加藤哲郎のネチズン・カレッジ 2017新装版

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Welcome to "Netizen College" !  last updated: December 1, 2024: next update: January 1, 2025   予定(月1回更新予定)

戦争は一人、せいぜい少数の人間がボタン一つ押すことで一瞬にし て起せる。平和は無数の人間の辛抱強い努力なしには建設できない。このことにこそ、平和の道徳的優越性がある」(丸山眞男 )、■震災・原発情報リンク「IMAGINE! イマジン」)、加藤「『国際歴史探偵』の20年」、加藤編『ゾルゲ事件史料集成——太田耐造関係文書』 全10巻(不二出版、2018年7月第1巻所収、加藤解説「ゾルゲ事件研究と『太田耐造文書』」),.「日本のコロナ対応にみる731部隊・100部隊の影」,ka「戦前の防疫政策・優生思想と現代」ka「 コミンテルンの伝統と遺産」ka30年前の「日本共産党への手紙」ka岸惠子主演『真珠湾前夜』が可能にした学術的ゾルゲ事件研究ka「ゾルゲ事件についての最新の研究状況」

 

情報の海におぼれず、情報の森から離れず、批判的知性のネットワ ークを

情報政治が情動社会により動かされる時代に‥‥

Welcome to KATO Tetsuro's Global Netizen College! English is here!

 
 
2024.12.1 ● 世界の「選挙の年」のポピュリズムによる変動は、とどまることを知りません。アメリカのトランプ大統領再当選で、世界はウクライナやパレスチナの戦場、メキシコ・カナダ国境ばかりでなく、米中・米日の関税・為替でも、予測不能な2025年を迎えます。ドイツのように、3つの州議会選挙での右派ポピュリズム・ナショナリズム政党の台頭を受けて、SPD首班の連邦政府の連立再編と来年2月の総選挙への延長戦を決めた国も出てきました。日本では、兵庫県で職員と議会から不信任された知事が、SNSでの同情・復活作戦を成功させて予想外の再選、名古屋市長選挙は新生日本保守党の代議士になった前市長の後継の前副市長が既成政党相乗りの有力候補を破って、これもポリュリズム的圧勝です。その延長上に、来年夏の参院選があります。世界でも日本でも、政党布置状況(constellation)の「右寄りシフト」ばかりでなく、20世紀型のハードな政党組織の行き詰まり・限界を、強く印象づけるものとなりました。

● しかし、これら全体の動きを、一部の陰謀論に見られるdeep state の盛衰(アメリカの場合は反軍産複合体、反エリートのポピュリズム)や、東京都知事選・兵庫県知事選に典型的なSNS戦略に長けたITビジネスの選挙工作の結果とのみ見るのは、早計でしょう。佐藤卓巳さんや伊藤守さんは、情報政治が匿名性や語感によりバーチャルに構築され、「真偽」よりも「信疑」が問題とされる「情動社会」によって傷つきやすくなった結果と見なしていますが、炯眼です。シュンペーターが選挙を市場に、政治家を生産者、有権者を消費者になぞらえたひそみにならえば、魅力ある商品の広告が競われるようになり、消費社会の記号論的価値と顧客満足度が変容してきたのでしょうか。情動=エモーショナルな言説世界では、特に若者たちの投票行動は、短期間でもうねりを作り出すようです。自民党の世襲の色濃い利権誘導はもとより、公明党の宗教的御利益言語も、共産党の革命的ジャルゴンも、キャッチーな情動言説の不定型な広がりの前では、非力でした。

● このことは、政治の世界が、かつての街頭演説と戸別訪問、議会討論の定型から解き放たれ、新聞・ラジオ・テレビと広がったメディアのパターン化された一方的送信・宣伝からも距離をおいて、SNSに象徴される相互承認・排斥型コミュニケーションの中で展開されるようになった21世紀的事態です。日本では有権者性悪説を前提し、戸別訪問さえ投票の買収につながるからと禁止され、選挙ポスターも公設掲示板のみの厳しい制限が課された公職選挙法が、1925年普通選挙法以来、長く続いています。日本に限らず、議会選挙や公職の選任の仕方をどのように変えていくかは、マイナンバーカードによる健康保険証廃止や運転免許証ひもづけなどよりも、はるかに緊急で、切実な政治的課題でしょう。さしあたりは政治資金における企業・団体献金の禁止です。もっとも、それを議論し決める主体が、現行法で選ばれた議員たちというジレンマはつきまといますが。

● こうした政治の歴史的構造転換を、『情報戦の時代――インターネットと劇場政治』(花伝社、2007)で論じた時、手がかりになったのは、つい先日マンション火災で死亡が確認された猪口孝さんの先駆的な「情報」概念の理論的検討でした(『年報政治学 1979 政治学の基礎概念』岩波書店)。それまで「情報」と「諜報」の区別も曖昧で、「情報公開」の政治的意味が軽視されてきた日本の政治学の世界に、通信を媒介とした送信者→受信者のコミュニケーション過程のなかに「情報」を措定し、「情報は政治目標をもつ政治主体に対して、政治環境についての不確定度を減少させ、政治目標の達成をより容易にする確率を高める。いいかえると、政治目標の達成のための政治環境の操作を成功させる度合を高めうる要素のひとつとして考えられる」と初めて定義したのは、『レヴァイアサン』誌を創刊する前の若き猪口孝さんでした。

● 私自身は、19世紀機動戦・街頭戦→20世紀陣地戦・組織戦21世紀情報戦・言説戦ネオ・グラムシ的理論モデルを作るにあたって、猪口さんのこの政治学定義や吉田民人さんの社会学的考察を大いに参考にしましたが、猪口さんの「情報は政治環境についての不確定度を減少させる」という定義に対し、吉田さんの「広義の情報概念=物質・エネルギーの時間的・空間的、定性的・定量的なパターン」を参照して、「ノイズ=雑音も情報である」としたのが、私なりの問題提起でした。つまり、フェイクニュースや根拠なきプロパガンダも「政治的情報」として分析の対象にするという立場でした。この点の違いはありますが、「情報の政治的意味」について端緒的に論じた猪口孝さんを理論的にリスペクトしてきました。心より哀悼の意を表します。

● マンション6階の猪口さんのお宅には多くの蔵書があり、それが強風下で火の手を早めて初期消火を難しくしたともいわれます。この2年余、コロナ禍で入院・手術し、書物に囲まれたベッドでリハビリをしてきた私には、他人事ではありません。幸い年末が近づいて、11月には尾撫G実=ゾルゲの80回忌国際ワークショップ他たびたびの都心への外出がありましたが、何とかゆっくり歩いて出席することができました。ゾルゲ事件については、名越健郎さんの新著『ゾルゲ事件――80年目の真実』(文春新書)も出て、来年も活発な議論を聞けるでしょう。心臓病手術をした専門病院の術後2年の精密検査では、リハビリによる順調な快復と診断されました。リハビリとクスリは継続しますが、これからは年に1度のCT検査でのチェックになります。この間、多くの皆さんからお見舞い・激励をいただきましたが、この場を借りて厚く御礼申し上げます。まだ全快とは行きませんが、2025年に向けて、新たな研究生活の再出発へと、助走を開始します。  

 獣医学の小河孝教授とコラボした共著『731部隊と100部隊ーー知られざる人獣共通感染症研究部隊』(花伝社)に続いて、2024年9月に、 獣医学者の小河孝さん、歴史学者の松野誠也さんと共著で、『検証・100部隊ーー関東軍軍馬防疫廠の細菌戦研究』という書物を刊行しました。やや高価な学術書ですが、本サイトに幾度か寄せられた、旧100部隊員の遺言を受けた「匿名読者」との対話編も入っていますので、多くの皆さんに読んでいただければと願います。

6月1日(土曜日)、東京・目白の学習院大学で、日本平和学会の平和文化研究会として、尾崎・ゾルゲ研究会もコラボして、劇団民芸・木下順二作「オットーと呼ばれる日本人」の合評会を兼ねた研究会を開きました。第6回尾崎=ゾルゲ研究会(OS通信号外)となります。 ● 第6回  尾崎=ゾルゲ研究会研究会 尾崎=ゾルゲ事件と『オットーと呼ばれる日本人』との交錯をめぐって」 報告1  20世紀共産主義の総括へ―『オットーと呼ばれる日本人』劇評1島村輝(フェリス女学院大学教授) 報告2  レ・コミュニストとは何者であったのか?―『オットーと呼ばれる日本人』劇評2鈴木規夫(愛知大学教授)

討論   加藤哲郎(一橋大学名誉教授)  司会   渡辺守雄(筑紫女学園大学教授)

渓流斎日乗さんの参加記が出ています。 ● 尾崎=ゾルゲ研究資料蒐集、聞き取り調査などの実施について引き続き、是非ともご協力のほどお願い申し上げます。ご用の向きは、以下の事務局へご一報頂ければと存じます。 尾崎=ゾルゲ研究会事務局:愛知大学名古屋校舎鈴木規夫研究室気付 norioszk@vega.aichi-u.ac.jp/ 20221107os@gmail.com


 私が代表をつとめる尾崎=ゾルゲ研究会のシリーズ第一弾、A・フェシュン編・名越健郎・名越洋子訳『ゾルゲ・ファイル 1941−1945 赤軍情報本部機密文書』(みすず書房)、を刊行した延長上で、シリーズ第二弾のオーウェン・マシューズ著、鈴木規夫・加藤哲郎『ゾルゲ伝 スターリンのマスター・エージェント』(みすず書房)が刊行しました。

 

「等身大のゾルゲ解明へーー尾崎=ゾルゲ研究会発会主旨」(毎日新聞、2022年2月13日夕刊) 

シリーズ「新資料が語るゾルゲ事件」尾崎=ゾルゲ研究会編(みすず書房)

アンドレイ・フェシュン著、名越健郎・名越陽子訳『ゾルゲ・ファイル 1941−1945』(みすず書房)

「蘇るスパイ・ゾルゲ」(『週刊朝日』2022年11月11日号) 

「スパイ事件 公表から80年 ゾルゲにソ連側が不信感 機密文書まとめた資料集邦訳」(毎日新聞夕刊2022年12月14日

「伝説のスパイ ゾルゲの謎に迫る、刑死から78年、書籍続々」(朝日新聞夕刊2023年1月20日)

明治大学平和教育登戸研究所資料館 第13回企画展講演会:加藤哲郎「ゾルゲ事件についての最新の研究状況」(2023年5月)

岸惠子主演『真珠湾前夜』が可能にした学術的ゾルゲ事件研究」(みすず書房HP、2023年5月18日)

<土曜訪問インタビュー>「プーチンの原点は ゾルゲ研究から ウクライ ナ侵攻探る」 加藤哲郎さん(一橋大名誉教授)(中日・東京新聞2023年6月3日)

ゾルゲ事件研究深化、愛知大文庫開設を計画 寄贈資料すでに1000点(中日新聞7月27日夕刊トップ)

<記者がたどる戦争>ゾルゲ事件(北海道新聞2023年8月111213日) 

毎日新聞『ゾルゲ伝』書評:岩間陽子「極東と欧州、同時代の歴史が融合」(2023年7月22日)

読売新聞『ゾルゲ伝』書評:井上正也「大物スパイ 成功と孤独」(2023年9月1日)

東京新聞「ゾルゲ事件の新証言 自白強要や拷問なかった、元特高警察の男性の生々しい記録が見つかる 戦時中のスパイ捜査」(2023年9月18日)

北海道新聞「ゾルゲ事件」捜査つづる遺稿集 元特高警察の男性遺族、愛知大教授に寄贈」(2023年11月9日)

東京新聞「ゾルゲ事件、特高警察の取り調べ記録を「研究に役立てて」 主任警部の遺稿集を遺族が愛知大に寄贈」

(2023年11月13日)

● アメリカ大統領選投票直後の11月7日は、リヒアルト・ゾルゲと尾崎秀実が1944年に国防保安法違反ほかで死刑に処されて80周年です。私たちの尾崎=ゾルゲ研究会は、11月6−9日に、中国やロシアからゲストを招き、 愛知大学人文科学研究所と共同で、国際ワークショップ「ユーラシア大陸の秩序再編とインテリジェンスをめぐって」を開きます。その研究会は、東京・茗荷谷(地下鉄丸ノ内線茗荷谷駅3分)の拓殖大学文京キャンパス茗荷谷校舎E館901教室で、7日午後3時から6時(会場の癒合で2時間早まりました)に、加藤哲郎「ゾルゲ事件研究の現段階」「要旨」と配付資料はここに、当日報告パワポはここから)、上海師範大学・蘇智良教授「上海から東京へ:陳翰笙のインテリジェンス生涯」、モスクワ大学A・フェシュン教授の「尾崎とゾルゲとの個人的・事務的関係 」の3本が基調報されます。 翌8日は、同じ会場で10時から中国の陳麗菲 、洪小夏、徐静波、馬軍、徐青、臧志軍氏、日本の長堀祐造、田嶋信雄、 鈴木規夫、名越健郎、清水亮太郎氏らの報告と討論が行われます。詳しくは、ka新設された尾崎=ゾルゲ研究会ホームページに、公開研究会出席とオンライン参加用の窓口が開かれましたので、ご覧になって、申し込んでください。または、愛知大学の尾崎=ゾルゲ研究会事務局(20221107os@gmail.com)にお問い合わせください。

かと本学には、以下のようなセクションがあります。学びを志す方は、 どちらのドアからでも、ご自由にお入り下さい。

加藤哲郎研究室(学長兼事務員の自己紹介当研究室刊行物一覧、エッセイ等)

新総合カリキュラム(2020年1月、大学院レベルの専修コースに再編しました)

情報学研究室(必修カリキュラム、 リンク集処理センターと歴史探偵収集センターが両輪です)

政治学研究室総合カリキュラム、永久保存版論文・エッセイ多数収録)

現代史研究室総合カリキュラム、日本現代史、旧ソ連秘密資料もあります)


情報収集センター (本学の目玉で特別研究室731部隊『「飽食した悪魔」の戦後』特集、「現代史の謎解き」「国際歴史探偵」の宝庫、データベース「旧ソ 連日本人粛清犠牲者・候補者一覧」「在独日本人反帝グループ関係者名簿 」「旧ソ連秘密資料センター」などが入っています!)

イマジンIMAGINE!(3.11FUKUSHIMA後更新)、■Global IMAGINE、■IMAGINE GALLERY、■「戦争の記憶」 (番外ka大正生れの歌(2018年版) 」「100人の地球村 」)

特別研究室731部隊研究・『「飽食した悪魔」の戦後』特集:「2019年の尋ね人」=731部隊結核班長「二木秀雄」、元北海道副知事「長友浪男」について、情報をお寄せください! ( 戦医研論文、「731部隊と旧優生保護法強制不妊手術を結ぶ優生思想(you tube)」


 

学術論文データベ ース図書館 (書評の部屋、エッセイ集カレッジ日誌(過去ログ) 、「98-06ベルリン便り」99-12 メキシコ便り」「パンデミックの政治学2009」、竹久 夢二探訪記」もあります) 


国際交流センター (Global Netizen College only in English
客員教授ボブ・ジェソップ研究室 (イギリスの国家論者Bob Jessopの Homepageと直結、最新論文をダウンロードできます)
† 客員名誉教授故ロブ・スティーヴン研究 室(オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学、「日本 =ポスト・フォード主義国際論争」の私の共著者、2001年4月18日永眠。遺稿"Competing Capitalisms and Contrasting Crises: Japanese and Anglo-Capitalism"
† For the Eternal Memories of Prof. Mikhail Masaovich Sudo, Dr. Jasim Uddin Ahmed , and Mr. Allan Sadaminovich Sasaki(2011年1月、本カレッジの発展に多大の貢献をした、須藤政尾遺児ミハイル・スドー教授、ヤシム・アハメッド博士、健物貞一遺児アラン・ササキさん追悼ページ)、 

 

 Since Aug.15,1997で、2020年1月に大幅改訂しました。開設以来の、ちょっと嬉しく恥ずかしい話。WWW上の学術サイトを紹介するメール マガジン"Academic Resource Guide"第3号「Guide & Review」で、本HPが学術研究に有用な「定番」サイトに選ばれました。ありがたく また光栄なことで、今後も「定番」の名に恥じないよう、充実・更新に励みます。同 サイトは、学術研究HPの総合ガイドになっていますから、ぜひ一度お試しを! 「Yahoo Japan」では「社会科学/政 治学」で注目クールサイトに登録され、特別室「テル コ・ビリチ探索記」が「今日のオススメ」に、「IMAGINE! イマジン」が「今週のオススメ」に入りました。「LYCOS JAPAN」では「政治 学・政治思想」のベストサイトにされていましたが、いつのまにか検索サイトごと「Infoseek」に買収され、「学び・政治思想 」でオススメ・マークを頂いたようです。『エコノミスト』では、 なぜか「イ ンターネットで政治学」の「プロ」にされましたが、河合塾の「研究者インフォー メーション 政治学」では「もっとも充実した政治学関係HP」、早稲田塾の「Good Professor」では、「グローバ ル・シチズンのための情報政治学を発信」という評価をいただきました。「日経新聞・I Tニュース」では「学術 サイトとしては異常な?人気サイトのひとつ」として、「リクルート進学ネッ ト」にも顔を出し、「インターネットで時空を超える大学教員」なんて紹介されました。朝日新聞社アエラ・ムック『マスコミに 入る』で、元勤務先一橋大学の私のゼミナールが、なぜか「マスコミに強い大学 」のゼミ単位東日本代表に選ばれ「堅実・純粋な感 性」を養う「社会への関心が高い『問題意識』の強い学生が集う」ゼミナール として紹介されました。「 ナレッジステーション 」には、「政治学 ・おすすめ本」を寄せています。早稲田大学客員教授の時に、共同通信配信全国地方紙掲載「こんにち話」で「国際歴史探偵 」と認定していただき、法政大学大原社会問題研究所で「『国際歴史探偵』の20年」を話させていただきました。その後、中部大学「アリーナ」誌で、なぜスターリン批判に入ったかの1970年代の話とモスクワ日本人粛清に関わるアメリカ共産党日本人部の話を、その延長上で「等身大のゾルゲ事件研究」について、毎日新聞東京新聞のインタビューに答えています。恥ずかしながら、ありがとうございました。

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学長 加 藤 哲 郎  Dr. Kato Tetsuro     

E-mail: katote@ff.iij4u.or.jp