1999全国8大学/2005一橋大学・学生政治意識調査

(質問票、コメント、回答集計)
2005年6月に、一橋大学学生281人のサンプルで、21世紀に入って何が変わったかを確かめるために、1999年全国学生調査と同一設問での補充調査をしました、その結果はこの99年調査結果中の各設問回答中に、赤字で挿入してあります。より詳しくは、別項で2005年一橋大学だけの結果を入れてあります。 


以下の質問票の問いをクリックすると、過去データ・国民全体のデータを含む1999
全国8大学学生1334人のおよび2005年一橋大学281人の調査集計結果が出てきます。一番下に、1999年の簡単なコメントを入れてありますが、解釈は皆様ご自由にどうぞ。質問項目のいくつかは、社会経済生産性本部「働くことの意識」調査やNHK『http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4140910194/qid=1124194776/sr=1-1/ref=sr_1_10_1/249-0576613-1588347現代日本人の意識構造』(NHKブックス)と同じ設問を使っていますから、それらの最新データとの比較もどうぞ。

問い1 「あなたは、以下の6つの『主義』について、どう思いますか? あなたの考えに一番近いものを、それぞれひとつだけ選び、○をつけてください」

「民主主義」 よい   時と場合による    よくない    わからない

「資本主義」 よい   時と場合による    よくない    わからない

「自由主義」 よい   時と場合による    よくない    わからない

「社会主義」 よい   時と場合による    よくない    わからない

「共産主義」 よい 時と場合による よくない    わからない

「全体主義」 よい 時と場合による よくない    わからない

 

問い2 「日本社会は資本主義社会といわれていますが、あなたはどういう社会を望みますか? 次のなかからひとつだけ選んで、番号に○をつけてください」 

  1  現体制  2 改良された体制   3 社会主義体制

 

問い3 「日本とアメリカとの関係は、いま、うまくいっていると思いますか。そうは思いませんか? 次のなかからひとつだけ選んで、番号に○をつけてください」

  1 うまくいっている  2 そうは思わない  3 どちらともいえない

 

問い4 「日米安保条約は、日本の平和と安全にとって、役にたっていると思いますか? 次のなかからひとつだけ選んで、番号に○をつけてください」

  1 役立っている      2 役立っていない 

  3 かえって危険である   4 わからない

 

 

問い5 「あなたは、今の憲法を、改正する方がよいと思いますか。改正しない方がよいと思いますか? 次のどちらかに○をつけてください」

  1 改正する方がよい     2 改正しない方がよい

 

問い6 「あなたは、天皇に対して、現在どのような感じをもっていますか? 次のなかからひとつだけ選んで、番号に○をつけてください」

  1 尊敬の念をもっている   2 好意をもっている 

  3 特に何とも感じない    4 反感をもっている

 

問い7 「あなたは、日本人は、他の国民に比べて、きわめてすぐれた素質を持っていると思いますか? 次のなかからひとつだけ選んで、番号に○をつけてください」

  1 そう思う    2 そうは思わない  3 わからない 

 

問い8 「あなたが会社に入ったと仮定して、デートの約束があったとき、残業を命じられたら、あなたはどうしますか? 次のどちらかに○をつけてください」

  1 デートをやめて仕事    2 残業をことわってデート

    

問い9 「あなたは、あなた自身やあなたのご家族の方について、過労死の不安を感じることがありますか、ありませんか? 次のいずれかに○をつけてください」

  1 よく感じる   2 ときどき感じる   3 とくに感じない

 

問い10 「あなたは、海外渡航の経験がありますか?」   はい   いいえ

 

問い11 「あなたの一番好きな国、および嫌いな国を、ひとつだけあげてください」

     好きな国(         )

    嫌いな国(         )

 

問い12 「最後にあなたご自身について、以下の該当個所に、○をつけて下さい」

大学  学部  1 2 3 4年、  男 女


加藤1999短評 イマドキの学生は、けっこう会社人間予備軍で、嫌米ナショナリストなのでは?

 1999年10月から2000年1月にかけて、全国8大学(一橋大学・関東学院大学・跡見女子大学・東京外国語大学・上智大学・久留米大学・九州大学)の政治学者の協力で行われた学生1334人の政治意識調査結果を、8万ヒット記念としてアップしました。数字だけを見ていても、いろいろ考えさせられます。民主主義「よい」が多いのは当然にしても、この15年でだんだん「輝き」を失っているようです。逆に資本主義は「よくない」が減って「戦後民主主義」の対抗概念としての意味を失い、定着しました。自由主義は、なぜか日本では定着しません。共産主義ほどではありませんが、社会主義も「よくない」という拒否率が高まっています。全体主義への「わからない」という回答は、不気味です。資本主義のもとでも、学生たちは改良された体制を求めているのが、せめてもの救いでしょうか。日米関係安保条約への回答は、時局に左右される度合いが高いのですが、アメリカ人が「うまくいっている」と思っているのに日本人は悲観的になる傾向、学生の中に「日米安保は日本にとってかえって危険」という声がけっこうあることに留意しましょう。天皇について若者が「何とも感じない」というのは予想通りでしたが、憲法改正についてはほぼ半数、特に男子学生では過半数が肯定的であるのは、読売新聞の宣伝だけではありません。国民全般より若年層で改正志向が強いようです。でも学生たちは、ちゃんと日本国憲法を読み通したことはあるのでしょうか? ぜひ英文で味わってほしいものです。経済停滞のもとで「日本人は他の国民に比べてきわめてすぐれた素質を持っている」というナショナリズム・スコア、民族的威信は、学生ではもちろん国民全般でも低下し、海外渡航経験も増えていますが、「デートの約束があっても残業する」という企業帰属意識は、相変わらずのようです。過労死の不安は減っていないにもかかわらず。特に女子学生に「デートより仕事」が多いのは、女性の社会志向の高まりでしょうか、就職が特に厳しいからでしょうか? 私のアメリカの友人たちが、この調査で一番気にする「好きな国」「嫌いな国」ランキング、今年は北朝鮮が悪役を引き受けてあまり目立ちませんが、若者の「嫌米」意識は、根強いものがあります。同時に「好きな国」の常連も日本とアメリカ、まるで倦怠期の夫婦のようですが、実は「グローバル化」が進んでも欧米中心の地球観から抜け出せない、近代日本に通底する問題が孕まれているのです。 



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