英機の苦悩 A級戦犯の遺書と終戦秘録』(三笠書房、知的生き方文庫)で、内容は笹川良一を持ち上げていかがわしいのですが、著者が「日米文化振興会理事」のため、占領期の笠井重治の武勇伝になっています。東条英機の自殺未遂の前日に笠井がGHQ将校を連れて東条宅を訪問したこと、歴代駐日米国大使や福田現首相の父福田赳夫ときわめて親しかったこと、笠井重治没後の「日米文化振興会」2代目会長は元厚生大臣藤本孝雄で、現日米平和・文化交流協会会長の元防衛庁長官瓦力が3代目であること、などがわかります。マスコミの防衛省疑獄追究はイマイチです。せめてこの本ぐらいは読んで、深く問題を掘り下げるジャーナリストがほしいものです。実は有末精三『終戦秘史 有末機関長の手記』(芙蓉書房)にも笠井重治が出てきます。敗戦後、有末がGHQ/G2のウィロビーに見いだされてGHQ/G2戦史室荒木光太郎・光子夫妻、服部卓四郎ゴードン・プランゲらと一緒だった時期に、笠井と有末が自宅が近く往き来し、1974年のウィロビー死去にあたっては笠井重治と有末精三が連名で弔辞を送った話が出てきます。つまり、笠井重治も荒木光太郎・光子夫妻を介して「崎村茂樹の謎」に結びついています。防衛省疑獄の闇は、かつてジョン・ダワーの親友故ハワード・ションバーガーが中途まで追究して果たせなかった、アメリカの「ジャパニーズ・コネクション」「ジャパン・ロビー」「ジャパン・ハンドラーズ」、つまり日本の「逆コース」と再軍備・資本主義再建推進グループと歴史的に繋がっているようです。

  2007年は春に花伝社 論集情報戦の時代ーーインターネットと劇場政治』、秋に姉妹編情報戦と現代史ーー日本国憲法へのもうひとつの道花伝社 を刊行しました。副題の「日本国憲法へのもう一つの道」とは、第一に、1901年社会民主 党宣言の「社会主義・民主主義・平和主義」の理念が日本国憲法に凝集し実現される こと、第二に、にもかかわらず第二次世界大戦時の米国・ソ連ほか連合国の思惑で天 皇制が残され「象徴天皇制」として第一条に入ることを意味します。3月に 早稲田大学で佐藤優さんとご一緒した情報戦の講演会記録は、佐藤さんとの対談とあわせて、情報戦のなかの『亡命』知識人ーー国崎定洞から崎村茂樹まで」という特集論文になり、11月末発売の20 世紀メディア研究所インテリジェンス 』誌第9号(紀伊国屋書店)に掲載されました。図書館「ネチズンカレッジ」 学術論文データベ ースには、これまでも私の論文●加藤哲郎「日本におけ る『市民社会』概念の受容と展開」(2006.1)と●周初(淵邊朋広・日本 語版監修)「第一部 台湾における市民社会の形成と民主化」(2006.1)が入って いましたが、北京大学国際関係学院の梁雲祥印紅標両先生と の連絡がとれて、かってトヨタ財団の助成を得て行った共同研究『華人地域における市民社会の形成と民主化』の全体を、 日本語のインターネット版で一挙にアップすることができ ました。●梁雲 祥(北京大学国際関係学院)「序章 市民社会と民主化の概念及び理論」 (2007.10)、●梁雲祥(北京大学国 際関係学院)「第二部 シンガポールの民主化」(2007.10)、●印紅標(北京大学国 際関係学院)「第三部 香港市民社会の発展と民主化」(2007.10)の3つの論文 が学術論文データベ ースに追加され、一書の体裁にまとまりました。ジョルダンサンドさん寄稿「アメリカよりみた 『靖国問題』−ドーク氏に反論する」や高坂邦 彦さん「筐底拾遺」中「戦前 日本の外交評論と憲法解釈 ―清澤洌と植原悦二郎―評伝・植原悦二郎 」及び姉妹編「評伝 ・清澤洌」、「ポパ ー哲学入門 ― 科学的・合理的なものの見方・考え方 」もリンクのかたちで採用してあります。情報戦のビギナー向けは、渡辺雅男・渡辺治 編『「現代」という環境』(旬報社)所収の講演「インターネット ーー情報という疑似環境」をどうぞ。尾崎行雄記念財団『世界と議会』第518号(2007年11月)に寄せた加藤「グローバルな地球社会のナショナルな国家」は、昨年アップした論文「グ ローバリゼーションと国民国家」(2005年社会理論学会第13回大会の基調報告)の要約版ですが新年にアップ岩波書店から昨年3月に刊行された、昨年夏 の慶應大学経済学部の公開講座の記録、松村高夫・高草木光 一編『連続講義 東アジア 日本が問われていることで、私は「<天皇制民主主義>論」を報告し、鈴木邦男さんと「天皇制と民主主義」を対論しています。ぜひご笑覧を。『情況』5/6月号のインタビュー「ポスト国民国家 時代における労働市場の変容と男性性」は、最近はあまり追いかけていない領域のインタビュー記録です。 ただしIDE大学協会『IDE 現代の高等教育』第495号(2007年11月)に寄せた「大学ランキング一橋大学の取組み」は「ネチズンカレッジ」とは別世界の話ですので、本サイトには収録しません。

  長文書評は『図書新聞』7月21日号掲載書評白 井久也編『米国公文書 ゾルゲ事件資料集』(社会評論社) に加えて、新年に社会思想史学会年報『社会思想史研究』第31号(2007年)に寄せた西川正雄『社会主義インターナショナルの群像 1914-1923』(岩波書店)図書館に。『エコノミスト』誌 連載書評「歴史書の棚」は、12月18日新年特大号の「大連立の仕掛け人? うわさの新聞人の自伝」として渡邉恒雄『君命も受けざる所あり』(日本経済新聞出版社)菊池清麿『国境の町 東海林太郎とその時代』(北方新社)を入れました。昨年11月20日号の「研究に定年はない、大家の健筆に脱帽」と題した今井清一『横浜の関東大震災』(有隣堂)藤田勇『自由・民主主義と社会主義 1917−1991』(桜井書店)もアップしてあります。10月23日号の「ナショナリズムの罠とエスペラントの希望」梅森直之編著『ベネディクト・アンダーソン グローバリゼーションを語る』(光文社新書)田中克彦『エスペラント 異端の言語』(岩波新書)、9月25日号の「国民国家の記憶作りに介入した経済学者たち」と題したローラ・ハイン『理 性ある人びと 力ある言葉 大内兵衛グループの思想と行動』(大島かおり訳、岩波 書店)佐藤卓己・孫安石編 『東アジアの終戦記念日  敗北と勝利のあいだ』(ちくま新書)、8月28日号の「新潟をジュネーヴから解く、靖国をオレゴンから見直す」 と題したテッサ・モーリス -スズキ(田代泰子訳)『北朝鮮へのエクソダス 「帰国事業」の影をたどる』(朝 日新聞社) と中村直文・NHK取 材班『靖国 知られざる占領下の攻防』(NHK出版)などと共にどうぞ。 インターネット上では、「 ナレッジステーション 」に、丸山真男『日本の思想』、デーヴィッド・ヘルド『グローバル化とは何か』、斎藤純一『公共性』を政治学 ・おすすめ本」として挙げておきました。  


Back to Home

Back to Library